年収白書が掲載する平均年収は、有価証券報告書(有報)の「平均年間給与」という一次情報に統一しています。求人サイトや口コミの数字と何が違うのか——その理由は、有報がどういう書類かを知るとはっきりします。結論を先に言えば、有報は会社が法律に基づいて公的に開示した、全従業員の実績にもとづく確定値だからです。

有価証券報告書(有報)とは

有価証券報告書は、上場企業などが年に1回、金融庁のEDINET(電子開示システム)に提出する法定の開示書類です。会社の財務状況・事業内容・リスク・従業員の状況などを、定められた様式でまとめたもので、投資家が会社を正しく判断できるようにするためのものです。

重要なのは、有報が法律で提出を義務づけられ、虚偽記載には罰則があること。つまり、会社が「公式に・責任を持って」出している数字です。3月決算の会社なら、決算後3か月以内(6月末まで)に提出されます。

年収のもとになる「平均年間給与」

有報の「従業員の状況」という項目に、平均年間給与が記載されます。これは提出会社(単体)の従業員を対象にした、賞与や基準外賃金(残業代など)も含む1年間の給与の平均です。年収白書はこの数字をそのまま掲載し、推計や口コミは一切混ぜていません。だから上場企業の年収ランキング業種別の平均年収も、すべて同じ条件で横並び比較できます。

なぜ口コミ・求人より正確なのか

同じ会社の「年収」でも、出どころによって意味も信頼度も違います。

  • 口コミサイト:投稿者の自己申告。誰が何人答えたか(母集団)が不明で、年代や職種に偏りが出やすい
  • 求人票・モデル年収:募集時に提示する想定額。実際に支払われた平均とは別物
  • 有報の平均年間給与:全従業員を対象にした実績の平均。会社が公的に開示した確定値で、全社が同じ基準

つまり有報の数字は「その会社が実際に払った給与の平均」です。会社ごとにバラバラの基準で語られがちな年収を、同じものさしで比べられるのが最大の利点です。

有報の数字でも「わからないこと」

一次データとはいえ、万能ではありません。誠実に押さえておきたい限界が3つあります。

  1. 社内のばらつきは見えない:開示されるのは平均1つだけで、社内の最高・最低・中央値はわかりません
  2. 連結ではなく単体:持株会社(ホールディングス)では本社少数の数値になり、グループ全体と離れることがあります(単体と連結の違いで詳しく解説)
  3. 職種別ではない:エンジニア・営業など職種ごとの年収はわかりません

この限界を踏まえた読み方は平均年収データの正しい見方にまとめています。年収白書は有報の一次情報だけで、上場企業の平均年収をフェアに比較できる場所を目指しています。集計方法の詳細はデータについてをご覧ください。