上場企業の平均年収ランキングを見ると、聞き慣れない会社が上位に並ぶことがあります。たとえば1位の光通信は平均2,409万円。ところがその数字はたった2人分の平均です。なぜこんなことが起きるのか——カギは「単体」と「連結」、そして「持株会社」です。

単体と連結の違い

会社の業績や従業員のデータには、2つの集計範囲があります。

  • 単体(提出会社):その会社1社だけの数字
  • 連結:子会社・グループ会社をすべて合算した数字

有価証券報告書(有報)の「従業員の状況」に載る平均年間給与は、このうち「単体」の値です。連結ベースの平均給与は開示されていません。つまり年収白書を含め、どのデータも年収は単体でしか出せないのが前提になります。

持株会社(ホールディングス)とは

持株会社とは、自社で事業をするより、子会社の株を持ってグループを統括することが主な役割の会社です。「〇〇ホールディングス」という社名が典型ですが、社名に出ていなくても実質的に持株会社に近い会社があります。

この場合、単体(その会社1社)に所属するのは本社の少数の社員だけ——経営企画や管理部門の数人〜数十人で、しかも役員クラスが多く高給になりがちです。事業の現場で働く大多数の社員は、各子会社(別法人)に所属しています。

光通信の「単体2人で平均2,409万円」は、まさにこの構造です。データとしては正しいのですが、「光通信で働くと2,400万円もらえる」という意味ではありません。

実態のある高年収と、どう見分ける?

同じ高年収でも、中身はまったく違います。

会社 平均年収 従業員数(単体)
光通信 2,409万円 2人
キーエンス 2,039万円 3,205人
トヨタ自動車 1,006万円 73,133人

キーエンスは3,000人規模で2,000万円超——これは実態のある高年収です。一方、少人数の会社や持株会社の数字は、規模の文脈とセットで見る必要があります。

年収白書での見方

そこで年収白書では、誤読を防ぐ工夫をしています。

  • ランキングでは各社に従業員数(単体)を併記。「単体2人」と分かれば、数字の意味を取り違えません
  • 連結の平均年収は有報に存在しないため推計して載せることはしません(推測は信頼性を損なうため)
  • 各企業ページでは、同業他社の中での順位や、業種内の最高・中央値・最低といった「会社どうしの比較」で実力感をつかめます

「平均年収が高い会社=必ずしも自分がもらえる額ではない」——単体・連結・持株の仕組みを知っておくと、年収データの解像度が一段上がります。データの集計方法はデータについてもあわせてご覧ください。