「平均年収が高い会社=良い会社」とつい考えがちですが、データの読み方を誤ると実態を見誤ります。年収白書は有価証券報告書の一次データを掲載していますが、その平均年収という数字には、知っておくべき“落とし穴”が3つあります。順に見ていきましょう。
落とし穴1:平均は「1つの数字」にすぎない
有報が開示するのは、全従業員を均した平均年間給与1つだけ。社内の最高・最低・中央値といった分布は公開されません。つまり、20代と50代、総合職と専門職をすべてならした結果が「平均」です。
平均が高くても、一部の高給層が押し上げているのか、全体的に高いのかは、この数字だけではわかりません。だから「平均◯◯万円だから自分もそれくらいもらえる」とは限らないのです。
落とし穴2:少人数・持株会社で極端に出る
平均年収は、対象となる従業員が少ないほど振れやすくなります。とくに注意したいのが持株会社(ホールディングス)です。
有報の数値は提出会社(単体)が対象のため、グループ運営に特化した持株会社では、本社の少数の社員だけが集計対象になります。その結果、グループ全体の実態とかけ離れて高い平均年収が出ることがあります。実際、光通信のように単体の対象人数がごく少数で、平均年収が極端に高く出る例があります。
このゆがみを抑えるため、年収白書では従業員数を併記し、少人数を除いた主要企業ランキング(従業員50人以上)も用意しています。仕組みは単体と連結の違い・持株会社の見方で詳しく解説しています。
落とし穴3:業種・年齢・地域で水準が違う
平均年収は、その会社の業種・平均年齢・本社所在地などの影響を強く受けます。平均年齢が高い会社は年収も高めに出やすく、業種が違えば水準そのものが異なります。たとえば業種別の平均年収では、業種によって平均が2倍近く開きます。
同じ「高年収」でも背景が違うため、単純な金額の大小だけで会社を評価するのは危険です。比べるなら、同じ業種の中での位置づけ(業種内ランキング)を見るのが公平です。
「高い」をどう活かすか
落とし穴を避けるコツは、平均年収を単独で見ないことに尽きます。
- 従業員数とセットで見る(少人数の極端値に注意)
- 業種内の順位で見る(業種から探す)
- 複数年の推移で見る(一時的な変動か、継続的に高いか)
- 働きやすさは年収以外の指標も(女性管理職比率・男性育休・男女賃金差の業種比較)
年収は会社選びの大事な材料ですが、あくまで一面です。数字の出どころと限界を理解したうえで使えば、ぐっと役に立ちます。データの集計方法はデータについて、年収の基本的な読み方は平均年収データの正しい見方もあわせてどうぞ。