犬・猫を対象とした線虫によるがん検査の共同研究成果を公表

アニコム損害保険株式会社のプレスリリース

ペット保険シェアNo.1※1のアニコム損害保険株式会社(代表取締役 野田 真吾、以下 アニコム損保)は、ヒトのがんスクリーニング検査法として注目されている線虫がん検査「N-NOSE®(エヌノーズ)」のイヌ・ネコへの応用を試みる株式会社HIROTSUバイオサイエンス(代表取締役 広津 崇亮、以下 HIROTSU)と共同研究を行っておりました。この度、本研究の成果をまとめた論文が学術誌「Biochemistry and Biophysics Reports」に掲載されましたので、お知らせいたします。
※1:シェアは、各社の2021年の契約件数から算出。(株)富士経済発行「2022年ペット関連市場マーケティング総覧」調査

  • 昨今の獣医療におけるがんの早期発見の重要性とその課題

近年、飼育環境の変化や獣医療がヒト医療に追随する形での発展してきたこと等により、イヌやネコの死亡原因の第一位はヒトと同じく「がん」が占めるようになりました。効果的な治療を行い、最終的な生存率・予後を改善するためには、がんの早期診断が重要です。しかし、がんの早期診断にはコンピュータ断層撮影法(CT)や磁気共鳴画像法(MRI)が必要な場合が多いですがく、これらの技術は高価であること、またかつ全身麻酔が必要であることからなため、定期的な検査は非現実的ではありませんす。そのため、経済的負担や動物への身体的負担が少なく、早期がんを発見するための簡便かつ非侵襲的な検査が求められています。

HIROTSUが研究・開発・販売する「N-NOSE」は、特定の線虫(C. elegans)の嗅覚を利用した、ヒト用の非侵襲的ながんスクリーニング検査です。特定の線虫は、がん患者の尿には引き寄せられますが、健康な人の尿は避ける傾向があります。この特性を利用し、「N-NOSE」は15種類のヒトのがん※2(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、膵臓がん、肝臓がん、前立腺がん、子宮がん、食道がん、胆嚢がん、胆管がん、腎臓がん、膀胱がん、卵巣がん、口腔・咽頭がん)を発見することが可能です。

本研究では、特定の線虫がイヌとネコの健常個体・腫瘍個体の尿の匂いを検出し区別できるかどうかを調査しました。

 ※2:胃、大腸、肺、乳、膵臓、肝臓、前立腺、子宮、食道、胆嚢、胆管、腎臓、膀胱、卵巣、口腔・咽頭のがん

  • 本研究の概要と成果

イヌ37頭(健常個体19頭、腫瘍個体18頭)、ネコ23頭(健常個体10頭、腫瘍個体13頭)を対象に、パイロット臨床試験を行いました。その結果、イヌとネコの尿サンプルにおいて、健常個体と腫瘍個体の間で特定の線虫の反応に有意な差があることがわかりました。あわせてReceiver Operating Characteristic分析(ROC分析:モデル予測の正確度を評価するための方法の一つ)にて、がんの判定に適したサンプルの希釈濃度の検証を行った結果、ある一定の濃度において検査に対し有効な性能となることが示されました。

以上のことから、特定の線虫がヒトでの検査と同様に、イヌとネコの腫瘍個体の尿サンプルに誘引されること、健康なグループと腫瘍グループとを区別し得ることが示されました。この結果は、線虫による検査が、イヌおよびネコにおける簡便・正確かつ低コストながんスクリーニング法として有用であることが示されたと考えています。

  • ​本研究におけるアニコム損保の貢献について

本研究では多くのイヌおよびネコの尿検体に加え、それらの背景となる年齢、性別、腫瘍の種類、部位等が整理されたデータが必要となりました。そのためアニコム損保では、グループ会社であるアニコム先進医療研究所株式会社が運営するグループ動物病院等から検体および付属する情報を収集し、本研究に提供することで、イヌおよびネコにおける線虫によるがん検査の効果の検証に寄与しました。

今後もアニコム損保では、予防型保険会社として、さまざまな研究を通じ、獣医療の発展と動物の健康に寄与すべく尽力してまいります。
 

■論文概要
タイトル:A new detection method for canine and feline cancer using the olfactory system of nematodes
著者:Toshimi Sugimoto, Yozo Okuda, Ayaka Shima, Natsuko Sugiura, Nobuaki Kondo, Genki Ishihara, Takaaki Hirotsu, Eric di Luccio
掲載誌:Biochemistry and Biophysics Report
DOI: 10.1016/j.bbrep.2022.101332
https://doi.org/10.1016/j.bbrep.2022.101332

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