SDGsの達成や社会課題解決は誰がやる?「SDGs・社会課題に関する意識調査」から見えてきた傾向

損害保険ジャパン株式会社のプレスリリース

2022年7月15日
損害保険ジャパン株式会社

「SDGs社会課題に関する意識調査」 学ぶ機会があったのは約6割、学習機会の創出に向け企業に求められるものとは

 損害保険ジャパン株式会社(取締役社長:白川 儀一、以下「損保ジャパン」)は、「SDGs・社会課題に関する意識調査」を実施しましたので、その結果を公表します。

1.調査実施の背景
 2015年9月に国連サミットで「持続可能な開発目標※(Sustainable Development Goals、以下「SDGs」)」が全会一致で採択されてから約7年が経過し、日本では、政府を中心に企業、自治体、NPOなどの各種団体および個人それぞれの立場で、SDGsの達成に向けて取組みが加速しています。
 SDGsの達成には、一人ひとりの理解や取組みが重要となっており、また、いまだに収束が見えない新型コロナウイルスの猛威や、世界的な政情不安などがある中で、10代以上の一般消費者が、SDGsについてどのような考えを持っているかを確認するため、本調査を実施しました。
 また、損保ジャパンが本調査を行うのは今回が4回目であり、これまで2017年度、2019年度および2021年度に同様の調査を実施しています。意識や行動における変化についてもあわせて確認しました。

<参考:過去の調査結果>(損保ジャパン公式WEBサイト)
■2017年度
 https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/news/2017/20180307_1.pdf?la=ja-JP
■2019年度
 https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/news/2019/20190807_1.pdf?la=ja-JP
■2021年度
 https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/news/2021/20210802_1.pdf

※「持続可能な開発目標(SDGs)」とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に載された2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。SDGsは、発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)な目標です。

2.調査概要
(1)調査期間:2022年6月13日~6月16日
(2)調査方法:インターネットアンケート調査
(3)調査対象:全国在住の15歳以上の男女
(4)回答者数 :1,272人

3.調査結果のポイント

■「SDGs」という言葉の認知度は前回調査で76.4%まで高まっていることがわかっていますが、目標の意味や内容などまでを理解している人は63.0%で、言葉の認知度に比べ約13ポイント低い結果になりました。学習指導要領の改訂により、学校で学んでいる10代と、それ以外の年代では、理解度に大きく差があることもわかりました。(Q1)
■重要度の高い社会課題として、「食糧問題(飢餓・食料の安定確保)」を選んだ人が32.9%(前回:25.7%)、また「戦争・紛争・テロ(平和に向けた課題)」を選んだ人が20.9%(前回:14.2%)と前回を大きく上回り、昨今の社会情勢などを受けて、身近に感じる社会課題にも変化が見られました。(Q2)
一方で、「海洋生態系および海洋の保護」や「陸上生態系および森林の保護」など、いわゆる生物多様性に関する項目は前回調査からの大きな変化はなく、国際的な潮流に関わらず、一般消費者のとらえる社会課題としての認識は、依然として低いことがうかがえます。(Q2)
■この一年で、SDGsについて学ぶ機会があったのは全体の約60%で、特に10代は、80%以上の人が、SDGsについて学ぶ機会があったと回答しているのに対し、30代以上は、約半数の人が「学ぶ機会はとくになし」と回答しています。(Q4)
■また、SDGs達成や社会課題解決に向けて「個人」が主に行動すべきであると回答した割合が46.1%と、他の年代よりも高く、他の年代に比べSDGsが身近であり、「自分事」としてとらえている割合が高いことがうかがえます。(Q5)
■さまざまな社会課題に対し、具体的な行動については「特に行動していない」と回答した人が全体の6割以上を占めており(Q3)、また、「平和」への貢献や「人権」への配慮などについて「新たな取組みをしていない」と回答した人が全体の約85%という結果(Q11)をふまえると、課題を認識している一方で、自分自身が行動するまでには至っていない人が多いことがわかりました。

<ご依頼事項>

・本調査結果を報道等でご利用の際は、出典として「損害保険ジャパン株式会社」の名前を明記してください。

4.調査結果
Q1.「SDGs」という言葉を知っていますか?(回答者数:1,272人)

・「よく知っている(20.2%)」、「まあまあ知っている(42.8%)」と回答した人の合計は63.0%で、前回行った「SDGs」という言葉自体を聞いたことがあると回答した76.4%※より、10%以上低い結果となりました。
・年代別で見てみると、10代は44.4%の人が「よく知っている」と回答しており、60代以上と約37%の差が開いています。
※2021年度調査結果 https://www.sompo-japan.co.jp/-/media/SJNK/files/news/2021/20210802_1.pdf

Q2.「社会課題」と聞いて重要度が高いと思うものを3つまで選んでください。(回答者数:1,204人)

・「食糧問題(飢餓・食料の安定確保)」を選んだ人が32.9%(前回:25.7%)、また「戦争・紛争・テロ(平和に向けた課題)」を選んだ人が20.9%(前回:14.2%)と大きく上回った一方で、「福祉・介護、高齢化社会」を選んだ人が25.8%(前回:31.5%)と大きく下回りました。
・「教育問題(教育格差等)」、「海洋生態系および海洋の保護」など下位7項目については、前回から大きな変化はなく、社会情勢などにかかわらず、一般消費者が感じている「重要度」が低い項目があることがみられました。

Q3.2で選択した項目に関して、具体的に行動していることはありますか?(回答者数:1,117人)

・「特にない」と回答した人が全体の約2/3を占めており、「社会課題」に対して具体的に行動している人が、していない人を下回る結果となりました。
・一方、「ある」と回答した人が10代で42.9%、20代では51.1%と、いずれも全体(34.4%)を大きく上回っており、若年層ほど具体的な行動まで起こしている傾向がわかりました。
・具体的に行動している内容については、「ごみを減らす」、「資源の節約やリサイクル」、「エコバックやマイボトルの持参」、「食品ロスをなくす」など日常生活でできることを挙げている人が多く見られたほか、「寄付活動」などの人道支援活動や、「ジェンダー平等に配慮した言動」などといった回答もみられました。

Q4.この一年で、SDGsについて学ぶ機会はありましたか。それはどのような場ですか? 
※複数選択可(回答数:1,201人)

・約40%の人が「学ぶ機会は特になし」と回答しており、中でも30代以上では約半数を占めていました。
・10代は、「学ぶ機会は特になし」と回答している割合が13.7%と全体よりも大幅に下回り、80%以上が何らかのツールで学んでいることがわかりました。特に「学校の授業」と回答した人が約70%と顕著な結果が出ており、学習指導要領の改訂により、小・中学校での教材に組み込まれたことも影響していることがうかがえます。
・「テレビ番組」と回答した人は全体の34.2%で、どの年代でも30%前後の人が回答しており、幅広い年代がテレビ番組からSDGsについて学んでいることがわかりました。

Q5.「SDGsの達成」や国内外の「社会的課題」の解決に向けて、主に誰が行動すべきだと思いますか?2つまで選んでください。(回答者数:1,201人)

・全体では、「政府・行政(58.3%)」と回答した人が最も多く、次いで「企業(38.8%)」と、前回調査時と、同様の結果となりました。
・年代別で見ると「個人」と回答した人が10代では46.1%と、全体の回答33.0%を大きく上回っており、他の年代に比べSDGsを「自分事」としてとらえている傾向が強いことがうかがえます。

Q6.企業が「SDGsの達成」や「社会課題」の解決に向けて果たすべき役割で、最も期待するものは次のうちどれですか?(回答者数:1,201人)

・「社会課題の解決に資する商品・サービスの開発・提供(30.6%)」と回答した人が最も多く、過去3回行った調査時と同様、企業の本業を通じた貢献が期待されていることがわかりました。
・一方で、企業に期待することが「わからない(17.7%)」「特に期待しない(13.7%)」と回答している人を合計すると全体の31.4%と、企業に対する具体的な期待を持っていない人の割合のほうが高いことがわかりました。

Q7. 「SDGsの達成」や、「社会課題」に取り組んでいる企業と判断するのはどのような点ですか?該当する選択肢を3つまで選択してください。(回答者数:1,201人)

・全体としては、前回調査同様、「企業ホームページや広告などで取組みが開示・公開されている(31.5%)」と回答した人が一番多く、企業活動における取組みを、ホームページや広告などで消費者にわかりやすく伝えることが求められていることがわかりました。
・年代別で見ると、「製品・サービスが提供される過程において、環境への配慮がなされている」ことを重視しているのは60代の人が43.6%と、他の年代より大きく上回っています。
・また、10代および20代の人は、他の年代よりも「SDGsに関する賞を受賞している」ことを重視している傾向がみられました。

Q8.「SDGsの達成」や「社会的課題」の解決に向けて取り組んでいる企業の製品・サービスを使用・購入したいと思いますか?(回答者数:1,201人)

・60代以上の人で「そう思う(32.8%)」「ややそう思う(42.6%)」と回答した人が合計で75.4%おり、全体の回答を大きく上回る結果となりました。
・特に、30代で「そう思う(16.3%)」と回答した人に比べ、2倍以上の人が重視していることがわかりました。

Q9Q8で「そう思う」または「ややそう思う」を選択した方に質問です。どのような製品、サービスを利用したいですか?※複数選択可回答者数:722人)

・「リサイクル素材や廃棄食材を利用してつくられるブランド商品」を選択した人が一番多く、全体の52.5%を占めました。
・項目により、年代間の差が大きく出ているものもあり、特に、「途上国の支援につながる商品・サービス」については、10代で選択している人が59.4%と、他の世代よりも大きく上回っています。
・「障がい者雇用の支援につながる商品・サービス」については20代が41.4%、30代が39.0%と他の世代よりも多くの人が選択しています。
・「自然環境への配慮や、社会への責任、健全な経営管理に取り組む企業の金融商品」および「環境に配慮した認証機関の認証ラベルが貼られている商品」を選んだ人は、10代、20代が他の世代よりも下回る結果となりました。

Q10.あなたが企業を自分の就職先として考えたり、家族や知人の就職先に薦めたいと思うとき、その企業が社会を良くすることに役立っているかどうかをどの程度考慮しますか?

(回答者数:1,201人)

・「かなり考慮する」と回答した人が全体で15.7%であったのに対し、10代が19.9%、20代が20.9%と全体を上回りました。
・30代は「かなり考慮する(12.8%)」と「やや考慮する(45.8%)」の合計が68.6%と、他の世代に比べて低く、特に、「全く考慮しない(14.3%)」と回答した人は50代以上の約3倍という結果になりました。

Q11「平和」への貢献や「人権」への配慮などについて、新たに取り組んでいることはありますか。(回答者数:1,201人)

・全体の約85%の人が「特になし」と回答しており、「平和」や「人権」について新たに行動するまでには至っていない人が多いことがわかりました。
・取り組んでいる内容は、年代を問わず「募金活動」、「支援団体等への寄付」、「ジェンダー差別を行わない」などの回答が複数見られました。
・また、「SNSやテレビ番組などで情報収集を行い、自身の問題として考える」(60代)、「有識者のブログや動画などを複数見ている」(60代)など、「平和」や「人権」に関する情報ツールとして、幅広い世代でSNSが活用されていることもうかがえました。

5.識者コメント

SOMPOインスティチュート・プラス株式会社
ワーク・エコノミックグロースグループ 主任研究員 大沢 泰男

 テレビや新聞といったマスメディアに加えて、インターネットやSNSを通じた情報発信により、SDGsは幅広い年齢層で広く認知されていることがわかります。その中では、カーボンニュートラル、気候危機、人権問題、フードロス削減など、身近な社会課題やその解決策が扱われるケースが増えており、昨今ではロシアのウクライナ侵攻が食料問題やエネルギー問題に波及したことも、持続可能な社会のあり方を考えさせられる機会になったと言えます。
 一方、グローバル企業には生物多様性の損失が長期的なリスクとして認識されつつありますが、Q2「「社会課題」と聞いて重要度が高いと思うものを3つまで選んでください。」で生物多様性に関連の深い項目を重要な社会課題と回答した割合は低く、個人にとっては社会課題として十分に浸透していない現状がわかります。本年後半には、生物多様性の保全に関する新たな国際目標の採択が見込まれており、こうしたタイミングを活かして、個人が多様な社会課題への関心や理解を深められるような、政府や企業からの情報発信が望まれます。
 今回の調査結果で特に注目すべきは、15~19歳の回答です。SDGsを「学校の授業」で学んだと回答した割合が67.0%にのぼり、SDGs達成や社会課題解決に向けて「個人」が主に行動すべきであると回答した割合が46.1%と、他の年齢層との比較で高い水準を示しています。SDGs達成に向けて「持続可能な開発のための教育(ESD)」を重視するという国際的な潮流の中、日本では新学習指導要領において持続可能な社会の創り手の育成がうたわれています。社会課題を自分事として捉えて、解決に向けて自ら行動を起こす力を身に付ける教育が進められており、その効果が着実に発現しつつあると考えられます。
 ただ、課題も浮き彫りになってきました。この1年間でSDGsを「学ぶ機会は特にない」と回答する割合が、30歳以上では5割前後を占めています。SDGs自体への認知度は高まっており、今後は社会人の理解を深めるための学習機会の拡充が望まれます。幸い、企業価値の向上や社会的責任といった観点からも、中小企業を含めた企業のSDGsへの取組みは増加しています。こうした状況を活用し、顧客や取引先に加えて、自社の従業員がSDGsを主体的に学べる仕組みを整えていくことが期待されます。

 

以上

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