ニューバーガー・バーマン 商船三井によるダイビルへの株式公開買付けに関する声明

ニューバーガー・バーマン株式会社のプレスリリース

2021年12月22日(東京)-グローバルにビジネスを展開する独立系資産運用会社であるニューバーガー・バーマン(以下、「当社」)は、投資先の一社であるダイビル株式会社(証券コード:8806)が2021年11月30日に発表した、「支配株主である株式会社商船三井による当社株式に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」において、その賛同に至ったプロセスに関して開示の透明性改善を求める声明を、ここに発表しましたのでお知らせいたします。

当社は、ダイビル株式会社(以下、「ダイビル」または「同社」)の長期投資家であり、以前から同社の経営陣と資本効率やコーポレートガバナンス、重要性の高い環境または社会的な課題に関して対話を重ね、同社の持続的な企業価値向上を目指す取組みを支持してきました。資本政策に関しては、株主資本利益率(ROE)の低下の要因に繋がっている資産効率の改善に向けて、問題提起にとどまらず、責任ある株主として、外部資金を活用した資産の効率的な運用や配当増額、自己株式の取得を含めた株主還元政策の見直しなど、対話を通じて改善を働きかけてきました。しかしながら、同社から抜本的な改善策が示されなかったため、2021年6月に開催された同社の定時株主総会において、代表取締役 社長執行役員の園部俊行氏の選任について反対の議決権を行使し、その判断理由を当社のウェブサイト(https://www.nb.com/ja/jp/esg/nb-votes?audience=JP-institutions)などで事前開示しました。

当社は、ダイビルのコーポレートガバナンスに関し、同社の株式を51.91%保有する支配株主である株式会社商船三井(以下、「商船三井」)と少数株主の間で起こり得る利益相反への適切な対応として、少数株主利益と権利の保護の観点から、取締役会の独立性の改善を求めてきました。また、同時に、取締役会のジェンダーとスキルの多様性も経営戦略の活発な議論に欠かせない要素であると考えており、同社経営陣と取締役会の多様性向上に関しても建設的な対話を続けてきました。さらに、重要性の高い環境または社会的な課題に関しては、同社の不動産事業における環境負荷低減の取組みに注目し、対話を重ねてきました。同社の取組みの適切な開示方法として、米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB)や気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)といった国際的なESG開示フレームワークを紹介するなど、同社のサステナビリティの取組みの改善を求めてまいりました。

ダイビルは、2021年11月30日、商船三井が提案する同社の普通株式1株当たり2,200円の公開買付けに関し、賛同の意見を表明しました。本公開買付けが成立した場合、同社は商船三井の完全子会社となり、所定の手続きを経て上場廃止となる予定です。同日に発表された同社の説明資料(以下、「プレスリリース」)において、同社が本公開買付けに賛同した背景として、親子上場であることが成長の制限につながっていること、また商船三井のグループに加わることよって、資本等の経営資源をより一層活用し、国内外の不動産市場における成長の加速が可能になる見込みであることが説明されました¹。ダイビルが長期的な企業価値の向上を目指す上で非上場化という選択肢をとることにより、当社が今後の企業価値向上の成果を享受できないことは長期株主として残念であるものの、当社は同社の取締役会の判断を尊重し、日本の不動産業界を代表するリーディングカンパニーへ飛躍されることを願っています。

一方、プレスリリースによると、本公開買付けは「当社の一般株主の皆様に対して適切なプレミアムを付した価格」であり、その賛同を判断するに至っては「特別委員会²の関与の下、公開買付者との間で十分な交渉を重ねた結果」であると説明されています³。しかし、当社は商船三井の本公開買付けに対してダイビルが賛同の意見を表明したプレスリリースやその決定プロセスを精査した結果、ダイビルの取締役会と特別委員会が賛同に至った経緯や、その判断が一般株主の利益に資するかという疑義が生じています。

当社の主たる懸念は、ダイビルの取締役会と特別委員会が本公開買付価格である1株当たり2,200円が同社の適正な価格であると判断した経緯や決定プロセスが不透明であることです。

プレスリリースによると、2021年11月17日に、商船三井から本公開買付価格を1株当たり2,100円とする最終提案がダイビルへ提出されました。1週間後の同年11月24日に、ダイビルは「プレミアム水準が本公開買付けと同様の支配株主による完全子会社化事例と比して不十分であること並びに[同社及び同社の]特別委員会の財務アドバイザーによる株式価値算定結果に照らしても合理的な価格と判断できない」という理由で、本公開買付価格を2,200円に引き上げるよう求めたと説明しています。その翌日の同年11月25日に商船三井はその提案を受諾し、同社の取締役会は同年11月30日に、1株当たり2,200円での本公開買付けに賛同の意見を表明し、株主に対して応募を推奨することを決議しました⁴。

また、プレスリリースには、ダイビルが本公開買付けの賛同に至った決定プロセスにおいて、同社と特別委員会における独立した第三者算定機関からの株式価値算定書が参考にされたという記述が散見されます。さらに、プレスリリースにおいて第三者算定機関がダイビルの株式価値を算定する上で採用した算定手法として、市場株価法、類似会社比較法、ディスカウント・キャッシュ・フロー法を紹介しているものの、その中には、修正簿価純資産法は算定手法として含まれていませんでした。一方で、同社は賃貸不動産における賃貸オフィスビルや賃貸商業施設、賃貸住宅を連結貸借対照表に計上しており、2021年3月期においてはその期末残高は簿価で3,371億円であり、同年の純資産額の1,673億円の約2倍です⁵。したがって、当社は、適正な株式価値算定には同社が保有する資産の含み益を反映する必要があると考えています。さらに、賃貸不動産の含み益を反映した1株当たりの純資産額は、同社が2021年5月に発表した決算説明会資料でも開示されているため、同社でもその算定手法が採用されていることが確認できます⁶。最後に、プレスリリースによると、第三者算定機関から同社および特別委員会に対し株式価値算定書が提出されたのは2021年11月29日ですが、それはダイビルが商船三井に対し本公開買付け価格を2,200円に引き上げることを求めた5日後です。したがって、ダイビルは株式価値算定書を受け取る以前に、2,200円が適正な公開買付価格として判断したこととなるため、その決定プロセスに対して疑義が生じています。

プレスリリースの発表以降、当社は同社に対して前段の疑義や懸念点に関して同社へ説明を求めることを目的とした対話を行いました。同時に、特別委員会が2021年9月26日から同年11月29日までの合計9回、計16時間にわたって開催した会議の議事録の開示を求めました。しかし、公開買付けへの賛同に関する決定プロセスについて、疑義を解消する情報の提供は認められず、また算定方式の追加説明や特別委員会の議事録に関しても財務アドバイザーとの機密情報保持義務や特別委員会が非公開の会議体であることなどを理由に開示は認められませんでした。当社は、特別委員会は一般株主の利益の確保の観点から本公開買付けをモニタリングするために設立された組織体にも関わらず、決定プロセスの透明性の改善を目的とした開示に否定的なスタンスを取ることは理解に苦しむ対応であると考えています。

当社は、上記を理由として、ダイビルの本公開買付けの賛同に至った決定プロセスの透明性の改善を求める声明文を本日公開することといたしました。当社としてはこの声明を通じて、ダイビルが少数株主への信任義務を全うし、コーポレートガバナンス・コードの基本原則である【適切な情報開示と透明性の確保】を実践されることを期待しています。コーポレートガバナンス・コードの基本原則3によると、「上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財政情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。⁷」が提唱されています。

当社が求める情報開示は、商船三井の公開買付け価格がダイビルの企業価値を適正に反映しているか、また当社を含めた少数株主の利益に資する価格であるかを判断するために不可欠であると考えているため、ダイビルには、適切かつタイムリーな対応を求めます。

¹ ダイビル株式会社『支配株主である株式会社商船三井による当社株式に対する公開買付けに関する賛同の意見表
  明及び応募推奨のお知らせ』(2021年11月30日)P.11
² 特別委員会:ダイビルによると、特別委員会は「企業価値の向上及び当社の一般株主の皆様の利益の確保の観点
  から本取引に係る検討、交渉及び判断を行うための体制の構築」の一環として設置された組織体です。(ダイビ
  ル株式会社『支配株主である株式会社商船三井による当社株式に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び
  応募推奨のお知らせ』(2021年11月30日)P.9
³ ダイビル株式会社『支配株主である株式会社商船三井による当社株式に対する公開買付けに関する賛同の意見表
  明及び応募推奨のお知らせ』(2021年11月30日)P.12
⁴ 同上 P.10
⁵ ダイビル株式会社、第149期(自2020年4月1日至2021年3月31日)有価証券報告書、(2021年6月25日)P.74
⁶ ダイビル株式会社、2021年3月期決算説明資料(2021年5月21日)P.6
⁷ 株式会社東京証券取引所、『コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向
  上のために~』(2021年6月11日)P.2

ニューバーガー・バーマンについて
ニューバーガー・バーマンは、1939年に創業された従業員が自社株式を保有するプライベート経営の独立系資産運用会社です。株式、債券、プライベート・エクイティ、ヘッジファンド投資等の多岐にわたる資産クラスについて、世界中の機関投資家およびアドバイザー等に運用サービスを提供しています。世界25カ国においてビジネスを展開し、2,400名を超える従業員を擁しています。また8年連続でPensions & Investmentsによる1,000名以上の従業員を対象とした調査で「働きやすい資産運用会社」の1位、若しくは2位に選出されました。2020年、ニューバーガー・バーマンは、PRIのリーダーズ・グループに選出されました。これは、PRIが環境、社会、ガバナンス(ESG)の実践における卓越した実績をあげている署名機関を選定するもので、選出される機関はPRI 署名機関全体の1%未満です。また、当社は、PRIが実施する最新のアセスメント・レポートにて、ESGインテグレーションの取り組みに対し、全資産クラスで最高評価A +を獲得しました。 2021年9月30日時点における運用資産残高は4,370億ドルです。詳細につきましては、当社のウェブサイトをご覧ください。https://www.nb.com/japan

上記はニューバーガー・バーマン・グループLLC が作成した英文の記事の日本語による参考訳です。全ての情報は、記載がない限り、2021年9月30日時点のものです。原文と本抄訳の間の差異に関しては、原文が優先します。PRIリーダーズ・グループの選定について、従来はアセットオーナー(資産保有機関)のみが対象でしたが、2020年から資産運用会社も対象となりました。現在、PRIに署名している資産運用会社は2,100社超にのぼりますが、PRIリーダーズ・グループに選出されたのは、わずか20社となります。リーダーズ・グループは、責任投資において最先端の取り組みを進めている署名機関を紹介し、その署名機関の活動の動向に焦点を当てるものです。PRIは、毎年一つのテーマを定め、署名機関から提出されたレポートへの回答とアセスメント・データに基づいて、組織全体で責任投資における卓越した実績をあげている署名機関を選定しています。2020年のテーマは、気候変動報告でした。PRIリーダーズ・グループに関する全ての情報の出所はPRIです。当社グループはその情報に基づいて、いかなる表明および保証、また意見を述べるものではありません。当資料は、情報提供を目的として作成されたものであり、法的、税・会計上または投資のご提案のためのものではなく、また個別の有価証券等の勧誘等を目的とするものでもありません。当資料は、作成時点において信頼できると思われる情報に基づき作成されていますが、その正確性並びに完全性を保証するものではなく、また、当資料の受領者又は最終投資家が当資料に含まれるいかなる情報に基づきとった行動にも、当社グループは責任を負いません。当資料に含まれる情報は作成時点のものであり、今後予告なく変更されることがあります。本資料に記載される見通しや意見等は必ずしも弊社グループとしての統一見解ではない場合があることにご注意ください。本資料で記載される特定の金融商品は過去のパフォーマンスは将来の実績を何ら示唆するものではありません。

ニューバーガー・バーマン株式会社
〒100-6512 東京都千代田区丸の内一丁目5番1号
金融商品取引業者関東財務局長(金商)第2094 号
加入協会一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人投資信託協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

<本件に関するお問い合わせ>
ニューバーガー・バーマン株式会社 : 代表電話: 03-5218-1930 メール: info.japan@nb.com

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