三井住友DSアセットマネジメント株式会社のプレスリリース
三井住友DSアセットマネジメント株式会社(代表取締役社長 兼 CEO:猿田隆)は、経済イベントや市場動向に関するマーケットレポートを日々発行しております。このたび、マーケットレポート「日本も見習いたい『インディア・スタック』」を2022年12月12日に発行いたしましたので、お知らせいたします。
インドは現在、モディ政権が掲げるデジタル化政策「Digital India」の下で、革新的なシステム『インディア・スタック』の運用を実施しています。国民は様々な個人データを保管・共有でき、民間企業は積極的にビジネス上で『インディア・スタック』を活用しています。スマートフォンを通じたキャッシュレス決済が急拡大するなど、国を挙げてのデジタル化推進が社会の効率化や経済の発展に大きく貢献しています。
【ポイント1】『インディア・スタック』により急拡大するキャッシュレス決済
■『インディア・スタック』の実績の1つとして、送金・決済プラットフォームであるUPI(Unified Payment Interface)の活用によりスマートフォンを通じたキャッシュレス決済が急拡大していることが挙げられます。
■インド政府は、生体認証と携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)で個人特定ができるようになったことで本人証明のコストが低下し、貧困層も銀行口座が持てるようになったことに合わせて、2016年に決済システムのUPIを始動しました。
■UPIは、銀行のネットワークのほか「Google Pay」などの決済サービスの基盤にもなっています。キャッシュレス決済は、インドの低所得層に急速に広がり、国民はスマートフォンを用いて24時間週7日いつでもどこでも即時振り込みをすることができるようになりました。
■2016年度に始まったUPIを用いたキャッシュレス決済は、コロナショック後、電子商取引(Eコマース)の増加とともに急速に拡大しています。2022年11月の決済件数は73億件、取引金額は12兆ルピー(約20兆円)となり、取引金額は2年で6倍に膨らんでいます。また、UPIを用いたキャッシュレス決済は、2021年度の個人消費の18%を占めるとの調査もあります。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
【ポイント2】『インディア・スタック』はインドのスタートアップの源泉にも
■インド政府が推進する『インディア・スタック』とは、政府・民間企業・開発者がデジタルデータを円滑に使えるようにするためのデジタル公共財やその仕組みのことを指します。これは、インド版のマイナンバーカードである「アドハー」をベースに、複数のシステムが相互接続されたデジタルインフラのプラットフォームとなっています。
■『インディア・スタック』は、公的な個人識別番号制度を官民サービスとつなぎ、本人確認や送金を行う基幹インフラであり、インドの経済発展に貢献しています。民間企業は比較的自由に『インディア・スタック』を活用することができ、大手企業でなくても容易に市場参入することができるため、スタートアップ企業や中小企業の発展にもつながっています。
■例えば、多くのフィンテック関連のスタートアップ企業が、スマートフォンの急ピッチな普及と相まって農業や漁業、医療の各分野でもキャッシュレス化が進んでいるなか、『インディア・スタック』を活用し、市場に新規参入しています。
■報道によれば、インド政府が認定するスタートアップ企業は8万社を超えており、ユニコーン(企業価値10億ドルを超える未上場企業)については70社と、米国と中国に次ぐ世界3位に位置づけられるなど、存在感を高めています。
■また、コロナ禍では、『インディア・スタック』を利用して、補助金を迅速に支給し、ワクチン予約サイトアプリによって、約13億人もの国民がワクチン接種の予約・管理・証明書発行などを行いました。
【今後の展開】デジタル化進展によりインド経済は高成長持続
■インド経済は、コロナショックの影響を受けた年度を除けば、2010年度以降、年率5~8%の高成長を実現しました。2010年に導入したインド版マイナンバーカード「アドハー」をベースに進展したデジタル化がこの成長を支えたとみられます。
■インドは、民間企業が『インディア・スタック』を積極的にビジネス上で活用することでデジタル化が進行し、データの量、質ともにデジタル大国になりつつあります。これはインドの国際競争力を一段と高めることにつながると考えられます。生産年齢人口が拡大する人口ボーナス期を迎えていることに加え、デジタル化の一層の進展で今後もインド経済は高成長を維持するとみられます。
■なお、『インディア・スタック』は新興国を中心に世界的に注目を集めています。『インディア・スタック』を他国に展開するためのスキームも公開されていますので、今後、同スキームを活用したデジタル化が新興国で大きく進む可能性があると言えます。
重要な注意事項
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