三菱UFJ信託銀行株式会社のプレスリリース
三菱UFJ信託銀行株式会社(取締役社長: 長島 巌、以下 三菱UFJ信託銀行)が主催する「デジタルアセット共創コンソーシアム」(略称DCC、会員企業数134社)は、2022年4月に設置した「資金決済WG」の検討状況を中間報告書として纏めましたので公表します。
併せて、ステーブルコイン*1(以下、SC)の発行・管理基盤である「Progmat Coin(プログマコイン)」が、セキュリティトークン*2(以下、ST)取引における業界横断的な決済方式となるよう、複数のST基盤とのクロスチェーン実現に向けた技術検証を開始しますので、お知らせします。
*1 ブロックチェーン(BC)等の電子情報処理組織を用いて移転することができる、法定通貨と価値の連動等を目指す決済手段の総称(資金決済法における「電子決済手段」)
*2 ブロックチェーン(BC)等の電子情報処理組織を用いて移転することができる有価証券等の総称(金融商品取引法における「電子記録移転有価証券表示権利等」)
DCCでは、「資金決済WG」を2022年4月に設置し、関係当局のオブザーブの下、デジタル証券PTS*3、金融機関、証券会社、ソフトウェア会社及び法律事務所等31社と検討を進めています。
「資金決済WG」では、「Progmat Coin」基盤の活用を前提に、「Progmat内完結の資金決済フロー具体化」及び「クロスチェーン決済具体化」を目的とした2つの分科会(「Progmat内RTGS*4分科会」「クロスチェーンRTGS分科会」)を4月に設置し、業界横断的な意見の吸い上げと合意形成を実施しています。
*3 証券取引所を介さずデジタル証券を売買できる私設取引システム(Proprietary Trading System)
*4 決済を1件ずつ即時に行い決済リスクを極小化する、即時グロス決済方式(Real-Time Gross Settlement)
2.中間成果と今後の対応
2023年の改正資金決済法施行を踏まえたリリースを目標としている、SC発行・管理基盤の「Progmat Coin1.0」(初回スコープ)について、要件を整理し、業務フロー・データフロー案を策定しました。10月より実装フェーズに移行し、システム化に向けて各種フローについて各社との合意形成を目指します。
また、クロスチェーン技術に係る机上検証を行い、実装方式案を策定すると共に、業界横断的な技術検証計画を取り纏め、株式会社Datachainと技術提携のうえ、10月より共同で検証を開始します。
株式会社Datachainプレスリリース: <https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000055051.html>
本件に係る詳細を纏めた「中間報告書」は、下記のURLよりご覧ください。
WG中間報告書 : <https://www.tr.mufg.jp/ippan/pdf/st-sc-rtgs_report.pdf>
以上
<報告書の要旨>
要旨は以下のとおりです。詳細な検討内容は、報告書を公表しておりますのでご覧ください。
項目 | 内容 |
【Progmat内RTGS】 スキーム/契約構成/法的論点 | ・SCは個人を含むエンドユーザーがSC残高を直接保有しない「ホールセール(WS)型」と、エンドユーザーがSC残高を直接保有する「リテール型」に大別される。 ・まずはSTセカンダリ取引の決済効率化が必須目標であり、当該ユースケースでは金商業者間決済のSC利用のみで要件充足するため、「WS型」を実装する。・複数金商業者を委託者兼受益者とする受益証券発行信託を銘柄別に組成(目的別に複数のSC銘柄発行が可能)し、資金決済法上の電子決済手段(SC)として特定信託受益権を発行する。 |
【Progmat内RTGS】 業務プロセス/システム構成 |
・WS型SCの業務プロセス/システム構成として、「①PTSや金商業者がNode*5保有未済」と「②直接保有済」の2つの業務態様の断面が想定され、まずは①の断面における「Progmat Coin1.0」の要件を整理し、業務フロー/データフロー案を策定した。 ・②の断面における、より高度化された全自動化プロセスも整理を実施し、SC決済のフェイル*6発生防止策(事前チェックプログラム実装)やPTSにおける個人情報取扱回避策(権利者ID情報のPTS宛連携不要)を織り込み済み。・PTSの個人情報取扱回避のために想定している、金商業者Node間の情報共有の実現方法については、金商業者間においても個人情報の第三者提供に該当し得るため、本WGの残期間において継続検討を行う。 |
【クロスチェーンRTGS】技術検証 | ・必要な技術検証内容の策定に向けて、机上検証によりクロスチェーン実装方式の主案を定めた。 ・チェーン(BC)間の接続/認証方式として、「API*7方式」「相互認証方式(TTP*8方式、HTLC*9方式、Relay*10方式)」で比較し、拡張性制約や一定のケースにおける取りはぐれを回避すべく「Relay方式」を主案とした。 ・「Relay方式」のアーキテクチャとして、「IBC*11」プロトコル(通信規格)活用が望ましい前提で、実装方式である「直接検証型」「プロキシ型(BC上)」「プロキシ型(TEE*12上)」で比較し、拡張性とセキュリティ・性能面から「プロキシ型(TEE上)」を主案とした。 ・Corda*13における実装方法として、トランザクション(Tx)の正当性を担保するためのValidatorsを導入すると共に、Corda側のロック/アンロックを行いアトミック(一体不可分)な処理を実現すべく、Encumbrance機構(Tx消費条件の任意追加)を活用する。 ・①疑似環境でのQuorum*14-Corda間クロスチェーン検証、②各ST基盤-Progmat Coin間の機能検証、③実際のST取引を想定した実証検証、の3Stepで検証を進めることとし、①は2022年10月~2023年2月で実施する。 |
ネクストアクション | ・「Progmat Coin1.0」実装、及び「②PTSや金商業者がNode直接保有済の断面」における全自動化プロセス確定を行う。・実機検証Step1の検証開始と技術課題の抽出、及び検証結果を踏まえた実機検証Step2の計画策定を行う。 |
*5 DLT(分散型台帳技術)を用いたシステムのネットワークに直接参加しているサーバー
*6 証券決済に関して、決済予定日を過ぎても証券の受け渡しが完了していない状態
*7 ソフトウェアやプログラム間で情報をやり取りするためのインターフェイスの仕様(Application Programming Interface)
*8 信頼可能な第三者エンティティによりBC間の整合性を担保する方式(Trusted Third Party)
*9 BC〔X〕とBC〔Y〕間の交換取引において、〔X〕における移転先(〔Y〕における移転元)が秘密鍵を用いて〔X〕上のトークンをアンロックすると、〔X〕における移転元(〔Y〕における移転先)は当該鍵を用いて〔Y〕上のトークンをアンロックすることが可能になる方式(Hashed Time Rocked Contract)
*10 BC〔X〕内のBC〔Y〕検証モジュールと、BC〔Y〕内のBC〔X〕検証モジュール間で、相互認証を行う方式
*11 複数のBC間で情報をやり取りするために開発されたデータ転送・認証・信頼性を処理するプロトコル(通信規格)(Inter Blockchain Communication)
*12 アプリケーションの安全な実行環境を実現することを目的とした、OSとは独立したCPU上の隔離実行環境(Trusted Execution Environment)
*13 Progmatシステムが利用している、DLT基盤の1種
*14 他のST基盤が利用している、DLT基盤の1種
<「資金決済WG」(Progmat内RTGS分科会)参加者>
(2022年4月設立時から新しく加盟した会社を下線で表記)
想定参加者 | 補足 |
事務局 兼Core Developer | ・三菱UFJ信託銀行株式会社 |
デジタル証券PTS | ・以下の2社。(五十音順) ①株式会社JPX総研 ②大阪デジタルエクスチェンジ株式会社 |
金融機関 | ・以下の4行/社。(五十音順) ①三井住友信託銀行株式会社 ②三菱UFJ信託銀行株式会社 ③その他金融機関2行/社 |
証券会社 (デジタル証券専業証券会社設立予定者含む) |
・以下の17社。(五十音順) ①auカブコム証券株式会社 ②Hash Dash Holdings株式会社 ③株式会社LayerX ④LINE証券株式会社 ⑤株式会社SBI証券 ⑥SMBC日興証券株式会社 ⑦岡三デジタル証券準備株式会社 ⑧ケネディクス証券設立準備株式会社 ⑨大和証券株式会社 ⑩東海東京フィナンシャルホールディングス株式会社 ⑪松井証券株式会社 ⑫マネックス証券株式会社 ⑬みずほ証券株式会社 ⑭三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 ⑮モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社⑯ ⑰その他証券会社2社 |
DLT基盤又は証券システム基盤を担うソフトウェア会社 | ・以下の4社。(五十音順) ①SBI R3 Japan株式会社 ②株式会社エヌ・ティ・ティ・データ ③株式会社大和総研 ④株式会社野村総合研究所 |
法律事務所 | ・アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 |
オブザーバー | ・経済産業省 ・日本STO協会・日本証券金融株式会社 |
<「資金決済WG」(クロスチェーンRTGS分科会)参加者
想定参加者 | 補足 |
事務局 兼Core Developer | ・三菱UFJ信託銀行株式会社 |
デジタル証券PTS | ・以下の2社。(五十音順) ①株式会社JPX総研 ②大阪デジタルエクスチェンジ株式会社 |
ST基盤提供者 | ・以下の2社。(五十音順) ①株式会社BOOSTRY ②Securitize Japan株式会社 |
DLT基盤又は証券システム基盤を担うソフトウェア会社 | ・以下の3社。(五十音順) ①株式会社Datachain ②SBI R3 Japan株式会社 ③株式会社エヌ・ティ・ティ・データ |