ジャパンネクスト証券株式会社のプレスリリース
ジャパンネクスト証券株式会社(本社:東京都港区、代表取締役CEO:山田正勝)は、開業間もない大阪デジタルエクスチェンジ(本社:東京都港区、 代表取締役社長:朏仁雄、)と共同で、 「PTSのこれから」をテーマに、PTSウェビナー『市場インフラの一翼を担うPTS —基本的な役割と今後のビジネス展開について—』 を2022年7月27日(水)に開催しましたので、お知らせいたします。
- PTSウェビナー概要
■ 登壇者 :ジャパンネクスト証券株式会社 代表取締役CEO 山田 正勝(以下、JNX山田CEO)
大阪デジタルエクスチェンジ株式会社 代表取締役社長 朏 仁雄(以下、ODX朏 社長)
■ 司会者 :一般社団法人 日本金融経済研究所 代表理事 馬渕 磨理子
■ 内容 :市場インフラの一翼を担うPTSの基本的な役割と今後期待される機能、セキュリティ・トークンや
外国株式など、非上場有価証券の取扱いを含めた今後のビジネス展開について
※ PTSウェビナーの動画は下記のURLからご視聴いただけます。
https://youtu.be/OlEFBEzalzo
- PTSウェビナー内容
PTS日本最大手ジャパンネクスト証券 会社紹介
JNX山田CEO 「2006年11月に会社設立、2007年8月にPTSの運営を開始して今年で15年となります。現存の株式PTSの中では、最も歴史があります。2007年開業当時は、夜間取引のみでしたが、現在は昼と夜のマーケットを運営しています。その他、日本国債の電子取引市場も運営しており、株のPTSでは日本最大手となっています。」
2022年に新たにPTSを開業した大阪デジタルエクスチェンジ 会社紹介
ODX朏社長 「2021年4月にSBI PTSホールディングス(SBIホールディングス完全子会社)と三井住友フィナンシャルグループの合弁会社として設立し、2021年11月に野村証券と大和証券が資本参加し、資本金等計40億円までの第三者割当増資を実施しました。株式のPTSを皮切りにセキュリティ・トークンの流通市場を整備し、国内初のセキュリティ・トークンの取引の場を提供することを目指しています。2022年6月27日からPTSの運営を開始し、順調にスタートしています。」
PTSとは何か — 基本的な役割やこれまでの軌跡についてジャパンネクスト証券山田CEOが説明
取引所とは
JNX山田CEO 「まず、PTSの説明の前に、取引所とはどういうものなのかを説明します。例えると「魚市場」です。一定の資格をもつ商人が一ヶ所に集まって、需給を集約し値段を付ける場が取引所です。豊洲市場を例に挙げると、仲買人・漁師さん・魚屋さんがいて取引を行う。取引所も基本的な構造は同じ。ただし、取引所にはインフラとしての役割があり、かつては売買の清算・決算までを取引所が行っていました。現在では、日本証券クリアリング機構(JSCC)と証券保管振替機構(ほふり)が独立し、清算・決済機能を果たしています。」
PTSとは
JNX山田CEO 「PTSは、1998年の日本版ビッグバンの際にできたものです。基本的な機能は、取引所とほとんど変わりません。PTSの参加証券会社に口座を作り、注文をPTSに流すという指示があれば、PTSでの取引が可能です。」
取引所とPTSの違い
JNX山田CEO 「大きな違いとして、取引所は免許が必要なのに対し、PTSは認可制で証券会社が兼業で運営できます。制度面での違いとしては、PTSが価格決定方法や売買代金シェアにおいて制限されていることです。また、取引の観点からは取引時間や呼び値の刻みが取引所と違い、自由に設定できます。」
PTSがどのように伸びてきたのか
JNX山田CEO 「1つ目は技術の進歩、2つ目は規制緩和です。かつて取引所は大きな体育館のような場所で、大勢の人が集まって取引を行っていたため、取引所を運営するにはお金・人・不動産が必要でした。しかし現在では、PTSも取引所も高性能データセンターで電子的に売買を行っており、お金・人・不動産などが以前の様に必要でなくなり、取引にかかる技術的な差はなくなっています。また、当社は、米ナスダック社のシステムを使っているため、取引の反応速度自体は取引所よりも速いものになっています。
PTSにかかる規制緩和として、JSCC(日本証券クリアリング機構)における清算解禁により、取引後の決済が取引所と全く同じになったことや、2019年8月から信用取引がPTSでも取引可能になったことで大きくシェアを伸ばしました。
それから、2020年10月に起きた東京証券取引所のシステム障害により全銘柄の取引が終日取引停止となったことにより、PTSを代替市場として位置付ける流れが生まれ、今般の最良執行方針の見直しや、金融審議会の中間整理の中でPTSのより一層の機能向上が検討されることになっています。」
PTS業界が追い風の中、ベストタイミングとなった大阪デジタルエクスチェンジの開業経緯とビジネス展望
ODX朏社長 「もともと、セキュリティ・トークンの二次流通市場を作ることを会社の目標として設立しました。最良執行や市場間競争の考え方が時を同じくして出てきているため、結果的にタイミングよくリリースができたと考えています。ここから先は、ご利用いただく投資家の皆様にとってのメリットになるよう邁進し、市場間競争に 一石を投じたい。PTSへの期待の大きさが、この先計画しているセキュリティ・トークン市場に関しても追い風になっています。価格改善、取引手数料のコスト削減、さらには証券会社に課せられる最良執行の考え方に加え、新しい商品としてセキュリティ・トークンを取り扱っていきたいと考えています。」
PTS業界は3社に。ジャパンネクスト証券は大阪デジタルエクスチェンジの参入をどのように捉えているのか
JNX 山田CEO 「当社のシェアは全体の6%から8%。売買代金は2,000億から3,000億、多い時には4,000億円近くになりますが、東証に対してはまだまだ小さなシェアです。PTS同士競争するよりも、PTSを運営するもう1社、Cboeジャパンも含めて、知恵を出し合って、もっと幅広い取引の場を提供していくことを志し、日本全体の取引量を増やしていくことが1番大切だと考えています。そういう意味でODXの参入は、歓迎しているというスタンスです。お互いに様々な取引手法を考え、投資家の皆様に役立つ市場を作っていきたいと思います。
今までも、新しい注文方法などを取り入れてきましたが、そうした新しい取り組みを3社で競うことでサービス向上が図れると考えています。
競争によって新しい商品を取り込み、市場の多様化を通して「新しい資本主義」に資することを目指し、さらなるイノベーションを促進したいと考えています。」
「日本の市場のパイを広げていくことが究極の目標」 — 大阪デジタルエクスチェンジの市場参入を歓迎する
ジャパンネクスト証券のコメントを受けて
ODX朏社長 「今日で開業後、丸1ヵ月になります。取引は徐々に増えてきており、現状で日々300億円ほどの取引が行われています。安定的にこなしていくことが目先の目標ですが、中期的にはシェアを徐々に増やし、3%にもっていきたいと考えています。山田CEOもおっしゃっていたが、日本市場のパイを広げていくことが究極の目標と捉えています。これまでPTSを利用していなかった市場参加者を誘致し、流動性を高めていく努力が必要だと考えています。PTSの特徴の一つとして、取引所での約定よりも有利な価格でPTSでは取引ができることなどを参加いただく証券会社や投資家の皆様にアピールしていきたいと考えています。また、証券会社にとってはPTSで約定することでコストが安くなり、ひいては、投資家の皆様にも還元されます。この循環をうまく作っていくことが訴求ポイントになっていくと考えています。」
PTS3社を合わせたシェアはどの程度なのか。そして、どのように市場を拡大していくのか
JNX山田CEO 「10年前、我々が最大手でも全体に対してのシェアが1%以下という日も多い状況だったが、今は3社合わせて、11~12%取れるようになってきた。そう意味では喜ばしいが、逆に3社合わせてもまだ「たった11~12%」という状況です。
最良執行方針の改正が来年1月より執行されるが、この法令改正は我々にとって追い風になります。我々は取引所よりも良い値段を提示することに一層尽力しなければならないが、それさえすれば、当然、注文がPTSで約定されることになり、また投資家の皆様にとっても価格改善の機会が増すことになると考えています。
朏社長がおっしゃっていたが、取引所に比べ、PTSでの執行コストの方が一般的に安いので、最終的に投資家の皆様が支払う取引手数料のさらなる低下に寄与できます。アメリカでは 「証券投資の民主化」と呼ばれていますが、預金よりも株式投資をされる方が多い米国でのように、更に投資活動を広げる上で障害となっているのは取引手数料だと思うので、低いコストで投資家の皆様が取引できるようになるのは良いことだと思います。
ただし、金融庁の中間整理にも記載されていますが、売買代金などの上限の緩和はぜひ考えていただきたいと思っています。特にオークション方式の場合、売買代金が東証比1%を超えるとPTSは取引所にならなければならず、取引所になるのは、我々証券会社にとってハードルが高く、時間がかかるものです。また全体の取引の10%までという点に関しても、現状でも8%程度までいく日もあり、今回の(最良執行方針の)法令改正を受けた影響で10%を超えてしまう可能性もあるため、緩和していただきたい。
東証に万が一のことがあった場合、代替市場になれるかを考えると、現行のルールに縛られたままでは代替市場になるのは難しい部分があると思っています。我々がバックアップになることで、証券市場の安定と投資家の皆様にとって安心感を与えられるのではないかと考えています。」
ODX朏社長 「繰り返しになりますが、金融市場で取り扱われていない非上場商品、例えばセキュリティ・トークンの取り扱いを考えています。各PTSが特徴を持って商品の取り扱いを差別化していくことで参加される投資家の皆様、それをつなぐ証券会社にとって、我々の市場に接続いただくことが魅力的になるように、品揃え含め差別化を図っていきたいと考えています。」
PTSの規制緩和の動きは良い流れだが、どのようにビジネス展開するのか
ODX朏社長 「そもそも取引所で取り扱われていないものをPTSで取り扱うことができるのか定かではない部分がありました。今回の規制に対する考え方を経て、我々はセキュリティ・トークンを取り扱っていくことを考えているのですが、非上場商品をPTSで取り扱えるようにしていくのは意味のあることだと思っています。個人投資家の皆様がアクセスすることが難しいような資産クラスを取引できる場を我々が提供できると考えています。
元々、証券業界は即時換金性が少ない商品を取り扱うことが限定的な風潮が歴史的にあり、証券会社が非上場株式をあまり取り扱わない主な理由の一つでした。こうした商品にPTSが流動性を与え、二次流通市場の場を提供すると発行市場の活動が活発化し、ひいては、日本市場の中で本質的に行き渡るべきリスクマネーが、行き渡るべきところに行き渡っていく環境ができるのではないかと考えています。
ODXとしては特に、セキュリティ・トークンをメインに押し出していくが、PTSの中でも特徴を持った商品を扱っていくことがビジネス展開の中では非常に重要になると考えています。」
「セキュリティ・トークン」とは、どのような金融商品なのか
ODX朏社長 「(セキュリティ・トークンとは)一般的には、暗号資産のベースとなっているブロックチェーンを利用しており、金融商品取引法上は有価証券です。特色としては、小口化しても大きなコストがかからない、あるいは移転をすることが容易であることが挙げられます。小口化されることにより、今まで投資をしにくかった商品に対して、新しい投資家層が参入してくることを期待しています。
一例でいうと、社債が小口化されて販売されています。また、日本では、不動産を小口化する商品が流行っていますが、不動産に対して投資するのはまとまったお金がないと難しかったが、これを小口化して投資することが可能です。発行する側にとっても、投資をする側にとっても、新しい発行市場に参入していくことになるので、投資のすそ野が広がることになり、投資家の皆様にとっての投資機会が広がっていくと考えています。
まだまだこれらの発行市場は発展途上ですが、ここで我々のような二次流通業者が入ると、発行する段階で、買い手が換金をする場が用意されていることが大前提になるため、発行企業にとっても、発行市場や投資家にとっても、利便性が高まり、正のスパイラルに入って、発行市場・流通市場の両方から盛り上がっていくことになると思っています。これが、「貯蓄から投資へ」に貢献できるのではないかと考えています。」
どのような取引の場になり、誰が取引に参加できるのか
ODX朏社長 「直接ODXにご参加いただく取引先は証券会社、いわゆるブローカーを想定しています。ブローカーの先にいらっしゃる投資家の皆様は、ブローカーを経由してODXに入っていただくことを想定しています。小口の募集は証券会社にとって負担が大きいが、ブロックチェーンの技術を使うことで、コストを上げずに取り扱うことができる。特徴的な事例では、ブロックチェーンを使うことで、今、誰が有価証券を持っているのかを把握することが容易になります。小口化した有価証券を発行し、一般の消費者が投資できる程度に小口化されれば、発行体がマーケティングの目的で、投資家を誘導し、発行体の経済圏のファンを取り込む目的が達成できるのではないかと考えています。また、渋谷のレジデンスを小口化する案件においても、個人投資家の皆様が参入しようとするとハードルが高い不動産投資になりますが、セキュリティ・トークンとして小口化することで、100万円から200万円程度で実際に不動産を保有するのと同じような経済効果を得ることができます。
現段階では、二次流通市場は整備されていませんが、PTSが整備され、二次流通市場ができることで発行市場の中でもそれを前提とした投資家が参加することになるので、市場全体としてはうまく加速できるのではないかと考えています。」
「セキュリティ・トークン」の海外での発行事情について
ODX朏社長「ヨーロッパでは個人投資家向けというより機関投資家向けの社債の発行が中心になっています。ここでブロックチェーンを使う目的は、スマートコントラクトと呼ばれる機能を使い利払いや償還などのイベントを自動化することでコストを削減するためです。コストが下がると、発行体は有利な条件で発行ができ、投資家は利回りの引き上げが期待できます。
アメリカとシンガポールでは、ファンドを小口化して販売しているケースが多くあります。プライベートエクイティファンド、ベンチャーキャピタルファンド、クリプトファンドなど、小口化することで個人でも投資ができるようになってきています。
ファンドの小口化はいくつか種類がありますが、例えば、株式そのものを未公開で発行して、それがアメリカではATS(日本のPTSに相当するような業態)で二次流通しています。
日本では小口化商品をなるべく幅広い投資家層に販売していくことを目論んでいるので、まずは発行市場と足並みをそろえて、流通市場としてそういった商品を取り扱っていくことを考えています。」
大阪デジタルエクスチェンジの将来のビジョン
ODX朏社長 「発行市場では、例えば1年間換金できないような投資になると投資家も二の足を踏むので、我々のような二次流通市場があるとポートフォリオの入れ替えや、値上がり・値下がりを見込んだ上での売買ができるようになります。そういう意味でも、2023年を目途に、こうした仕組みを立ち上げていきたいと考えています。」
ジャパンネクスト証券のビジネス展開について
JNX山田CEO 「海外に上場する株式は日本の法令上、上場株式ではないと位置づけられています。日本では米国株の取引が盛んで、この夏から米国株の信用取引も各証券会社が始めていると聞いています。アメリカの経済は、引き続きダイナミックであり、大企業からスタートアップまでもがいろいろ先行投資をしているという印象があります。アップルにしてもアマゾンにしてもまだまだ成長の余地があり、あのような大きな会社がまだ何倍にもなろうとしているマーケットです。まずは米国市場に上場している株式を日本のPTSで提供することを検討しています。米国株をPTSで取引することで日本の投資家の皆様に透明性のある取引プラットフォームを提供したいと考えています。
また、夜間取引市場をもっと活性化していきたいと考えています。流動性は今のところまだ1日20億から70億円程度ですが、取引時間の延長などを検討しながら、夜間も流動性を確保できるようこの秋から改善に取り組んでいきます。
最後は個人的な見解ですが、最終的には、24時間365日営業するような取引プラットフォームにしていきたいです。日本株はすでにデジタル化されているのが実態で、セトルメント(決済)の部分だけ実際にキャッシュをやりとりしないといけないが、完全デジタル化まであと一歩のところまできています。そういう現状を踏まえながら、技術的にはクラウド等を積極的に利用し、例えばメタバース内でのプラットフォームを立ち上げ、世界中のユーザーが同時に世界中の株式を取引できるようなプラットフォームにまで成長していけたらと考えています。
あくまでも、後半は個人的な世界観ですが、最終的にはこのようなことを目指し、日本のみならず世界中のお客様の利便性を高めるような市場にしていきたいと考えています。」
ジャパンネクスト証券山田CEOと大阪デジタルエクスチェンジ朏社長より最後に一言
JNX山田CEO 「資本主義にとって1番大切なのは「選択の自由」、投資家の皆様がチョイスできること、だと考えています。そのため様々な形態をとりながら、投資家もしくは利用者の皆様のチョイスを増やしていく、特に透明性のある価格を提示しながらチョイスを増やすことに引き続き取り組みたい。それが我々の存在意義であると考えています。今後ともPTSをよろしくお願い致します。」
ODX朏社長 「セキュリティ・トークンの取引の場の創設に向けて準備を進めているところです。「小口化」や「コスト削減」が投資家のすそ野を広げていき、企業は、投資家と消費者が融合されていく中で、ブロックチェーンの機能をうまく活用したプロモーションが可能になる。こういった世界観で動いていきたいと考えています。
ブロックチェーンの技術はかなり優れた技術だと思っており、技術がうまく形成されていくと、既存の株式マーケットの構成が大きく変化していくタイミングになるのではないかと考えています。大きな転換点をうまく活用しながら我々が参入することによって、日本市場の投資のすそ野を広げていき、山田CEOがおっしゃっていたようにメタバース上で証券会社を開いて証券を買っていただけるような場を作っていけると面白いなと思っております。我々もそういった場に対してご協力できるような仕組みを作りたいと考えています。」