リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントのプレスリリース
-今年で11回目となる「アクティブ・オーナーシップ・レポート」によると、LGIMが投資先企業に対する議決権行使議案数の世界合計が前年比30%増加
-気候変動に関して、さらに焦点を絞った対企業エンゲージメントを実施
-取締役会のダイバーシティに係る懸念から世界全体で取締役370人の選任に反対[1]
-ESGと報酬に関する議決権行使ポリシーを拡大――役員報酬にESG指標を導入しようとしている企業を支持
世界中の企業が新型コロナウイルスによるパンデミックの影響に直面する中、気候変動、生物多様性、取締役会のダイバーシティをはじめとする特に重要なESG課題に関して、LGIMは企業とのエンゲージメントを継続し、また企業に責任を問う姿勢を崩さず、市場全体のスタンダードの向上に努めました。主な実績は以下の通りです。
- 環境(E):LGIMは、自社のクライメート・インパクト・プレッジ(気候影響誓約)に基づき、100社以上の株主総会における反対行使によって各社の取締役に気候リスクの管理について責任を問いました。また、生物多様性ポリシーを発表して、政策立案者に対するエンゲージメントを通じて生物多様性の喪失を食い止めることを約束し、生物多様性のリスクと機会への対応能力を高めました。
- 社会(S):LGIMは、取締役会のダイバーシティに係る懸念から、世界全体で取締役370人の選任に反対しました。また、取締役会の人種・民族的ダイバーシティを推進するために英国と米国の最大手企業に対する2回目のエンゲージメントを実施しました。さらに、LGIMは2021年に出された人権問題への対応を求める株主提案を100%支持しました。
- ガバナンス(G):LGIMは、引き続き企業報告の透明性向上を提唱し、2021年には透明性に遅れが見られる100社以上の企業とエンゲージメントを実施しました。
LGIMのCEO、ミッシェル・スクリムジャー(Michelle Scrimgeour)は次のように述べています。「長期投資家として、LGIMは、世界市場のインテグリティ(廉潔性)を守り、持続可能でレジリエンス(回復力)のある経済成長を促進する重要な問題に一貫して発言力を行使する責任を担っています。2021年は新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの影響が依然として感じられる1年であり、LGIMは、気候変動や生物多様性の喪失などの主要な難題、そしてパンデミックにより鮮明に浮かび上がってきた人種的不公正や所得の不平等などの社会問題に焦点を絞り、企業とのエンゲージメントに注力しました。LGIMは、ポートフォリオ全体で議決権を行使し、政策立案者やその他のステークホルダーに対するエンゲージメントにさらに力を入れて前向きな変化をもたらすべく尽力しました。」
取締役会におけるジェンダーと人種・民族のダイバーシティに向けた行動を強化
LGIMは、長年にわたりビジネスにおける考え方の多様性を支持しており、2021年には取締役会のダイバーシティへの懸念から世界全体で取締役370人の選任に反対しました[3]。
北米市場では、2021年に取締役会のダイバーシティへの懸念から102の反対票を投じ、2020年の31件から反対行使数を増加させました。一方、英国では、反対行使の件数が前年の54から40に減少し、取締役会における女性の数に改善があったことを示しています。
ジェンダー・ダイバーシティの進展に加えて、LGIMは投資先企業の取締役会の人種・民族的ダイバーシティを高めるエンゲージメントにも注力しています。2020年8月には、取締役会に人種・民族的ダイバーシティが欠けているFTSE 100企業とS&P 500企業に的を絞ったエンゲージメント・キャンペーンの開始を発表しました。取締役会に人種・民族的ダイバーシティが全く確認できなかったS&P 500企業のうち44社およびFTSE 100企業のうち35社に対し、LGIMは個別に改善を働きかけました。2020年にLGIMがエンゲージメントを実施した79社のうち50社は、2020年9月から2021年12月までに少なくとも1人の人種・民族的少数派の取締役を登用しました。
ネットゼロ達成をめざして気候変動行動を加速
気候変動は、2021年もLGIMのインベストメント・スチュワードシップ・チームにとって特に頻繁にエンゲージメントのトピックになる問題の一つでした。企業との全エンゲージメントの21%に相当する年間246件のエンゲージメントにおいて気候変動問題を取り扱いました。
LGIMが推進する独自の集中的な気候エンゲージメント・プログラム――クライメート・インパクト・プレッジ(気候影響誓約)――については、2020年にそれを拡大して、上場企業からの温室効果ガス(GHG)排出の半分以上に責任があり、気候変動を大きく左右する15セクターの1,000社を対象にしました。2021年の株主総会シーズンには、100社以上がLGIMによる反対行使の対象になりました。具体的には、銀行、保険、不動産、テクノロジー・通信セクターを中心に、各社の年次報告書・計算書類等の承認議案、あるいは(最終的に不十分な気候リスク管理の責任を問われた)取締役会トップや非業務執行取締役の選任議案に反対票を投じました。
2021年6月にクライメート・インパクト・プレッジ(気候影響誓約)の報告書を公表した後、LGIMは同プログラムの開始から5年目となる企業とのエンゲージメントを開始しました。排出削減目標、ガバナンス、気候変動対策の面で「ベストプラクティス」をまだ達成していない影響力の大きい企業を引き続きターゲットにしています。これまでのところ、働きかけた企業の75%以上がエンゲージメントの要請に応えており、LGIMは気候リスク管理の責任は取締役にあるとする姿勢を変えず、今後も企業に詳細な移行計画の提供を求めていきます。
また、2021年、LGIMは企業に対し、「セイ・オン・クライメート(Say on Climate)」議案の提案を公に要請しました。これは、経営陣が提案した気候移行計画について株主に賛否を表明させる仕組みです。LGIMは、シェル(Shell)などセクターの有力企業を含め、いくつかの注目度の高い提案に反対票を投じました。提案された移行計画が万全ではないか、確実にネットゼロにつながるものではないという懸念があったことが理由です。
責任投資インテグレーションのグローバル・ヘッド、マイケル・マークス(Michael Marks)は次のように述べています。「気候変動は、現代の決定的な問題の一つであり、財務上の重大なリスクです。責任ある投資家として、LGIMはお客様の資産を守り、地球を守るために企業に責任を問う義務があります。今年、LGIMは経営陣提案の移行計画を支援するための基準を策定しており、野心的で説得力のある計画の提出を促したいと考えています。また、LGIMの議決権行使ポリシーがどう適用されるのかについて透明性を保つことが重要だと感じています。」
生物多様性の喪失問題に取り組む
COVID-19の影響により、将来の課題に備え、システムにレジリエンスを組み込むことの重要性がいっそう明確になりました。その一つが差し迫った生物多様性の問題です。この問題は投資に重大な影響を及ぼし、世界全体で5社に1社が生態系の崩壊による深刻なオペレーショナルリスクに直面しています。
森林減少は生物多様性の喪失の背景にある特に重要な要因の一つです。LGIMは長年にわたり、この分野に懸念がある企業に対して反対行使、エンゲージメント、ダイベストメントを実施してきました。2021年、LGIMは生物多様性ポリシーを定め、生物多様性へのコミットメントを果たすアプローチを正式に打ち出しました。これには、生物多様性のリスクと機会を評価する能力の向上、政策立案者との協力、投資先企業や幅広いステークホルダーに対するエンゲージメント、お客様に対する生物多様性リスクの報告が含まれます。
第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)で、LGIMは運用資産総額8.7兆ドルの金融機関30社に加わり[4]、2025年までに投資ポートフォリオから農産品に起因する森林減少(パーム油、大豆、牛肉、パルプ、紙に重点を置く)を完全になくすよう努めると約束しました。これは、森林減少を逆転させ、生物多様性の喪失を減らし、食料安全保障を支え、農業をパリ協定の1.5°C目標に同調させるための重要な一歩です。
適正なガバナンスの提唱
LGIMは、引き続き2021年も揺るぎないガバナンスを促進することを重視し、取締役の属性と報酬の開示、ESG情報開示に対する第三者検証、GHG排出量の開示の網羅性、税務情報の開示といった企業報告の透明性向上を提唱しています。2021年3月には、これらの透明性評価で出遅れていると確認された100社以上に書簡を送り、改善が見られなければ取締役会議長を務める取締役の選任等に反対票を投じるという強硬な姿勢で情報開示の改善を迫りました。
それ以降もターゲットリストを拡大し、透明性評価の低い200社以上を抽出しました。LGIMは、自社のエスカレーション戦略に従って、2022年からは透明性に改善が見られないままの企業の取締役会議長等に反対票を投じます。
LGIMは役員報酬に関する期待値や要求水準をさらに高め、経営陣をESGリスクの低減に集中させるべく適切で明確に測定可能な目標を導入することを企業に求めています。2021年、LGIMは、長期インセンティブの算定基準の最大3分の1にESG指標を含めること、従業員の健康と安全(H&S)面の実績が不十分な場合はH&Sモデレーターを採用することに対する姿勢を明確にしました。さらに、LGIMは2022年のポリシー文書を更新し、関連産業に対して気候変動関連の目標設定を要請するとともに、女性の登用が不当に少ない状態が続いているセクターでのダイバーシティ指標の導入を規定しました。その他の重点分野は以下の通りです。
- 長期業績連動型報酬:2021年、LGIMは世界全体で役員報酬関連の議案の42.4%に反対しました。企業が公正かつ適切な長期的業績給のミニマムスタンダード(最低基準)を満たしていなかったことが理由です。英国では、企業の報酬慣行に対する懸念が払拭されないことから、593件の報酬報告書の承認議案のうち137件(23.1%)に反対票を投じ、報酬委員会の委員80人の選任に反対しました。
- 報酬コンサルティング:2021年、LGIMは年次株主総会シーズンに向けて112件の個別の報酬コンサルティングに対応しました。たとえば、役員報酬の減額が2年目になるところを上向きの裁量で対応したいという会社側の要望や業績基準の変更案について協議しました。
- パンデミック中の役員報酬:LGIMは引き続き各種ステークホルダーの立場を重視し、政府や株主から支援(資金援助や配当停止による)を受け、人員削減を行う一方、役員に賞与を支払い続けている企業に対する監視の強化を続行しました。英国で反対した137件の報酬報告書の承認議案のうち、16%はステークホルダーの立場にそぐわないと思われる賞与の支払いに対する懸念が理由であり、26%は2021年中の大幅な報酬増加が理由でした。
- 「セイ・オン・ペイ(Say on pay)」(役員報酬議案に対する株主の意見表明):LGIMは北米で「セイ・オン・ペイ」議案の43%に反対票を投じました。その多くは、業績評価期間が3年を下回っているか、少なくとも50%の長期インセンティブが業績条件とまったく連動していないことに関連していました。
LGIMの第11回「アクティブ・オーナーシップ・レポート(2021年版)」(英語)の全文をお読みになるには、https://www.lgim.com/landg-assets/lgim/_document-library/capabilities/Active-Ownership-Report-Japan.pdf/ にアクセスしてください。
[1] LGIMのPMCファンド(英国年金専用ファンド)限定の反対件数(レポートP101以降の詳細データは、同PMCファンド限定の行使状況。全行使議案数は、約67,500件。)
[2] LGIMのPMCファンドを含むすべてのファンド・口座における議決権行使データ。
[3]世界全体の内訳:北米102人、新興市場88人、日本60人、アジア太平洋地域51人、英国40人、ヨーロッパ29人(いずれもPMCファンドに限定した数字)
[4] 2021年11月のRace to Zeroキャンペーン
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ご注意
本プレスリリースには、特定の企業名が言及されておりますが、LGIMは当該企業の発行証券を、現在保有している、または今後保有することを表明するものではなく、本レポートについての概要の説明の目的でのみ提示されているものです。LGIMは、それらの発行証券の売買を推奨するものではありません。
リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントについて
世界最大級の資産運用会社であるリーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)は、世界有数の投資家として総計1.42兆ポンド(1.69兆ユーロ、221兆円、1.92兆ドル、1.75兆スイスフラン)[5]の資産を運用しています。LGIMは、年金ファンド、ソブリンウェルスファンド、ファンドディストリビューター、個人投資家など、幅広いグローバルな顧客に対して運用サービスを提供しています。
LGIMは、これまで約50年にわたり、顧客にとって最も重要なことを理解し、その知見を価値ある利用しやすい投資商品とソリューションに転換してビジネスを展開してきました。債券、株式、商業用不動産、現預金など、あらゆるアセットクラスにおける投資の専門知識を有し、パッシブ運用・アクティブ運用から、リクイディティマネジメントや負債ベースのリスク管理ソリューションまで、幅広いサービスを提供しています。
[5] 2021年12月31日時点のLGIM内部データ。掲載されている資産運用残高は、英国のLGIM、米国のLGIMA、香港のLGIM Asiaが運用管理する資産を合算したものです。資産運用残高には、有価証券およびデリバティブのポジションが含まれます。