TDBのプレスリリース
帝国データバンクは、法的整理(倒産)となった企業のうち、政府系金融機関および民間金融機関による「無利子・無担保融資(コロナ融資)」を受けたことが判明した倒産について集計した。なお、件数は2022年2月時点における判明ベースによるもの。
- コロナ融資後倒産、1年半で200件 発生ペース加速、21年後半は月間20件台が続く
- 飲食店などの小売業が最多、製造・卸売では食品関係の倒産が目立つ
コロナ融資後倒産、1年半で200件 発生ペース加速、21年後半は月間20件台が続く
コロナ融資後倒産 件数推移
コロナ特例融資を受けた後に倒産した「コロナ融資後倒産」は、2022年2月までの判明分で210件判明した。コロナ融資後倒産は、当初1カ月で平均2件前後のペースで推移するなど、発生は少数で推移した。しかし、コロナ禍から1年目が経過した2021年2月以降は10件を上回るペースで推移し、最初に判明した2020年7月から1年1カ月後の2021年8月に100件を突破。2021年10月には初めて月間20件を突破し、100件から200件までの到達期間は6カ月と、コロナ融資後倒産の発生ペースは加速している。
コロナ禍による経済の急激な縮小や経営環境の変化により、多くの中小企業で業績が悪化した一方、持続化給付金をはじめとする政府の支援策に加え、全国200万件・40兆円に上る無利子・無担保融資(コロナ融資)で資金繰りを下支えしてきた。そのため、「緊急事態宣言で人流を抑制することができれば」「ワクチン接種が進めば」という期待感から事業を継続してきた企業も多かった。しかし、度重なる緊急事態宣言などの人流抑制、景況感の低迷などで業績不振が長期化し、コロナ融資を運転資金などで既に使い切った企業は多い。こうしたなか、据え置き期間が終了し返済が始まるものの返済原資に乏しく、金融機関から追加の融資を受けることもできず、最終的に資金繰りに行き詰り事業継続を諦める中小企業の破たんが目立ち始めている。
飲食店などの小売業が最多、製造・卸売では食品関係の倒産が目立つ
業種別件数 推移
業種別にみると、全210件のうち最も多いのは「小売業」の44件だった。なかでも、居酒屋などの飲食店の占める割合が最も多く、小売業全体の約4割を占めるほか、衣服小売などアパレルの件数も多かった。製造業・卸売業では、ともに食品関係での件数が多かった。観光地向け・飲食店向けが回復せず、最終的に事業をあきらめたケースが目立つ。小売・製造・卸売の3業種で、全体の半数超を占めた。
38件の建設業は、地場ゼネコンなどの総合建設業や、住宅建設といった職別工事業などで発生が多かった。対面接客が多いサービス業は、旅館・ホテルなど宿泊業の発生が他業種に比べ少なく、25件にとどまった。
2021年度の倒産件数は56年ぶり5000件台の大幅減少も、足元では底打ちの兆し
2022年2月の倒産件数は428件となり、9カ月連続で前年同月を下回った。2021年度通期の倒産件数も半世紀ぶりの少なさにとどまる。しかし、減少率は2021年7月をピークに毎月縮小傾向が続くなど、倒産の減少には底打ちの兆しが出始めた。
政府の新型コロナウイルス対策はこれまで倒産を抑制してきた一方、中小・零細企業における借金の返済負担は増しており、資金繰りは悪化している。2021年4-12月期の有利子負債の重さを調べたところ、月商対比で約5.6倍に膨らんでいた。これは、コロナ前の水準に比べて1カ月ほど多い水準で、無利子・無担保の制度融資(通称「コロナ融資」)などにより、過去2年の間に借入金などの負債が大幅に増えていることを示している。ただ、これら制度融資の大半が今年末までに返済が始まると目される一方、収益力が戻らなければ返済原資の確保ができず、最終的に事業継続が困難になる中小企業が続出しかねない危険性を孕んでいる。