株式会社ワークポートのプレスリリース
総合転職エージェントの株式会社ワークポート(所在地:東京都品川区、代表取締役社長 CEO:田村高広)は、全国の転職希望者312人を対象に、「給与のデジタル払い」についてアンケート調査を行いました。
ここ数年、日本国内でもキャッシュレス決済が普及していますが、世界主要国の中のキャッシュレス決済比率をみると、まだまだ遅れを取っている状況です。そんな中、政府はキャッシュレス決済促進のため、銀行口座を介さずに給与を支払えるようにする「給与のデジタル払い」(ペイロール)を、2021年度中に解禁するとして検討を進めています。安全性を不安視する声も上がり、足踏み状態が続いているようですが、この「給与のデジタル払い」について実際に給与を受け取る側のビジネスパーソンはどのように捉えているのか、全国の20代~40代の男女に調査を行いました。
対象者にそもそも「給与のデジタル払い」を制度化する動きがあることを知っているか聞いたところ、「いいえ」と回答した人が59.6%と知らない人が半数を大きく超えていることがわかりました。政府は2021年度中の解禁を目指して制度化を進めていますが、世間にはあまり認知されていないようです。
さらに、給与のデジタル払いを説明したうえで、給与のデジタル払いにどんな印象を抱いているか聞いたところ、「良い」が20.5%、「悪い」が41.7%、「どちらでもない」が 29.2%、「わからない」が8.7%と、悪い印象を持つ人が半数弱という結果になりました。印象が「悪い」理由としては、「セキュリティ面の不安」(20代・男性・公務員教育)、「情報漏洩が怖い」(40代・男性・システムエンジニア)、「ハッキングなどのリスク管理が大変」(30代・男性・医療)など、セキュリティ面やリスク管理を不安視する意見が多く挙がりました。また、「キャッシュレス非対応支払などがあるため」(40代・男性・システムエンジニア)、「お金が銀行口座に入らないと、口座引き落としの支払いに影響が出る」(30代・男性・事務)など、家賃や公共料金など銀行口座を介する支払い機会が多いため不便になるのではないかという意見も目立ちました。さらに、災害時に「スマートフォンなどの端末が使えない状況が発生するリスク」(40代・男性・営業)を懸念する人もいました。
印象が「良い」と回答した人の多くは、「キャッシュレス推進のために必要」(30代・男性・営業)などとキャッシュレス決済の普及のために必要と考えていました。また、「使用するか否かに関わらず、受取方法の選択肢が広がることは良いため。」(20代・女性・事務)、「決済手段に多様性を持つことが重要だと思うため」(40代・男性・企画)など、給与の支払い、受取方法の多様化を歓迎している傾向がありました。さらに、普段キャッシュレス決済を利用するからこそ便利という声のほかに、「外国人も給与受け取り面で苦労しなくて済むから」(40代・男性・プラントエンジニア)と、日本の銀行口座を持たない外国人労働者に対しても便利とする意見がありました。
■給与のデジタル払いが解禁されても「すべて現金を銀行口座から受け取りたい」人が67.0%
対象者に今後、給与のデジタル払いが解禁されたら便利になると思うか聞いたところ、「はい」が26.9%、「いいえ」が33.3%、「わからない」が 39.7%という結果になりました。現時点では政府が目指す給与のデジタル払いの利便性のイメージがつきにくい状態であるといえます。
さらに、給与のデジタル払いが解禁されたら給与をデジタル払いで受け取りたいか聞いたところ、「すべて現金を銀行口座への振り込みで受け取りたい」と回答した人が67.0%と大多数でした。「現状どおりで不便を感じない」(40代・女性・事務)と、銀行口座を経由する受け取り方に不満が無い人が大多数です。また、デジタル払いへの不安感から、これまでどおり銀行口座を介したい人も多い傾向です。例えばセキュリティを不安視する声や「現金でもらえた方が、決済方法が自由に選べ、お金の管理がしやすいため」(40代・女性・事務)、「金銭感覚を保つため」(20代・男性・接客販売)など、金銭をデジタルで扱うことによる使いすぎを懸念する意見がありました。しかし、「ボーナスやインセンティブのみデジタル払いで受け取りたい」という人は14.7%、「すべてデジタル払いで受け取りたい」人は8.7%と、少しでもデジタル払いを望む人は2割を超えます。「すべて現金を手渡しで受け取りたい」人は1.0%のみであることを考慮すると、デジタル払いへの期待は決して少なくないと言えます。ボーナスやインセンティブのみデジタル払いで受け取りたい人は理由として、「預金は銀行。決済はデジタル決済と利便性によって使い分けたい」(40代・男性・企画)と、受け取り方の手段の使い分けを望んでいました。自分で金額を設定した分のみデジタルで受け取りたいという意見もありました。また、「すべてがデジタルになると現状では不便なことが多いため」(20代・女性・事務)、「まずはボーナスから実施して、事例を少しずつ出してほしいから」(20代・男性・製造)など、リスクの分散のためにも少しずつデジタル払いを始めたいという意見が挙がりました。「すべてデジタル払いで受け取りたい」人は、「現金よりもスマホ決済を多く使う身としては、受け取り時点でデジタルである方が使い勝手がいい。現金が必要なときだけ現金化すれば良いから。」(20代・男性・接客販売)、「銀行へ行くのが面倒だから」(40代・男性・システムエンジニア)など、スマホ決済による便利さや銀行を介する手間の解消を理由に挙げていました。
■スマホ決済を利用している人は70.9%
給与はこれまでどおり銀行口座への振り込みで受け取りたい人が大半を占めました。では、スマホ決済は浸透していないのでしょうか。対象者に、〇〇payなどのスマホ決済(QRコード型)をどの程度使用しているか聞いたところ、「メインとして使っている」が36.9%、「メインは現金決済で、スマホ決済はサブ的に使っている」が34.0%と、使っている人が70%を超え、「使っていない」の29.2%を圧倒しました。使い始めた理由として「利用額に応じてポイントがたまり、キャッシュバックを受けられるので」(20代・女性・営業)、「財布を持たなくて良いから」(30代・男性・システムエンジニア)など、ポイント還元やクーポン、キャッシュバックなどのお得さや、スマホひとつで支払い可能な便利さを挙げる意見が多くありました。また、「コロナ拡大。現金を触りたくなかった。」(30代・男性・営業)など、新型コロナ感染防止のために非接触型の支払いを望む声も少なくありませんでした。
■今後もスマホ決済を使い続けたい人は約99%
スマホ決済を利用する人に、今後もスマホ決済を利用したいか聞いたところ、「メインとして使いたい」が57.9%、「メインは現金決済で、スマホ決済はサブ的に使いたい」が40.7%と、使いたい人が98.6%と、「使いたくない」という回答の1.4%を大きく上回りました。メインとしての利用が、サブ的な利用よりも20%弱上回ったことからも、スマホ決済の便利さによる生活への浸透がうかがえます。実際に、使い続ける理由として、「現金を取り出す必要がなく、決済スピードも速いため」(20代・男性・研究開発)、「便利だし、家計や資産の管理がしやすいから使い続けたい」(30代・女性・接客販売)など、支払いにおいても、管理においても便利という意見が多い傾向でした。また、給与のデジタル払いに対しては、お金の使いすぎを懸念する意見もありましたが、「あくまでもスマホ決済は限度額を決めているため」(20代・女性・営業)など、制限をかけて使いすぎを防止している人もいました。
一方、スマホ決済を利用していない人に、今後機会があればスマホ決済を使ってみたいかどうか聞いたところ、「はい」が26.6%、「いいえ」が54.3%、「わからない」が19.1%と、機会があっても使いたくないという人が多いことがわかりました。「いいえ」と回答した人は、「急いでいるときにバーコードを表示させるまでが面倒。あとは店によっては対応している・していない決済があるから」(40代・男性・コールセンター)など、QRコードの表示の準備や、店舗がスマホ決済対応かどうかの確認が面倒だとする意見が多く集まりました。また、「基本的に電子マネーを信用していない」(30代・女性・コールセンター)、「ちゃんと払えているか不安」(30代・女性・製造)など、スマホ決済に対する信頼度の低さも目立ちました。
調査の結果、スマホ決済はかなり普及しており、便利さや手軽さから今後も使い続けたいという人が多いものの、給与はこれまでどおり銀行口座を介して受け取りたい人が多いことがわかりました。政府は、世界から遅れを取っているデジタル決済の普及のために給与のデジタル払いの解禁を急いでいますが、デジタル決済が普及しても、すぐには給与のデジタル払いは浸透しないかもしれません。スマホ決済は利用していても、給与のデジタル払いには、セキュリティへの不安を感じる意見が多数ありました。安全性が確立されない限り、デジタル払いに対する抵抗感は拭えないといえます。しかし、デジタル決済の便利さから給与をデジタル払いで受け取りたい人も一定数います。これからますます、スマホ決済をはじめとするデジタル決済が普及し、デジタル決済ができる場面が増えれば、デジタル払いを望む人が増えそうです。
最近では、企業間の決済において現金の代わりに使えるデジタル通貨が登場しました。企業連合は2022年後半の実用化を目指すと発表しています。デジタル通貨の決済には、取引にかかる時間、手数料などのコストを大幅に削減できるというメリットがあります。今後、企業でデジタル化した金銭の扱いが主流になれば、給与のデジタル払いも導入が進むかもしれません。
今回の調査で、新たな給与の支払い方法の誕生に対し、支払いの多様性を感じ、歓迎する声もありました。給与のデジタル払いが普及すれば、転職希望者は企業の給与の支払い方法や受け取り方の選択肢の有無も、福利厚生や年収などと同じように企業選びの基準にするかもしれません。過去のやり方に固執しすぎるのではなく、適度に新たな方法も取り入れていくことで、さまざまな人が働きやすい社会になるのではないでしょうか。