3Dインベストメント・パートナーズ、東芝戦略委員会及び取締役会に宛て、公開書簡を送付

3D Investment Partners Pte. Ltd.のプレスリリース

2021年11月24日(東京)–3D Investment Partners Pte. Ltd.(以下、「当社」)は、本日、株式会社東芝(証券コード:6502)(以下、「東芝」)の戦略委員会(以下、「SRC」)及び取締役会に宛て、公開書簡を送付しました。当社は東芝の大株主であるファンドに対し投資一任運用サービスを提供しております。

本書簡において、当社は、現状のSRCによるレビュープロセスは網羅性と客観性が欠けていることから、SRC及び取締役会に対し、正式な提案の募集を行った上での戦略の再検討を求めています。当社は、東芝を3社に分割するというSRCの計画は、東芝の本質的な課題を解決しないため、企業価値の創出には繋がらないと考えています。

SRCに対する書簡の全文は以下のとおりです。
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〒105-8001
東京都港区芝浦一丁目1番1号
株式会社東芝
戦略委員会委員長 ポール ブロフ 殿
戦略委員会委員 ジェリー ブラック 殿
戦略委員会委員 橋本 勝則 殿
戦略委員会委員 ワイズマン廣田 綾子 殿
戦略委員会委員 レイモンド ゼイジ 殿
取締役会 御中

250 North Bridge Road
#13-01 Raffles City Tower, Singapore
3D Investment Partners Pte. Ltd.

戦略委員会のレビュープロセスについて
謹 啓

 3D Investment Partners Pte. Ltd.(以下「当社」)は、株式会社東芝(以下「東芝」)の大株主であるファンドに対し投資一任運用サービスを提供しております。

 貴社は、過去二十年以上、執行の不全や不適切な資本配分で株式価値を毀損してきました。厳しい表現を用いれば、隠ぺい体質な企業文化、株主とのインセンティブの不一致、コーポレート・ガバナンスの不備などの問題(以下「長年に亘る課題」)により、貴社は「弱体化」し続けています。議決権行使問題に代表される、旧取締役会及び執行部の一連の行動や発言は、株主からの不信を更に深め、状況を悪化させました。

 こうした長年に亘る課題を解決するには、「抜本的な変革」が必要であると、当社は考えております。

戦略委員会の役割
 当社は、戦略委員会(以下「SRC」)によるレビュープロセスは、「抜本的な変革」を行うための千載一遇のチャンスであると考えました。全ステークホルダーへの価値創造という観点から、東芝の客観的評価、コア・コンピタンスと中核事業の特定、中核事業と非中核事業それぞれの価値最大化策(所有・非所有を含む運営・統治・投資方針)の網羅的な再検討を期待し、働きかけてきました。並行して、株主が納得できるよう、結論に至るプロセスの透明性を持った開示を要望してきました。

 しかし、2021年11月12日に発表されたSRCの結論と報告書[1]を見て、当社は深く落胆しました。

 企業を3分割するというSRCによる結論は、東芝の「長年に亘る課題」を本質的に解決するものではありません。報告書[1]に記載された結論に至るプロセスは透明性に欠け、株主にとって納得感を得にくいものです。むしろ、様々な疑問と懸念を惹起するものでした。事実、11月8日に3社分割案(以下「スピンオフ」)が報道されて以来、東芝の株価は8%以上下落[2]しています。換言すれば、SRCの結論とそれに至る不透明なプロセスにより、東芝の市場評価は約1,900億円毀損されたことになります。

不備があったSRCのレビュープロセス
 SRCは、以下の通り、「客観的かつ徹底的なレビュープロセス」[3]を実施していません。

 SRCは、報告書[1]に明確に記載があるように、非上場化案の検討において、金融投資家に「正式なデュー・ディリジェンス」[4]の機会を提供していません。度重なる株主からの要望にも関わらず、断固として提案を募集することはありませんでした。また、SRCは、「検討の初期段階から」、「戦略投資家が東芝全体の買収に興味を示す可能性は低いであろう」[5]との憶測に基づき、戦略投資家を「エンゲージメント」の対象から外しました。

 マイノリティ出資に興味を示したとされるPEファンドとの議論は、「既存株主の皆様の支持を得づらい」、「一般株主の皆様の利益と必ずしも整合しない」[6]等の憶測に基づき、打ち切られました。一般に、企業価値を高めてきた経験を豊富に有するPEファンドとの共同投資の機会は、株主にとって魅力的です。特に、東芝が過去、独立経営によって企業価値を毀損してきた事実を鑑みると、検討の余地は十分にあると考えられ、その決断の合理性には疑問が生じます。

 報告書[1]を読み、当社が特に憂慮したのは、これらの重要な選択肢の検討において、執行部が主要な役割を担っていたことです。報告書[1]によれば、執行部は中核事業の成長の道筋や実現性のある計画を示せず、2021年11月12日に発表された事業計画[7]は、現状から何ら変化が見られないものでした。また、「全てのファンドが事前に執行部と足並みが揃っていることの重要性を指摘」する中、執行部はSRCに対して「非上場化が事業に及ぼし得る負の影響について」「懸念を示し」[8]、所有形態の変更について否定的でした。

 厳粛たる独立性及び客観性を備えない戦略委員会の判断は意味を成しません。今回のSRCは、正に、変革を望まない事業計画や、執行部が示した様々な負のリスク(規制、雇用、顧客離れ等)に判断を歪められ、スピンオフという妥協案に落ち着きました。そこに、「客観的かつ徹底的なレビュープロセス」[3]を行った形跡は見られません。

 当社は、スピンオフは「長年に亘る課題」を何ら解決しないことから、高い確率で、同様の問題を抱えた「小さな東芝」を3つ生み出すことになると考えています。東芝は過去20年間、執行部の指揮の下、企業価値を創出できていません。厳しい表現を用いれば、スピンオフによって、この悪しき企業文化がより色濃く継承されるリスクさえあると考えています。また、スピンオフが可能になるまでの二年間、東芝は、戦略不在のコングロマリット企業として、再び低迷するのではないかと、懸念しています。

企業価値の創造に向けて
 企業価値の創造は、中核事業の選別・集中的な資源投下と、非中核事業の価値最大化によって達成されます。戦略投資家や金融投資家がより高い価値を生み出せるならば、先入観なく、各非中核事業の潜在価値を実現できる最善の所有・運営形態を模索すべきです。事業選別なきスピンオフが、企業価値創造のための最善策ではないことは明らかです。

 以上より、当社は、SRCのレビュープロセス及びその結論に、深く落胆しています。

 SRCから説得力のある追加情報の開示がない限り、当社は、スピンオフ計画を支持しません。プロセスに不備があったため、当然にその結論も不適当であると考えています。

 当社は、SRC及び取締役会に対し、買収候補者へのデュー・ディリジェンス機会の提供と、非上場化/マイノリティ出資提案の正式な募集を要望します。その上で、SRCによる、真の意味での「客観的かつ徹底的なレビュープロセス」[3]の完遂を期待します。また、分析結果の開示に際しては、その結論に至るプロセスに透明性を持たせ、株主が取締役会の決断を支持するために十分な情報を提供頂けますよう、併せて要望します。

謹白

脚注
[1] 2021年11月12日 当社取締役会の戦略委員会による、 スピンオフ計画に至るプロセスについての株主の皆様へのアップデート(和訳)(以下、「2021年11月12日付報告書」)
[2] 2021年11月5日(5,122円)から2021年11月19日(4,685円)にかけて8.5%下落
[3] 2021年11月12日付報告書
[4] 2021年11月12日付報告書
[5] 2021年11月12日付報告書
[6] 2021年11月12日付報告書
[7] 2021年11月12日 株主価値向上に向けた東芝の変革
[8] 2021年11月12日付報告書

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3Dインベストメント・パートナーズについて
当社は、2015年に設立された、シンガポールを拠点に日本特化型のバリュー投資を行う独立系資産運用会社です。複利的な資本成長を通じた中長期的な価値創造を投資哲学としています。

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3DIPは、東芝及び東芝グループ会社の事業に関し、東芝の取締役会又は重要な意思決定権限を有する委員会又はそれらの構成員に対し、自ら又は自らが指定する者を通じて、期限を付して、回答・行動を求める意思を有していません。

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