3Dインベストメント・パートナーズ、東芝取締役会に宛て、公開書簡を送付

3D Investment Partners Pte. Ltd.のプレスリリース

2021年4月26日(東京)–3D Investment Partners Pte. Ltd.(以下、「当社」)は、本日、株式会社東芝(証券コード:6502)(以下、「東芝」)の取締役会に宛て、公開書簡を送付しました。当社は東芝の大株主であるファンドに対し投資一任運用サービスを提供しております。

本書簡において、当社は、東芝の企業価値向上のために、株主構成の変更を含む、網羅的かつ客観的な戦略的選択肢の再検討プロセスの実行を取締役会に対し求めています。

書簡の全文は以下のとおりです。

〒105-8001
東京都港区芝浦一丁目1番1号
株式会社東芝
取締役会長 綱川 智 殿
取締役会議長 永山 治 殿
社外取締役 古田 佑紀 殿
社外取締役 太田 順司 殿
社外取締役 小林 伸行 殿
社外取締役 山内 卓 殿
社外取締役 藤森 義明 殿
社外取締役 ポール ブロフ 殿
社外取締役 ワイズマン廣田 綾子 殿
社外取締役 ジェリー ブラック 殿
社外取締役 レイモンド ゼイジ 殿

250 North Bridge Road 
#13-01 Raffles City Tower, Singapore 
3D Investment Partners Pte. Ltd. 

「戦略的選択肢の再検討プロセス」について

謹 啓
 ご承知のとおり、3D Investment Partners Pte. Ltd.(以下「当社」といいます)は、株式会社東芝(以下「貴社」といいます)の大株主であるファンドに対し投資一任運用サービスを提供しております。当社は4月18付の永山取締役会議長宛の書簡にて、PEファンドによる買収提案への貴社対応方針に関する懸念をお伝えしました。しかし未だ何らご返答を頂けていないことから、本書簡にて、当社の考えを再度ご説明させて頂きます。

 当社は、貴社がすべてのステークホルダーと日本経済に多大なる貢献をし、社会から賞賛を集めるかつての姿を取り戻すことを、大株主の一員として強く望んでおります。貴社は、今も変わらず、株主・社員・顧客、すべてに対して多大なる価値を創造し、社会に貢献するに足る十分な力を持っていると、当社は確信しております。

過小評価される株式、続く不信の連鎖
 しかし貴社は、依然として、資本市場において過小評価され続けています。過去の一連の不祥事により、資本市場は貴社のガバナンスについて強い疑義を有するに至り、その結果生じた低い市場評価は、不信の連鎖を生みました。かかる不信の連鎖は、貴社がステークホルダーへ価値を提供する際の重い足枷となり、貴社は本来の価値をも創造できておりません。その断絶に向けた真摯な対応は、価値創造の足枷を外すだけでなく、副次的に貴社株式の再評価をももたらします。市場を先導する素晴らしい技術と人財、世界中で親しまれてきたブランド力、競争力のある知的財産、資産の潜在的な価値などを考慮すれば、貴社株式の本源的価値は1株当たり6,500円を超えるものと確信しています。
 かかる不信の連鎖の断絶は、貴社取締役会と経営陣によるガバナンスの健全性の確保と、株主を含む全ステークホルダーからの信頼の回復によって実現されます。貴社取締役会においては、コーポレート・ガバナンス・コードを遵守し、綱川新社長CEO が再就任時にご説明された方針※1に従って、株主その他のステークホルダーにとっての価値を最大化するためのあらゆる手段を真摯にご検討頂けるものと、期待しております。
 当社は、CVC Capital Partnersが貴社に宛てた最新の書簡中で、”CVC stands by its April 6 Proposal.”と改めて表明していることから、貴社買収に関心を示し、また引き続き関心を持っていると理解しています。また、他にも関心を示しているPEファンドが存在するとの報道もあります。
 当社は、貴社に対し、非公開化すべきであると述べているわけではありません。戦略的選択肢の網羅的な再検討を求めています。今、貴社の企業価値に重大な影響を与える選択肢が複数存在します。かかる状況を前提とすれば、まずはそれぞれの選択肢内での最善策を真摯に追求し、その上での最善策を網羅的かつ徹底的な比較検討によって選択すべきではないでしょうか。経済産業省が発表した「公正なM&Aの在り方に関する指針※2」の中でも、MBOは、企業価値向上のための一つの戦略的選択肢とみなされています。非公開化以外にも、貴社の企業価値の重要な部分を占めるキオクシア株式に関する方針など、十分な検討を要する戦略的選択肢は複数存在します。

実施すべき「戦略的選択肢の再検討プロセス」
 貴社は今、岐路に立っています。いかに車谷氏辞任後の経営体制を具備するか、いかにPEファンドからの買収提案に対応するか、いかにキオクシア株式価値を最大化し再配分するか、その対応如何で、貴社のガバナンスへの市場評価は大きく変わるでしょう。換言すれば、貴社取締役会と経営陣は、株主との信頼関係を再構築できるか、あるいは信頼関係がさらに損なわれるかという極めて重要な局面にいるのです。

※1 東芝、綱川新社長が会見「ステークホルダーと信頼構築」 2021年4月14日 日経新聞
※2 公正なM&Aの在り方に関する指針 2019年6月28日 経済産業省

 当社は、大株主として、貴社取締役会に対し、「戦略的選択肢の再検討プロセス」を開始頂くことを要望します。特に、公正かつ適切にプロセスを進めるために、非公開化提案について貴社経営陣が反発している※3という極めて深刻な認識の誤りは、実際のアクションを通して明確に否定して頂くことを強く要望します。
 かかるプロセスは、企業価値向上策を提案可能な買収者を募集することを目的とした、独立のファイナンシャル・アドバイザーを登用した上で、以下の流れで行うべきと考えます:

  • 非公開化を含めた企業価値向上策の提案を歓迎することを明確に伝え、PEファンドだけでなく戦略的買収者(以下「買収提案者」といいます)も含めて広く提案を募集する。
  • 取締役会が定義する「詳細な提案」について、その盛り込むべき項目を特定し、買収提案者に示す。例えば、買収者の基本情報、資金源、買収後の経営方針、各種規制への対応方針など。
  • その「詳細な提案」を作成するために必要となる情報を、買収提案者およびその資金源(銀行など)に提供し、デューデリジェンスに協力する。
  • 買収提案者の提案内容を客観的かつ平等に評価し、東芝と株主を含むステークホルダーにとっての最善策を決定する。
  • 当該最善策と、貴社が考える上場維持をした場合の戦略的選択肢を比較検討し、いずれが株主を含むすべてのステークホルダーにとって最善の選択肢となるかを決定する。
  • すべてのステークホルダーとの関係において、本プロセスの過程と結果において透明性を確保する。

 上記条件を満たす「戦略的選択肢の再検討プロセス」の実施の有無は、企業価値向上に向けたリーダーシップの有無、資本市場におけるガバナンスの有無、全ステークホルダーに対する貢献への真摯な姿勢の有無を含め、すべてを白日の下に晒します。従って、新経営体制にとっては、不信の連鎖の今後を決める、最初の、かつ、極めて重要な試金石となると考えます。

貴社の開示や報道を受けての懸念
 当社は、最近のメディア報道や貴社プレスリリースを見て、貴社取締役会及び経営陣は、非公開化案の提出を歓迎していないどころか、買収提案の作成そのものを積極的に阻止しようとしているのではないかとの疑念を抱いています。現に、CVCは4月6日の書面にて、貴社の非公開化に強い関心を示し、詳細な提案を行うことを予定していたにもかかわらず、4月18日の書簡によれば、買収提案は引き続き取締役会から全面的支持を得られることを条件としているとして、東芝の指示を待つことを表明しました。4月6日から18日の間に、貴社はCVCに対して、買収提案を望んでいないという姿勢を示していた可能性はないでしょうか。
 貴社は、上場を維持することが企業価値向上のために最善であると、公言※4しています。実際に詳細な提案を受けずして、なぜ上場を維持することが全ステークホルダーにとって最善であると断言できるのか、当社は疑問に思っています。また、にわかには信じがたいことですが、貴社幹部が銀行を訪問し、PEファンドへ融資しないように依頼した、といった報道さえなされています※5。

※3 東芝買収、攻防激化 非公開化案に経営陣反発 英ファンドの「次の手」注視 2021年4月17日 時事通信社
※4 CVCからの初期提案について 2021年4月20日 東芝開示
※5 東芝、CVC買収提案に対抗 銀行に協力要請 水面下の攻防激化 2021年4月15日 毎日新聞

 貴社のかかる公式発言や報道は、本買収は敵対的買収であるとの印象を植え付けました。言うまでもなく、企業価値を高めるための提案が、盲目的に敵対的であると見なされるのは不合理です。しかし更に問題なのは、その貴社が植え付けた印象が、様々な企業の非協力を励起して、PEファンドによる詳細な提案の作成そのものを著しく阻害してしまうということです。企業価値向上の選択肢を著しく狭めるようなその一連の行動は、本来あるべきガバナンスや取締役会及び経営陣の忠実義務と完全に矛盾しています。貴社取締役会は、早期に「戦略的選択肢の再検討プロセス」を開始すべきです。貴社は今、不信の連鎖の岐路に立っており、当該不信の連鎖を払しょくしえる唯一無二の機会を迎えております。是非その機会を捉え、不信の連鎖を断絶頂きたいと思っております。

結語
 2020年7月の定時株主総会及び2021年3月の臨時株主総会から得られた教訓は、貴社株主は、取締役会と経営陣が企業価値向上のために最善を尽くしていると信じられない場合、その影響を強く受けるステークホルダーとして、株主権を行使し、より直接的にガバナンスを改善させようとする、ということです。

 当社は、貴社がすべてのステークホルダーのために、その力を余すところなく発揮し、本来の価値を創造できるようになることを最大の関心事としています。貴社取締役会は、買収提案について頭ごなしに否定するのではなく、貴社の価値創造を達成するための選択肢の一つとして、真摯に募集し、かつ、検討する必要があります。もし、貴社取締役会が「戦略的選択肢の再検討プロセス」を行うことなく、客観的かつ適切に検討したことを市場に示せない場合は、ガバナンスの不備と見なさざるを得ません。当社は、そのような場合においては、より積極的な関与を検討する必要があると考えています。

 最後に、貴社が、当社の事前の書簡に何ら返答することなく、上場維持が最善であると改めて公言されたことを、当社は非常に残念に思っております。全ての取締役の方々が、当社の意見を理解し、真摯に行動して頂けることを願っております。
謹白

3Dインベストメント・パートナーズについて
 当社 は、2015年に設立された、シンガポールを拠点に日本特化型のバリュー投資を行う独立系資産運用会社です。複利的な資本成長を通じた中長期的な価値創造を投資哲学としています。

免責事項
 本書簡は、情報提供のみを目的としたものであり、いかなる証券又は投資商品についても、その購入又は販売を勧誘するものではなく、専門的助言もしくは投資助言ではありません。また、本書簡は、目的のいかんを問わず、いかなる人もこれに依拠することはできず、投資、財務、法律、税務その他のいかなる助言とも解されるべきではありません。

 3D Investment Partners Pte. Ltd.及びその関連会社並びにそれらの関係者(以下、「3DIP」)は、昨今の東芝の株価はその本源的価値を反映していないと考えています。3DIPは、購入時点において、東芝グループの有価証券は過小評価されており、魅力的な投資機会を提供しているという独自の考えの下、これらの実質的所有権及び/又は経済的利益を購入しております。3DIPは、東芝グループに対する投資について、継続的に再検討を加える予定であり、様々な要因、例えば – 東芝グループの財政状態及び戦略的方向性、東芝との協議の結果、全体的な市場環境、3DIPが利用可能なその他の投資機会、東芝グループの有価証券の購入又は売却を3DIPの希望する価格で実行しえる可能性等 – に応じて、いつでも(公開市場又は非公開の取引を通じて)、関係法令で許容される方法を限度として、自由に、売却し、購入し、カバーし、ヘッジし、又は投資(東芝の有価証券を含みます)の形態や実態にかかるその他の変更を実施する可能性があります。また、3DIPは、そのような変更等を他者に通知する義務の存在を明示的に否定します。

 本書簡に記載されている情報の正確性、完全性又は信頼性に関して、明示黙示を問わずいかなる表明又は保証もなされません。また本書簡に記載されている情報は、本書簡において言及されている証券、市場又は進展についての完全な記述又は概要であることを意図していません。3DIPは、本書簡もしくは本書簡の内容の全部もしくは一部を使用もしくは依拠したことにより、又は本書簡に関してその他の理由により生じた、いかなる者のいかなる損失についても、全ての責任又は債務を、明示的に否定します。

 3DIPは、本書簡を通じて行う、自らの評価、推定及び意見の表明、その他株主との対話を理由として、日本の金融商品取引法に定める共同保有者もしくは外国為替及び外国貿易法に定める密接関係者として取り扱われる意図又は合意、及び、他の株主が保有する議決権の行使につき、株主を代理する権限を受任する意思がないことをここに明示します。

 本書簡では、ニュース報道又はその他の第三者情報源(「第三者資料」)からの引用が含まれ得ます。これらの第三者資料の引用の許可は、求められておらず、取得されていないことがあります。なお、第三者資料の内容については、3DIPが独自に検証を行ったものではなく、必ずしも3DIPの見解を示すものではありません。第三者資料の著者及び/又は発行者は、3DIPとは独立しており、異なる見解を持つ可能性があります。本書簡において第三者資料を引用することは、3DIPが第三者資料の内容の一部について支持若しくは同意すること、又は第三者資料の著者若しくは発行者が、関連する事項に関して3DIPが表明した見解を支持若しくは同意することを意味するものではありません。第三者資料は、記載された問題に関して他の第三者により表明された関連するニュース報道又は見解の全てでもありません。
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