Abies Ventures株式会社のプレスリリース
Abies Ventures株式会社(以下、Abies Ventures)が組合員を務めるAbies Ventures GP I有限事業責任事業組合が運用するAbies Ventures Fund I, L.P.は、量子力学に基づく材料物性シミュレーションをハイスループットで行う事を可能とするプラットフォームを開発する、Quantum Simulation Technologies, Inc.(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ、CEO 塩崎亨、以下、QSimulate)に、シードラウンドにて投資実行致しました。
Abies Venturesは、高度な科学・エンジニアリング技術(ディープテック)により、人類のさらなる発展やサステナブルな社会の創出に貢献するスタートアップを国内外で発掘し、グローバル企業へ育成することを目指すベンチャーキャピタルです。日本が高い競争力を誇る機能性材料分野や、データサイエンスを加速する高度情報処理技術を注力分野の一つに掲げています。
新材料開発や創薬における複雑性が加速する今日、開発スピード向上のために、マテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics、以下、MI)と呼ばれる、コンピュータシミュレーションやAIを駆使した手法が注目されています。Abies Venturesは、MIは画期的な新材料や新薬の開発を促進すると共に、化学・製薬業界の業界地図を大きく変える可能性のある手法であると考えています。MIにおいて、AIによる新素材候補の選定のために、精度の高いデータを大量に蓄積することの重要性が高まっています。従来から、実験によるデータ取得に加え、シミュレーションによる物性推定は行われてきましたが、量子力学(Quantum Mechanics、以下、QM)に基づく精度の高いシミュレーションは膨大な計算リソース・時間を必要とするため、高精度データを大量に蓄積することは容易ではありませんでした。また、QMに基づくシミュレーションを、化学材料に比べ分子量の大きい医薬品の開発に適用することは、現実的に不可能でした。
東京大学で工学博士号を取得し、米国ノースウェスタン准教授等を歴任した、量子化学研究者で、QSimulateの共同創業者CEOの塩崎亨氏による長年の研究成果を元に、QSimulateが開発した革新的なクラウド上のプラットフォーム「QSimulate-MI」は、既に日米の化学・材料メーカーに採用されています。従来のツール比最大1,000倍の計算速度により、1日に何千もの分子の物性値を自動的にQMに基づく計算を行うことを可能にし、ユーザー企業の新材料開発を加速することに貢献をしています。また、大手製薬メーカーとの共同研究により、タンパク質と医薬品分子の相互作用をQMに基づく計算でスコアリングする方法を開発し、創薬におけるQMシミュレーション活用の道を切り開きました。新型コロナ治療薬開発においてもQSimulateのシミュレーションの有効性が確認できており、こうした成果が認められ、米国国立衛生研究所(NIH)がQSimulateに対し、QMシミュレーションによる創薬プロセス革新に関する助成を決めています。更に、QSimulateは既に量子コンピュータ向けのシミュレーションツールも開発しており、GoogleやAmazonの量子コンピュータ・クラウドプラットフォームのパートナーに選ばれています。
QSimulateは今回の資金調達により製品開発と事業開発を加速する計画ですが、特に日本は重点市場の一つと位置付けています。Abies Venturesは、QSimulateが次世代のMIを切り開くとともに、日本の化学・材料メーカーや製薬メーカーの開発競争力を高めることに貢献しうると考え、投資を実行しました。
■ Abies Venturesについて
概要:ディープテック・スタートアップを支援するベンチャーキャピタル
所在地:東京都港区
代表者:代表取締役マネージング・パートナー 山口冬樹
URL:https://abies.vc/
■ QSimulate社について
概要:次世代量子力学シミュレーションプラットフォームの開発及び提供
所在地:米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市
代表者:共同創業者CEO 塩崎亨
URL:https://qsimulate.com/