メタプラネット、7,000億円超えの新株予約権発行へ

東証スタンダード上場のメタプラネットは6月6日、日本市場史上最大規模となる新株予約権の発行を決定したと発表しました。調達予定額は約7,674億円にのぼり、その大部分をビットコインの購入に充てる計画です。

この発表と時を同じくして、ビットコインの価格は再び11万ドルを突破し、一般投資家の間でも市場への関心が高まっています。そして、これまで投資に関心のなかった層も暗号資産の購入を進めていることから、暗号資産を実際に活用できる場面も増えつつあります。

たとえば、ビットコイン決済に対応したオンラインカジノのおすすめをピックアップするを紹介する特集が注目を集めるなど、ユースケースの広がりが見られます。オンラインカジノでは、暗号資産を採用することで、入出金の高速化や手数料の削減が可能に。さらに、暗号資産のベースの技術であるブロックチェーンを活用し、ゲーム結果の透明性や改ざん防止といった信頼性の向上も実現しています。

さらに、暗号資産はオンラインカジノにとどまらず、NFTの購入やゲーム内報酬の受け取りに加え、一部国や地域では公共料金の支払い手段としても利用され始めています。

こうした実用性の拡大は、メタプラネットのような上場企業によるビットコインの長期保有戦略に一定の説得力を与えているとも言えるでしょう。本記事では、メタプラネットが進めるビットコイン保有戦略の背景や、市場への影響について詳しく解説します。

5億5500万株相当の発行規模

メタプラネットは6月6日、自社公式サイト内の開示情報にて、第三者割当のかたちで第20回〜第22回新株予約権を発行することを公表しました。今回発行される新株予約権は合計で555万個あり、1個につき100株の普通株式に変えることが可能。すべてが行使された場合、将来的に発行される株式は最大で5億5,500万株にのぼります。

そして、この新株予約権によって約7,674億円を調達できる見込みです。これは、同社が今年2月に完了した「21ミリオンプラン」で集めた約933億円を大きく上回る金額で、日本の株式市場においても過去最大級の資金調達となります。

なお、今回の新株予約権の引き受け先には、ケイマン諸島に拠点を置く投資ファンド「EVO FUND」が選ばれています。

資金用途の95%以上をビットコインに充当

今回の調達資金のうち、95%以上がビットコインの追加購入に使われる予定です。メタプラネットは2024年4月から、自社の資産の一部をビットコインに切り替える「ビットコイントレジャリー戦略」を本格的にスタートさせていますが、今年6月の時点で8,888BTCを保有しています。

また、今回の大資金調達は、同社が掲げる中期的な目標「555ミリオン計画」の中心となるものです。この計画では、2027年の年末までに21万BTC以上の保有を目指すという目標が掲げられています。

21万BTCというのは、ビットコイン全体の発行上限である2,100万枚のちょうど1%にあたります。この「1%」を保有する企業や機関は世界でも非常に限られており、メタプラネットはその仲間入りを目指しているのです。

発行条件と希薄化リスクへの対策

新株予約権は通常、発行されるときの株価よりも安い価格で株を買えるように設定されることが多く、購入する側にとっては得のある仕組みとなっています。しかし、今回の発行では逆に、通常の株価よりも高いプレミアム価格で株を買うかたちに。これは、すでに株を持っている株主の利益を守るための工夫となっています。

初回の行使価額は1,388円で、これは取締役会の決定が出る前日の終値、1,363円よりもやや高くなっています。また、行使価額は3営業日ごとに見直される仕組みになっており、株価に応じて100〜102%の範囲で自動的に調整されます。

さらに、株価が大きく下がった場合でも最低行使価額があらかじめ決められているため、極端に安い価格で株が発行されるのを防ぐことが可能。

また、市場に大量の株が一度に出回るのを防ぐために、1か月ごとの行使上限や、会社側が一時的に行使を止められる権利も取り入れられており、株価の安定にも配慮がなされています。

背景にある「円安・インフレ」への意識

同社がビットコインに積極投資する背景には、日本経済特有の構造的リスクへの警戒感があるとされます。

具体的には、昨年3月にようやくマイナス金利が解除されたものの、実質賃金の低迷や円の価値下落は継続。こうして、通貨としての日本円の依存度を下げる必要性を、企業として戦略的に捉えた結果が、ビットコインの保有強化という方針に結びついています。

従来、日本企業は外貨建て債券や不動産を通じた資産分散を行ってきましたが、暗号資産を戦略的に取り入れる動きはまだ少数派です。したがって、メタプラネットの取り組みは、その先駆けとなる可能性を秘めていると言えるでしょう。

株式市場の反応

市場はこの計画を概ね好意的に受け止めています。6月6日時点で1,341円だった同社株は、週明けにストップ高となる1,641円を記録し、終値は1,544円に。本稿執筆時点では1,542円となっています。時価総額は一時7,700億円を突破し、スタンダード市場内ではトップクラスの規模となりました。

一方で、今後ビットコイン価格が大幅に下落すれば、巨額の含み損が発生するリスクもあるため、メタプラネットの株価や企業価値は引き続き暗号資産市場の変動に大きく影響を受けることになりそうです。

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