2025年4月2日、アメリカのトランプ政権は世界各国からの輸入品に対し「相互関税」と称する一律関税政策を発表しました。トランプ大統領は「解放の日」としてこの関税措置を宣言し、すべての国からの輸入品に最低10%の関税を課すとともに、日本24%、中国34%、EU20%など約60の国・地域にはさらに高率の関税を上乗せすると発表しました。
これにより、各国の対米輸出品に報復的な課税が行われる見通しとなり、世界の金融市場は一斉にリスクオフの動きに。わずか数日の間に暗号資産から株式・為替までが激しく変動し、投資家心理が大きく動揺しました。
こうした経済的不確実性の高まりを受け、資産防衛策として暗号資産への関心が急増。そして、購入した暗号資産を安全に保管するために、仮想通貨ウォレット おすすめを検索する投資家は急増しています。特に、国際取引に携わる企業や投資家の間では、従来の金融システムへの依存度を下げる動きが加速しています。
本記事では、この相互関税発表がもたらした主要市場の動向と背景を分析し、ドルの価値安定性や暗号資産のヘッジ資産としての機能について考察いたします。
株式・為替市場は鮮明なリスクオフ
世界の株式市場は急落
トランプ政権による関税発表の直後から、世界の株式市場は急落しました。米国では発表当日夜間の株価指数先物が急落し、S&P500は時間外取引で-3%、ナスダックは-3.8%、ダウ工業株30種平均も-1.8%と大きく値を下げました。
欧州市場も同様に下落し、ドイツDAX指数は4月4日に約5%急落し、フランスCAC40も週末までに4.3%下落。欧州主要株価指数はロシアのウクライナ侵攻以来の最悪の週を迎えたと報じられています。
ニューヨーク市場でも同様に、S&P500指数は週末までの下げ幅が6%に達し、終値はコロナ禍直後の2020年3月以来の安値水準となりました。このわずかな期間で、世界の株式時価総額から6兆ドル近くが消失したとも推計されており、市場には悲観ムードが拡大しています。
為替市場は円・フラン高、ドル安
一連の急落は投資家心理に大きな影響を与えました。いわば関税戦争とも呼べる状況に突入し、世界経済の後退懸念が急速に高まり、リスク資産から安全資産への資金移動が鮮明になりました。
特に、為替市場では有事の安全通貨として円とスイスフランが急伸し、相対的にドルが売られる展開に。4月3日のニューヨーク外国為替市場では、ドル円相場が1ドル=145円台半ばまで急落し、およそ半年ぶりの安値水準を記録しました。
対スイスフランでもドルは一日で3%超下落し、1ドル=0.8554フランまでドル安・フラン高が進行。これは、市場参加者が一斉にリスク回避姿勢を強め、資金を円やフランといった安全通貨に避難させたことを示していると言えるでしょう。
米ドルの信頼に陰り
また、安全資産の代表である金も買われ、金先物価格は史上最高値を更新。一方で、米ドルは自国発の政策リスクということもあり、避難通貨としての信頼が揺らぎました。
米国による強硬な通商政策は、各国からの報復措置を招く可能性が高いことから、投資家はドル資産の先行きにも警戒感を強めている状況にあります。関税発表直後には中国が米国産品全てに34%の対抗関税を課すと発表するなど、米中を中心に貿易戦争が激化する様相となり、市場の不安心理を一段と煽っています。
暗号資産が避難先に
暗号資産市場の堅調な動きと変化の兆し
暗号資産市場もこの関税ショックの影響を受けましたが、従来とは異なる投資行動が観察されています。
主要な暗号資産であるビットコインやイーサリアムも確かに価格を下げたものの、週末にかけてはビットコインをはじめとする主要通貨が底堅く推移。投資家の中長期的な信認を維持している様子がうかがえました。
新たなヘッジ資産としての役割拡大
暗号資産は“デジタル黄金”とも称され、インフレヘッジや通貨リスク回避手段としての期待が高まっています。
実際に、今回のような世界的な政策不安に直面した局面でも、価格が一定水準を保ちつつ分散投資先としての機能を果たした点は注目に値するでしょう。
特に、株式やドル建て債券など従来型の資産が売られる中で、暗号資産は一部の投資家にとってオフショア的な資金避難先として認識され始めていると言えそうです。価格が安定しているとはいえないものの、リスク分散の選択肢として存在感を増していることが見受けられます。
政治的リスクの高まりと共に信頼を積み上げ
トランプ大統領は、選挙戦で暗号資産の活用を強く訴え、1月の就任後には米国を「暗号資産大国」にする意向を再表明していました。この姿勢は市場の安心材料ともなっており、年明けにはビットコインが10万ドルを超える局面を迎えたほどです。
さらに、トランプ政権による相互関税政策のような国家単位でのリスクイベントが発生するたびに、中央政府の影響を受けにくい暗号資産の価値が相対的に見直されている現象も見受けられます。短期的な価格変動こそあれど、構造的な価値保存手段としての役割を担いつつあるのが現在の姿といえるでしょう。
まとめ
今回の市場混乱を通じて、暗号資産は一時的な値動きに見舞われながらも、分散投資や価値保存の手段として一定の存在感を示しました。ボラティリティの高さは課題である一方、非中央集権性やアクセスの自由度といった特性が、将来的な「デジタル安全資産」としての可能性を広げています。
今後の市場環境の変化や制度整備の進展とともに、暗号資産がどこまで信頼性を高めていけるかが注目されます。