借入金利「1%上昇」で企業の7%が「赤字」に 利息は年270万円増、経常利益は9%圧縮 1社平均試算

「マイナス金利解除」と金利上昇に伴う企業の借入利息負担試算

株式会社帝国データバンクのプレスリリース

日本銀行は3月19日の金融政策決定会合において、マイナス金利政策の解除を正式に決定した。政策金利の上昇は約17年ぶりとなる。今後、日銀が金融政策の正常化へと舵を切る場合、22年度末時点で平均1%を下回った企業の借入金利も、市場金利に連動して緩やかに上昇していくことが見込まれる。

帝国データバンクでは、過去1年間に決算を迎えた企業で長短借入金を含む有利子負債を有する約9万社を対象に、借入金利の上昇に伴う支払利息への負担や、経常利益に与える影響について分析を行った。借入金利の上昇幅は、+0.5%~最大+4.0%を想定して試算した。また、決算期末のデータに基づくため、借入金の返済・借り換え、追加での借り入れによる有利子負債の増減については考慮しないものとした。

<調査結果(要旨)>

  1. 借入金利「1%上昇」で企業の7%が赤字へ転落 利息負担は1社平均で     年270万円増

[注1] 帝国データバンクは、保有する企業データベースのうち2023年3月-24年2月間に決算を迎えた企業財務データ(約200万社収録)を対象に、企業の借入金利引き上げに対する影響度について調査・分析を行った

[注2] 各平均値は、上下各5%、計10%のトリム平均値を使用した

 

分析にあたっての条件は、下記の通りと定義した

【分析企業】長短借入金を含む「有利子負債」と、それに伴う「支払利息」が発生している企業。対象は全国約9万社(全国・全業種)。決算期末のデータに基づくため、借入金の返済・借り換え、追加での借り入れによる有利子負債の増減については考慮しない

【用語定義】借入金利は、有利子負債(銀行等、保険、ノンバンク、個人借入等を含む借入金、社債、CP等を含む総額)に対する利息の割合

借入金利「1%上昇」で企業の7%が赤字へ転落 利息負担は1社平均で     年270万円増

企業の借入金利が0.5%上昇した場合、企業では1社当たり年間平均で136万円の利息負担が新たに発生し、経常利益を平均4.6%押し下げることが分かった。また、追加での利息増により、経常損益が黒字から赤字へと転落する企業は3.8%発生する試算となった。1%まで引き上げられた場合、利息負担は年273万円の増加、赤字へと転落する企業は7.1%と1割に迫った。借入金利が2%まで上昇する局面を想定した場合は、利息負担は平均で545万円の増加、経常利益は平均で18.2%減少、赤字へと転落する企業は全体の1割を超える計算となった。総じて、価格転嫁が進まず収益力に乏しい中小企業ほど利息負担が大きい傾向が見られた。

 

帝国データバンクが「マイナス金利撤廃」の議論が本格化する前の昨年1月、金利上昇による事業への影響について1390社を対象に調査した結果、金利上昇により「マイナスの影響が大きい」と回答した企業が40.0%を占めた。足元では、借り換えなどの場面において「すでに足元の貸出金利は上がっている」とする金融機関もあり、「マイナスの影響」を実感する企業はさらに増加している可能性がある。

マイナス金利政策は正式に解除となったものの、日本銀行は4月に発表する「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」までは実体経済の状況を確認していくとみられ、頻繁な利上げは当面見送られると予想される。金融機関による貸し出しでも、これまで続けてきた横並びの低金利競争を背景に、大幅な金利引き上げに突入することは考えにくい。

ただ、これまで極めて低く抑制された「超低金利の世界」が順次終了することはほぼ確実とみられ、借り換えや新規借り入れ時の返済負担増に苦慮する中小企業が増加する可能性が高まっている。今後到来する「金利のある世界」に備えた意識の変革が企業にも強く求められる。

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