〜ファイナンシャルプランナーから改めて学ぶ火災保険の補償範囲と重要性を解説〜
ソニー損害保険株式会社のプレスリリース
■冬のシーズン(12月〜3月)は建物火災が増加傾向に
消防庁が公開した建物火災の火災状況(※1)によると、令和4年は1年間で建物火災が20,167件発生しました。月別でみると、12月2,184件、1月2,135件、2月1,936件、3月1,950件と冬のシーズンは建物火災が他の月と比較して多く発生しています。寒い時期はストーブやヒーターなどの暖房器具を使用する場面が増えることや、空気が乾燥していることで火災が発生しやすくなります。そのため、普段よりも注意が必要です。東京消防庁では冬のシーズン(12月〜3月)の火災に用心するように呼びかけを行っています(※2)。
※1 消防庁「令和4年(1~12 月)における火災の状況(確定値)について」
https://www.fdma.go.jp/pressrelease/statistics/items/20231129boujyou.pdf
※2 東京消防庁「「STOP!住宅火災」12月から翌年3月までは火災が多発する時期です」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-bouanka/house/house_fire.html
■全国の出火率と火災の原因
都道府県ごとの出火率を確認すると、出火率が1番高いのは大分県(4.93件)であることが分かりました。続いて高知県(4.53件)、山口県(4.50件)、島根県(4.38件)、宮崎県(4.34件)という結果となり、1位から5位の県が西日本に属しており、西日本の出火率が高い傾向であることがわかります。
一方、出火率が最も低いのは富山県(1.48件)でした。富山県は47都道府県の中で唯一出火率が1件台です。実は富山県は、平成3年から令和4年まで出火率全国最小を32年連続で記録しています(※3)。その背景には、女性防火クラブや少年消防クラブなどの民間団体による活動が活発に行われており、特に少年消防クラブのクラブ員は人口比で全国上位となっています。春と秋に全国一斉で実施している全国火災予防運動期間中には、クラブ員が住宅を訪問し、住宅用火災警報器の設置や火災予防の呼びかけを行うなど、富山県では日頃から防火意識の向上に取組んでいるようです。続いて出火率が低いのは神奈川県・石川県(2.06件)、大阪府(2.10件)、京都府(2.11件)という結果となりました。
火災による損害額に注目すると、茨城県が155.9億円と令和4年では最も大きい損害額となりました。また出火率と損害額の両方で宮崎県が上位に入っています。
※3 富山県「出火率32年連続全国最小を達成しました!」
https://www.pref.toyama.jp/1901/bousaianzen/bousai/shoubou/kj00001223.html
建物火災の原因は「たばこ(1,844件)」、「電気機器(1,499件)」「配線器具(1,290件)」が上位を占めていますが、建物火災で最も多いのは「こんろ(2,713件)」による火災です。こんろで火を扱う際には、周囲に燃えやすいものを置かないことや、調理の際、火が鍋底からはみ出さないように調節するなど日頃から注意して火を扱いましょう。また寒い時に活躍する電気ヒーターやこたつ、たばこも火災の原因となることが多いです。近年テレワークが普及しており、パソコンを自宅で使用する機会も増えているので、コンセントにホコリが溜まっていないかなど、配線器具の取扱いにも注意が必要です。
基本的なことですが、火を扱う際には火元から離れないことが重要です。東京消防庁のHPで火災を防ぐポイントを紹介しています(※4)。自分は大丈夫・心配ないと思っている方も、あらためて火や電気を使用する機器の取扱いには用心しましょう。
※4 東京消防庁「火災から尊い生命を守ろう」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/camp/2023/202302/camp1.html
■あらためて知っておきたい火災保険の補償範囲と重要性
消防庁が公開している令和4年の消防白書(※5)によると、令和3年中の出火件数3万5,222件のうち、76%が失火によるものであることが分かっています。ここで覚えておきたいことが「失火責任法」です。失火責任法とは、原則として失火者に対して損害賠償責任を問えない法律です。
例えば、隣家の火災が原因で自宅が燃えてしまった場合、失火責任法が適用されると隣家から賠償してもらえない場合があります。その場合、自費で自宅の修繕や建て直しを行う必要があります。
このような場合に備えるために、火災保険への加入・加入している補償内容が重要です。加入してから補償内容の見直しを行っていない方はこの機会に見直しすることをおすすめします。
ソニー損保では、保険の対象となる建物などから発生した火災、破裂・爆発により、近隣に与えた損害を補償する「類焼損害」の補償や、近隣の方へ見舞金を支払うための「失火見舞費用」の補償なども用意しています。補償内容ごとの細かい料金を確認する時には、ソニー損保の新ネット火災保険のウェブシミュレーションが便利です。
ウェブシミュレーションでプランや料金をチェック「ソニー損保の新ネット火災保険」 |
※5 消防庁「消防白書 令和4年(PDF版)」
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r4/items/part1_section1.pdf
ファイナンシャルプランナー 平野 雅章さんによる解説 ■失火責任法が適用されるケースを知って火災保険で備えよう 火災保険を検討しているお客様から「隣の家の火事が自宅に燃え移った時の損害は、隣に賠償してもらえるのですよね」と質問を受けたことがあります。失火責任法では、「民法709条の不法行為の規定を失火の場合は適用せず、ただし失火者に重大な過失があるときは除く」と定めています。失火とは過失により火災を引き起こすことですが、重大な過失でなければ、失火者は不法行為による損害賠償責任を負わないことになります。 お客様の質問には「通常は賠償してもらえないので、万が一の際に補償を受けられるよう火災保険に加入したほうがよいですね」とお答えしました。では、実際に失火責任法が適用されるケースとはどのような場合か、以下に例を挙げます。 ・古くなって倒れやすくなっていた襖が、石油ストーブの上に倒れて引火 ・一般的なコンセントの使い方をしていたが、トラッキング現象(コンセントとプラグの間に たまったチリやホコリが空気中の水分を吸収することが原因で発熱・発火すること)によって出火 ・仏壇のろうそくに火をつけていたところ、ろうそくが転倒し仏壇の棚板に点火した ※全ての例は、一定の注意を払ったものの想定外の火災につながったというのが前提 一方、失火責任法が適用されない「重大な過失」は、「ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」(*1)とされ、例えば、台所のガスコンロにてんぷら油の入った鍋をかけたまま台所を離れたため、てんぷら油が過熱されて引火した事例(*2)などがあります。 なお、火災保険や自動車保険などの特約として「個人賠償責任特約」を付帯していれば、失火者として「重大な過失」と認定され、法律上の損害賠償責任を負った場合にも補償されます。 ■火災保険の損害額が増加傾向に、知っておきたい「新価」と「時価」とは 近年、火災による損害額は増加傾向にあります。2022年は約1,017億円と前年から微減したものの、3年連続で1,000億円を超えています。それ以前は、900億円程度で推移していたことを考えると、増加傾向であることがうかがえます(*3,4) 。また、火災1件あたりの損害額も2020~2022年は300万円に迫っており、それ以前の200万円台前半から大幅に増加しています(*3,5) 。 万が一の際にカバーする火災保険ですが、同じ損額を受けても火災保険により受け取れる金額が異なるケースがあり、契約内容が「新価(再調達価額)」または「時価」のどちらの契約となっているか確認しましょう。 「新価」とは、保険の対象である建物や家財と構造、質、規模などが同じものを再築または再取得するのに必要な額です。つまり、保険金で元通りに再築や再取得が可能となっており、最近の火災保険は新価基準で保険金が支払われるものが主流です。 一方、以前の主流商品であった「住宅総合保険」や「住宅火災保険」は、「時価」が基準となっています。「時価」とは、再調達価額から使用による消耗、経年経過に応じた減価額を差し引いた額で、損害額は損害発生時の時価を基準に算出されるため、保険金では再築または再取得には足りないことになります。 まずは、加入している火災保険の保険証券で、保険種類が「住宅総合保険」または「住宅火災保険」となっていないか、そして、それ以外の保険種類も含め「新価」と「時価」どちらの契約なのかを確認しましょう。建築費の高騰も指摘される昨今、昔の契約は保険金額(支払われる保険金の上限)、および新価への契約見直しを検討してもよいでしょう。 <参考文献> *1 最高裁判所第三小法廷 昭和32年7月9日判決 民集第11巻7号1203頁 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57353 *2 全国消防協会編「ほのお 1997年10月号」-火災をめぐる法律責任の諸相(中)-市民に対する防災教養の一環として(関 東一)、日本財団図書館 https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1997/00907/contents/009.htm *3 消防庁「令和4年(1~12月)における火災の状況(確定値)」https://www.fdma.go.jp/pressrelease/statistics/items/20231129boujyou.pdf *4 消防庁「令和4年版 消防白書」https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r4/items/part1_section1.pdf *5 消防庁「令和4年版 消防白書(資料編)」https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r4/items/part7_section1.pdf |
監修:平野 雅章
お金の不安を相談で解消する相談専門ファイナンシャルプランナー(FP)として、保険・住宅ローン・ライフプランを中心に相談4000件超の実績。家計分析ツール「生活費ポートフォリオ©分析」考案、短大の非常勤講師、執筆など活動は多岐に渡る。横浜FP事務所 代表、全国FP相談協会 代表理事。CFP©、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
■ソニー損保 新ネット火災保険・補償範囲Q&A
・火災、落雷、破裂・爆発などの補償/ソニー損保の場合
火災保険の基本となる補償です。建物の補償はご契約に必ずセットされ、家財の補償は選択いただけます。ソニー損保の火災保険では基本補償として「火災、落雷、破裂・爆発」などに対する補償があり、建物や家財に損害が生じた場合に保険金をお支払いします。自身で火災を起こしてしまった場合はもちろん、隣家の火災からの「もらい火」による損害も補償します。もらい火などで被害に遭うことも踏まえてしっかり備えましょう。
■火災保険の補償範囲Q&A
①消火活動によって家具・家電が水浸しになった場合は?
消火活動による損害も火災保険で補償を受けることが可能です。自宅で発生した火災だけではなく、隣家などで発生した火災の消火活動で自宅に損害が発生した場合も補償の対象となります。
火災保険の補償内容次第では、保険の対象に含めていない家財や建物の損害は補償を受けることができないためご注意ください。
②カセットコンロのボンベが爆発し、近くの壁や家財が損傷した場合は?
火災保険で補償を受けることが可能です。その他にも以下のような場合も補償が適用されます。
•消火器が爆発し、冷蔵庫の扉が破損した
•ガス漏れに気づかず点火したところガスに引火し爆発した
•スプレー缶が破裂し電化製品が破損した