EY調査、2023年はマーケットの上昇にもかかわらずIPOに逆風

EY Japanのプレスリリース

・2023年、世界のIPO件数は前年比8%減少、調達額は前年比33%減少
・米国のIPO件数は15%増加、調達額は前年比155%増加
・新たなホットスポット市場がIPO大国を凌ぐペースで成長
 
EYは、2023年第4四半期のIPOに関する調査結果を発表したことをお知らせします。世界のIPO市場は1,298件のIPOで総額1,232億米ドルを調達し、2023年の幕を閉じました。全体として、欧米市場のセンチメント改善が中国経済の冷え込みを相殺する中、発展途上市場の小型ディールの熱気と大型ディールの精彩のなさが対照的となる、市場ダイナミクスの転換に直面した一年となりました。2023年のIPOの調達額は、昨年の低調なペースと比べても約3分の1、遅れていますが、件数は米国とEMEIA(欧州・中東・インド・アフリカ)の両方で増加しています。これらを含む調査結果は、EYのレポート EY Global IPO Trends 2023で公表しています。
 
データが示すポジティブな経済状況を背景に、市場が力強く上昇しボラティリティ指数が低水準にあるにもかかわらず、公募増資は、米国の9月の短期的な動きを除いて、多くの先進国市場で低調に推移しています。ここ2年間にわたるIPOの停滞の後、IPO発行者と投資家は市場の上昇に乗ろうと躍起になっていましたが、注目度の高いIPOが次々と上場後に売り出し価格割れし、市場心理に影響を与えた9月以降、この熱意は冷めました。マクロの不確実性に直面した株式投資家がメガテクノロジー株に固執したことも新規上場意欲を減退させた一因です。極めて積極的な金融政策もIPOに影響を与える主要因となり、株式市場全体のパフォーマンスを上回る影響力を持ちました。
 
5年平均のIPO活動との比較では、注目すべき点として、インドネシア、マレーシア、トルコで件数と調達額が増え、インド、サウジアラビア、タイでは件数が増加しました。対照的に、香港のIPO市場は今年の調達額が20年ぶりの低水準となり、中国本土のIPO発行ペースは2023年後半に鈍化しました。
 
今年は製造業セクターと消費財セクターがポジティブな動きを見せ、特に製造業セクターは件数が最も多く、消費財セクターは件数と調達額の両方で増加した唯一のセクターでした。一方で、テクノロジーセクターは、米国で注目されたハイテクIPOに対する投資家の反応が今ひとつだったことや、生成AIのスタートアップがまだベンチャーキャピタルの投資段階にあることから、引き続き件数は減少傾向ですが、調達額の面では、2023年のIPOをリードしました。また、ヘルス&ライフサイエンスセクターは、件数と調達額が大幅に減少しており、特に中国本土と米国でその影響が顕著です。このセクターでのプライベート・エクイティとベンチャーキャピタルの支援を受ける企業の数は2021年以来78%減少しました。セクター別のIPOトレンドは、世界経済とサプライチェーンのダイナミクスの変化を反映しており、セクター間で新たな勝者と敗者が生まれていることを示しています。しかし、ファンダメンタルズの強さが依然として全体を押し上げていることに変わりはありません。
 
エリア別パフォーマンスの概要: 2023年は各エリアが予想しなかった結果に
 
2023年の米国のIPOは、2022年比で15%増加しましたが、注目度の高いディールがいくつかあったため、調達額は2022年の約3倍に跳ね上がりました。合計で153件が227億米ドルを調達し、そのうち85%以上が米国取引所に上場しました。5億米ドル以上を調達したディールは、2023年には7件あり、2022年の4件から増加しましたが、米国取引所におけるIPO活動は引き続き小規模ディールが中心となっています。ブラジルのIPO市場は、情勢不安の中、上場のない期間が2年を超え、過去20年で最も長い不毛の期間を記録しました。カナダの主要取引所では、2022年と2023年のIPOはそれぞれ1件のみで、このレベルのIPO活動は、過去20年でこの取引所では前例のないものです。Americas(北米・中米・南米)では、IPO取引の低調、金利上昇、地政学的懸念が、公開市場への参入を目指す企業にとって厳しい資本調達の環境を生み出しています。
 
今年、Asia-Pacificでは732社が新規上場し、調達額は694億米ドルで、それぞれ前年比18%減、44%減となりました。経済的・地政学的な逆風に直面するAsia-PacificのIPO市場にとって、2023年は厳しい年となり、中国本土と香港の2大IPO市場は引き続き件数・調達額ともに減少しました。中国本土から米国へのクロスボーダー上場の平均ディール規模も20年ぶりの最低水準となり、2021年の水準から93%減少しました。ただし、中国本土は引き続きIPO資金の重要な源泉であり、2023年の世界全体の調達額の40%以上に寄与しました。Asia-PacificのIPO市場では、ESG(環境、社会、ガバナンス)およびテクノロジー分野でプライベート・エクイティとベンチャーキャピタルに支えられた資本力のある企業は、自社の評価が向上するまで待つ余裕があります。現実的な価格設定とIPO後のパフォーマンスが、強力なガバナンスと優れたエクイティストーリーを備えた上場準備会社の2024年の上場を促すかもしれません。
 
EMEIA(欧州・中東・インド・アフリカ)のIPO市場は回復基調にあり、MENAの大型ディール、インドとCESAの活発化、米国への注目度の高いクロスボーダーIPOを背景に、調達額は39%減少したものの、件数は7%増加しました。この地域は、413件、311億米ドルの調達額で1年を締めくくりました。また、世界の上位10案件のうち5案件がEMEIAからのものであったとはいえ、2022年と比較すると、大型IPOよりも小型IPOの件数が多かったため、調達額が減少しました。2023年もEMEIAのIPO上位10件の大半はMENAで、うち6件を占めています。英国では、高インフレと金利上昇に加え、厳しい市場環境がIPO活動を鈍化させました。EMEIA全体では、2024年の展望は楽観的ですが、予断を許さない市場環境にあって慎重な歩みが求められます。各国では、各国政府および規制当局が、破壊的イノベーションへの投資を促進するため、資本市場を刺激する措置を講じています。
 
 
2024展望 : IPO候補企業は好機に備え十分な準備を
 
EY Global IPOリーダーのGeorge Chanのコメント:
「IPOへの熱は高まりつつあり、改善されたアフターマーケットのパフォーマンスとともに小規模な取引が増加しています。 多くの政府がIPOを促進するための措置を講じていますが、特に高成長経済圏では活動が非常に活発です。金融政策が緩和され、地政学的な状況が安定する前に、IPOを検討している企業は、2024年中の限られたチャンスを生かすために、基礎を築き、価格に対する期待を管理することに焦点を当てるべきです」
 
世界的には、緩和されつつあるインフレーションと2024年の利上げカットの可能性が、流動性とリターンの見通しを向上させることで、投資家をIPOに呼び戻す可能性があります。ただし、持続的な地政学的不安は投資家の信頼を損なうかもしれません。
 
一言でいうと、来年のIPO復活はマクロの改善にかかっています。企業はIPOの好機を広げるためにより良い市場環境を待ち望んでいます。
 
向かい風が和らげば、投資家の信頼が回復し、市場は再びIPOに好機をもたらすでしょう。
 
2024年にIPOを検討している企業は、十分に準備する必要があります。考慮すべき主要な要因には、インフレーションと金利、政府の政策と規制、経済活動の回復、地政学的な緊張と紛争、ESGの議題、およびグローバルサプライチェーンが含まれます。代替的なIPOプロセス(直接上場、重複上場、セカンダリー上場)から他の資金調達手段(プライベート・エクイティ、借入またはトレードセール)まで、多様な選択肢も検討すべきです。
 
EY Japan IPOリーダー/EY Startup Innovation共同リーダー/EY新日本有限責任監査法人 企業成長サポートセンター長の齊藤 直人(さいとう まさと)のコメント:
「2023年度の日本のIPOマーケットのうち、グロース市場は、株価指標(グロース250)が夏以降低迷したため、同市場に上場した企業は、65件と昨年の70件に比べ減少し、また、例年IPO件数が多い12月に東証に上場した企業は、15件と昨年の25件に比べ大幅に減少しました。
しかしながら、年間を通じて見るとIPO件数は96件と昨年の91件を少し上回る結果となりました。調達資金が100億円超の案件は13件となり、昨年の3件から大幅に増えております。公募時の時価総額が1,000億円を超える案件は4件となり、昨年の2件と比べても倍増しており、また、グローバルオファリングした企業も7件と昨年の4件に比べると増加し、昨年と比べ全体としては、規模は多くなりました(日本のIPOデータは2023年12月1日時点)。東京証券取引所では、将来的にグロース市場の上場基準を引き上げる検討をしているとも言われていることから、将来IPOを目指す企業は、市場動向と合わせて、この動きにも注目する必要があります」
 

 
出典:EY、Dealogic
 
 
全世界のセクター別IPO件数:

セクター 2023 2022 対前期増減率
テクノロジー 264 328 -20%
製造業 265 222 19%
素材 160 217 -26%
消費財 138 101 37%
ヘルスケア・ライフサイエンス 128 168 -24%
エネルギー 69 93 -26%
生活必需品 86 86 0%
不動産 42 54 -22%
小売 50 50 0%
メディア・エンターテイメント 40 29 38%
金融 41 44 -7%
テレコム 15 23 -35%
合計 1,298 1,415 -8%

出典:EY、Dealogic
 
全世界のセクター別IPOの調達額(10億米ドル)

セクター 2023 2022 対前期増減率
テクノロジー 32.2 37.4 -14%
製造業 26.5 30.5 -13%
エネルギー 15.5 39.8 -61%
消費財 11.2 5.1 118%
素材 10.1 16.5 -39%
ヘルスケア・ライフサイエンス 10.8 17.5 -38%
金融 4.6 9.7 -53%
生活必需品 5.1 4.7 9%
不動産 2.4 4.0 -41%
小売 2.4 8.0 -70%
メディア・エンターテイメント 1.9 1.3 48%
テレコム 0.6 9.9 -94%
合計 123.2 184.3 -33%

出典:EY、Dealogic


 
※本ニュースリリースは、2023年12月14日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
 
英語版ニュースリリース:
Multiple crosswinds superseded global IPOs despite market rally in 2023 | EY – Global
 
ニュースリリースの詳細は、以下のEY Japanのウェブサイトからご覧ください。
EY調査、2023年はマーケットの上昇にもかかわらずIPOに逆風 | EY Japan
 
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<データについて>
本レポートに示されたデータは、ey.com/ipo/trends でご覧いただけます。2023年とは暦年全体を指し、2023年1月1日から2023年12月4日までに完了しているIPOおよび2023年12月31日までに完了すると予想されるIPO(2023年12月4日時点の予想)を含みます。本レポートに含まれるすべてのデータは、特に断りのない限り、Dealogic、Capital IQ、WindおよびEYを出典としています。本レポートで使用したDealogicのデータは、IONがライセンスを保有し、当該データに関するすべての権利をIONが保持しています。SPAC(特別買収目的会社)によるIPOは、特に記載のない限り、本レポートのすべてのデータから除外されています。
 

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