損害保険ジャパン株式会社のプレスリリース
本コンソーシアムでは、これまで中国にてEV電池のリユース利用の事業開発を先行して進めており※2、※3、本試験において、EV電池の価値顕在化と流通を行うことで、国内における中古EV利用、電池リユース、リサイクルをつなぐサーキュラーエコノミーのバリューチェーン構築の第一歩とします。
1.目的・背景
EVはカーボンニュートラルとグリーン成長戦略の主役の一つとして大きく期待されています。しかしながら、日本は、EVの普及では世界に大きく遅れを取っており、2021年の世界のEV普及販売台数は660万台(中国330万台、欧州230万台、米国63万台)に対して、日本は2万台程度にとどまっています。
普及が進まない主な理由の一つは、EVの充電ステーションが少ないなどの利用上の制約、航続距離が短く、エアコンなどの使用状況に影響を受けるなど、電池の性能に対する不安です。電池の品質に対する不安は、過去の使用状況が分からない中古EVではさらに大きくなります。この結果、中古EVは適正な価値評価がなされず、中古市場が低迷しています。こうした中古の値崩れは、新車の普及の阻害要因にもなっていました。
中古EVを適正に評価するには、中古販売などの現場で利用可能な短時間かつ幅広い電池に対応できる高速診断技術を用いる必要があります。しかし、中古EVは利用状態によって電池の品質が異なり、計測現場の環境によって精度に影響が発生するため、それらに対応できる適切な評価手法が求められてきました。
従来、EV電池の品質評価には、EVから取り外して充放電する必要があり、計測に1日程度かかるため、中古販売の現場では実施が難しい状況でした。その結果、走行距離や年式などから推定せざるを得ず、適切な客観評価ができないという課題がありました。また、近年では、短時間計測する技術が複数開発され実用化されつつありますが、診断だけでなく電池の品質保証までを行わないとユーザーは安心して利用できないという課題もありました。
このような様々な課題を解決すべく、本コンソーシアムでは、これまでに、電池の品質を短時間で推定する複数の診断技術の検証試験を実施しており、2022年11月からは中古EV電池の品質評価を行う際の診断技術の活用方法の検証を行うとともに、様々な劣化状態のEV電池を評価することで、保証のための基礎データを収集し、車両評価手法を確立することを目的とし本試験を開始しました。
2.本コンソーシアムが構想する中古EVの流通促進サービス
本コンソーシアムでは、電池を取り外さず1分以内で高速計測するだけでなく、中古車販売のオペレーションに負担をかけることなく、精度の高い電池評価ができるシステムサービスを提供することを目指しています。また、先端的な複数の高速診断技術を用いて評価することで、電池や計測状況にあった診断技術を活用でき、顧客ニーズに沿った各種の評価を行います。さらに、診断評価だけでなく、診断結果に従って電池を保証することで、ユーザーが安心して利用できるようになり、中古EVの適正価値を顕在化することも可能となります。
本コンソーシアムが構想する事業は、診断技術を用いて中古EVやリユース電池の評価を行いますが、診断技術販売を行うことが目的ではなく、多くの診断技術を持つ事業者と連携して、電池循環市場が分断することのないように幅広い種類の電池を横断的に診断評価することで、中古EV、リユース電池、電池資源の評価と価値顕在化、保証、流通を促進する場を形成することを目的としています。
また、EV電池の技術開発は日進月歩で、全固体電池などのように世界中で、様々な電池が開発され、それに応じた診断技術が今後も多数開発されることになります。中古EVを客観的に評価して、高付加価値で流通させたい事業者の方々にとって、こうした複雑化・高度化する電池の評価をその時点で最適な診断技術で評価することが最も使いやすいものになります。これにより、ユーザーである、中古車販売、ディーラー、リース等の事業者の方々に、各種の診断技術を一括で提供して、電池に依存せずに診断評価を行う市場横断的な流通プラットフォームを形成していきます。これにより、中古EVの健全な市場を構築し、EV購入者が安心して新車EVを購入できるようにすることで、EV市場自体の発展に貢献することを目指します。
現在、日本では需要が低いこともあり、中古EVの8割程度が海外輸出されています。こうした中古車両を国内で利用することで中古車市場の拡大が可能になります。また、中古EVの国内利用促進は、国内での資源確保の面でも有効です。中古EVの診断評価・保証サービスは、国内での中古流通市場を拡大するとともに、国内での電池のリユース、リサイクルを促進し、資源の国内循環の拡大にも貢献します。
【各社の役割】
会社名 | 役割 |
日本総研 | ・EV電池の社会価値最大化を行う事業構想、エコシステムの構築 ・車両評価手法の導入方法検討と推進 ・高速診断技術を用いた大量データ収集試験手法確立、試験推進 ・診断評価のサービス検討のためのデータ分析 |
損保ジャパン | ・保証サービスの検討のためのデータ分析 ・ビジネススキームの検討 ・パートナー開拓 ・社有車での計測協力 |
3.今後について
本コンソーシアムでは、EVでの利用からリユース、リサイクル、そして再生材料として利用される段階に至る循環市場の各段階にわたってEV電池の品質管理を行い、得られた価値情報を循環市場全体で流通させる本サービスの提供を目指しています。
2022年度中に幅広い中古車販売、ディーラー、リース等の事業者の方々と本試験を進め、保証サービスの手法に見通しを立てることで、2023年度には、本サービスの事業立上げを目指して、関係者の方々との協働を推進していきます。
※1 BACEコンソーシアム(Battery Circular Ecosystemコンソーシアム)
日本の先進診断技術開発および循環市場のエコシステムを形成する企業による事業検討のコンソ―シアムです。多数の先進診断技術を統合利用可能なシステムを構築し、様々な電池の診断評価をワンストップで実施可能とするとともに、信頼性ある診断手法で第三者的に電池の個別価値を評価し、ブロックチェーンを用いた信頼性高い循環流通市場を形成することで、他に類のない電池循環エコシステムの中核機能の形成を目指します。
これにより、①EVの中古売買時の品質明確化によるリセールバリュー向上、②リユース利用時の品質向上、高信頼化によるリユース電池の市場拡大、③中古販売、整備、解体、リユースなど分散するバリューチェーン関係者による電池流通情報の共通基盤の構築と信頼性向上、④電池のCO2排出量とCO2削減効果の算定、を行うことで電池の脱炭素価値を向上させる業界横断的なサービス事業を創出する診断と電池価値流通のプラットフォームの実現を図ります。
【ニュースリリース/2020年10月16日】車載電池の循環利用モデルに関するコンソーシアムを設立
https://www.jri.co.jp/company/release/2020/1016-1/
※2 【ニュースリリース/2021年7月15日】EV電池の残存価値診断技術の試験実施について
https://www.jri.co.jp/company/release/2021/0715/
※3 【ニュースリリース/2022年3月31日】EV電池の残存価値評価サービス事業化に向けた協定締結
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=102307
以上
【ゴイク電池株式会社について】
所在地:大阪市淀川区西中島五丁目13番12号
設立: 2014年
事業内容: 高速診断技術による電池診断装置、バッテリー・マネジメント・システム、急速充電装置の開発・販売 等
ホームページ:https://goiku.com/
【日置電機株式会社について】
所在地:長野県上田市小泉81
創業: 1935年
事業内容: 電気計測器の開発、生産、販売・サービス
ホームページ:https://www.hioki.co.jp/jp/