◆新成人利用者の26%が無理のある購買を経験 ~後払い決済(BNPL)利用に関する未成年者の金融行動調査~

関大のプレスリリース

 このたび関西大学の本西泰三教授(ソシオネットワーク戦略研究機構研究員・経済学部教授)の研究グループは、15歳から19歳の未成年者を対象として、急速に普及しつつある後払い決済(BNPL: Buy Now Pay Later)利用に関するインターネット調査(回答者数2,000人・調査日2022年3月10日)を実施しました。

 

 その結果、成年年齢引き下げにより、2022年4月には新成人となる18,19歳の回答者のうち、後払い決済の利用経験がある人の約26%が、「手持ちの現金や預金などを合わせても払えない金額の買い物」を、「後払い」決済サービスで支払った経験があることが分かりました。新成人男性利用者に限れば、この割合は35%にのぼります。

 

【本件のポイント】

 ・2022年4月に新成人となる18,19歳の回答者のうち、後払い決済の利用経験がある人の約26%が、「手持ちの現金や預金などを合わせても払えない金額の買い物を、後払い決済サービスで支払った経験がある」と回答(無理のある購買)

 ・新成人男性利用者に限れば、この割合はさらに高く35%にのぼる

 ・期日に支払えなかった経験がある人は、後払い決済の利用経験がある18,19歳男性の37%、15-17歳男性では49%にのぼる

 ・後払い決済の利用経験がある18,19歳の半数程度、15-17歳の3割程度が保護者の事前許可を得ていない

 

 現在日本では、「後払い」決済サービス(先に商品を受け取って、あとで代金を払う仕組み)の利用が、特に若者の間で急速に拡大しつつあります。このサービスを利用すると、商品の購入に際して実質的な借り入れを容易に行うことができます。中高生を含む未成年者も利用が可能となっており、金融経験の少ない若者の利用実態を明らかにすることが重要な課題となっています。

 

 本調査は、未成年者の後払い決済に関連した金融行動を明らかにすることを目的として実施しました。日本における主要な後払い決済サービスの名前を挙げて、利用経験を尋ねたところ、利用したことがあると答えた人は2,000人中570人でした。この割合は18,19歳では35%(男性29%・女性40%)、15-17歳では24%(男性20%・女性28%)と、女性の方が利用経験者の割合が高い傾向が見られました。一般に男性の方が活発な傾向がある金融行動において、これは特徴的な結果であると言えます。

 

 さらに、後払い決済の利用経験があると答えた570人(18,19歳300人、15-17歳270人)の行動を詳しく調べるために、利用時の行動について、以下の質問を行いました。

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【質問1】「手持ちの現金や預金などを合わせても払えない金額の買い物を、後払い決済サービスで支払ったことはありますか」

【質問2】「あなたは後払い決済サービスを利用した後、期日までにお金を払えなかったことがありますか」

【質問3】「あなたは後払い決済サービスを利用した時、保護者に相談しましたか」

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~以下、回答と分析結果~

【質問1】

 

<質問1・回答結果>

 

 「手持ちの現金や預金などを合わせても払えない金額の買い物を、後払い決済サービスで支払う」行動は、実質的な借り入れです。収入基盤の弱い未成年者にはとって代金の滞納に直結しかねない、無理のある購買行動であり、またリスクの高い金融行動でもあります。

 

 このような行動をとったことがあると答えた人の割合は、後払い決済利用経験者のうち26%(=150/570)でした。この割合は、18,19歳では26%(男性35%・女性20%)、15-17歳では27%(男性39%・女性17%)でした。この割合は女性よりも男性の方がかなり高い傾向があります。また、15-17歳男性における割合が39%と高い点も注目されます。

 

【質問2】

 

<質問2・回答結果>

 

 この質問では、後払い決済利用後に、代金を滞納した経験について尋ねています。このようなことを一度でも経験したことがあると答えた人の割合は、後払い決済利用経験者のうち33%(=188/570)でした。この割合は、18,19歳では30%(男性37%・女性26%)、15-17歳では36%(男性49%・女性27%)でした。この割合は女性よりも男性の方が高い傾向があります。また、15-17歳男性の半数近くが代金の滞納を経験したことがあると答えた点にも注意が必要です。

 

【質問3】

 

<質問3・回答結果>

 この質問では、未成年である回答者が、後払い決済利用時に保護者に相談したかどうかを尋ねました。保護者の事前許可を得ず(「相談しないで」、または「相談して、止められたが」)利用した人の割合は、後払い決済利用経験者のうち41%(=224/540)でした。この割合は、18,19歳では51%(男性44%・女性56%)、15-17歳では30%(男性29%・女性32%)でした。

 

 半数程度が保護者の事前許可を得て利用している18,19歳は、2022年4月以降保護者の許可が不要となり、さらに後払い決済の利用が拡大することを通じて、無理のある購買行動や代金の滞納が増加する可能性がある点には注意が必要です。また、2022年4月以降も未成年のままである15-17歳の3割程度は、保護者の事前許可を得ずに後払い決済を利用しています。

 

 性別では、「保護者に相談しないで利用し、今も保護者に話していない」割合が、男性よりも女性の方が高い点が特徴的です。

 後払い決済は、クレジットカードを保有している場合が多い大人が利用することはそれほど多くないため、保護者の側でこのサービスに対する認識が不十分な場合もあります。こうした新しいタイプの金融サービスについて、2022年4月以降未成年者としての保護を受けられなくなる新成人に対して啓発を行っていくと 同時に、2022年4月以降の未成年者にも金融教育などの場で情報を伝えていくことが必要です。

 

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■ 調査結果について

<研究グループ>

・阿萬 弘行 (関西学院大学商学部教授・関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構研究員)

・金 栄録  (関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構ポストドクトラルフェロー)

・本西 泰三 (関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構研究員・経済学部教授)

・山根 智沙子(広島経済大学経済学部准教授)

 

<調査概要>

 〔調査方法〕インターネット調査 〔調査日〕2022年3月10日〔調査項目〕23問

 〔調査対象〕調査会社Freeasyのモニター(15~19歳)計2,000人(男性・女性各1,000人)

 

                                      以 上

 

▼本件の詳細▼

関西大学プレスリリース

https://www.kansai-u.ac.jp/ja/assets/pdf/about/pr/press_release/2021/No67.pdf

 

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