改めて地震保険について考えよう 地震リスクの歴史と現在 〜最新の地震への備えチェックリスト公開〜

ソニー損害保険株式会社のプレスリリース

 ソニー損害保険株式会社(代表取締役社長:丹羽 淳雄、本社:東京都大田区、以下「ソニー損保」)では、適切な火災保険の選び方や見直し方を多くの方に知ってもらうために、さまざまな情報発信を行っております。
 今年の3月11日で、2011年の東日本大震災から11年を迎えます。東日本大震災は最大震度7、日本観測史上最大のマグニチュード9.0を記録し、津波や液状化現象など、日本各地に甚大な被害を及ぼしました。また2021年は、東京23区で東日本大震災以降初となる震度5強の地震が発生するなど、震度5強以上の大きな地震が年間で計6回観測されました(*1)。これは熊本地震が起きた2016年以来の多さであり、過去数年に比べ、大きな地震が多いことがわかります。
 今回のニュースレターでは、日本の地震観測の歴史や最新の状況とともに、地震保険の加入率の変化、いつ起こってもおかしくない地震への備えに役立つチェックリストをご紹介いたします。
*1: 気象庁「震度データベース検索」 https://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/

PART1.地震のリスクはどこまで予想可能? 〜日本の地震観測・予測の歴史〜

 まず最初に地震リスクという観点で、京都大学 防災研究所地震予知研究センター 西村卓也准教授の研究をもとに、地震観測・予測の歴史についてご紹介したいと思います。

①日本周辺で地震が多く発生する原因は?
 日本及びその周辺では、世界で起こっている地震の約1/10にあたる数の地震が発生していると言われていますが、そもそも地震はどのように発生し、なぜ日本の周辺でこんなにも多いのでしょうか?
 内閣府の防災情報HPでは、地震のメカニズムと日本周辺で地震が多い理由について次のように紹介されています。

■地震のメカニズム

・地球の表面は、海や陸など十数枚に分かれた、厚さ数10〜200kmのプレート(岩盤)で覆われている。
・海の下では新しいプレートが生まれ、年間数cmの速さで広がって陸のプレートに押し寄せるが、その時陸より重い海のプレートが陸のプレートの下に入り込む。この時の圧力によって徐々にひずみがたまる。
・このひずみが限界に達した時に、プレートに亀裂が入ったり、大きく動いたりすることで発生するのが地震。
・海と陸のプレート境界でおきる地震が「海溝型地震」(タイプ1)、陸のプレート内の弱い場所がずれて起こる地震が「活断層による地震」(タイプ2)。

■日本周辺で地震が多く発生する理由
・日本列島は、海と陸の4枚のプレート境界に位置。
・東北日本には、年間約10cmの速さで移動する太平洋プレートの力がかかり、西南日本は太平洋プレートと年間約4cmの速さで移動するフィリピン海プレートの力が同時にかかっている。つまり、日本は常に東西から北西—南東方向に圧縮されている状態にあるため、世界でも有数の地震が多い地域。
内閣府防災情報 「特集 地震を知って地震に備える!」より  http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h21/05/special_02.html

 上記メカニズムのうち、地震の観測・予測に関わってくる要素の1つが、陸のプレートの弱い部分『断層』です。

②地震発生のメカニズム解析の基礎となる「弾性反発説」
 そもそも、こうした地震のメカニズムがわかったのは長い地球の歴史の中でごく最近のことと言えます。発端となったのは、今から約110年前の1910年にアメリカの地質学者リード博士(H.F.Reid)が提唱した地震の弾性反発説です。これは、1906年発生のサンフランシスコ地震を研究する中で、数mにわたる地面のずれがあちこちに見られたことから導き出されたもので、断層のずれが地震の本質であり、地震の前から蓄えられた「ひずみ」が元に戻ろうとする力=「弾性」によって発生しているという理論につながりました。
 地球を覆うプレートが動くことで「ひずみ」が生じ、それが「弾性」によって元に戻ろうとすることで、プレートの弱い部分=「断層」が破壊されたりずれたりすることで発生するのが地震です。地震の予測においては、この「断層」の位置や長さに加えて、「ひずみ」の状況を把握するための地殻変動の観測が重要なデータになります。

③「ひずみ」の状況読み取る〜上下と水平の「地殻変動」観測の歴史と変遷
 この「ひずみ」の状況はどのような手法で観測され、地震の予測につなげられているのでしょうか?まず「ひずみ」の状況を読み解く上では、地面の動きを3次元的に計測した「地殻変動」のデータが必要です。地面の動きを時間をおいて複数回測定することで、どの方向にどれぐらいの「ひずみ」が生じているかを読み取ることができるのです。しかし、技術的に3次元的な地殻変動を計測することは難しかったため、「水平方向」の変動と「上下方向」の変動は別々の観測手法で計測されてきました。

 日本での「地殻変動」の観測は、明治維新から間もない1880年頃、当時の陸軍参謀本部が正確な地図の作成を目的に、全国での測量を開始したことに端を発します。観測当初は、「三角測量」(のちに「三辺測量」に置き換わる)が「水平方向」の変動を観測し、「水準測量」と「潮位観測」が「上下方向」の変動を観測する手法として用いられていました。

 こうした手法に変わって、近年ではGNSS(GPS)や、合成開口レーダー(SAR)等の人工衛星を用いた、より正確な位置測定システムが利用されるようになっています。これによって、より高精度かつ3次元的な地殻変動データが天候に左右されずに24時間体制で取得できるようになっています。

 現在、日本においては国土交通省国土地理院によって「GEONET」という名称のGNSS連続観測システムが運用されています。1994年の開始時には、全国で約200ヵ所であったGNSSの観測点は、阪神・淡路大震災をきっかけに整備が大きく進行し、現在では全国約1,300ヵ所に設置され、「地殻変動」の基盤観測網として活用されています。

④地震の予測に活用される「地殻変動」の観測データ
 こうしたGNSS観測網から取得される「地殻変動」のデータは地震の発生と密接に関係しています。例えば右に示す、2016年4月に発生した熊本地震発生前後のGNSSの観測データを見ると、地震の前後で南北に55cm、東西に74cm、上下に17cmと大きな動きがあることがわかります。
 さらに、こうした「地殻変動」の観測データからは、地震発生時の瞬間的な変化だけではなく、一定の期間にわたる経年的な変化も読み取ることができます。そして、こうした経年的な変化から読み取る「ひずみ」、特に形状の変化の指標となる「せん断ひずみ」の速度が地震の発生と関わりがあることがわかってきています。

 現在、国としては阪神・淡路大震災を契機に発足した「地震調査研究推進本部」が、活断層調査のデータ等をもとに長期の地震予測を行っており、今後30年間に震度6弱以上の揺れが発生する確率を地図に表した「全国地震動予測地図」などを公表しております。

 西村准教授によれば、観測技術や分析手法は年々発展している一方で、現状においては確実に地震を予測する手法はないとのこと。 GNSSの「地殻変動」データ分析による予測と「活断層」の調査を元にした予測は整合する地域とそうでない地域があり、一概にどの手法がすぐれているというわけではなく、それぞれの手法に長所・短所があり、組合せていくことが重要とのことでした。

 今後の長期的な地震発生予測の研究の発展を望みつつ、一人一人がいつどこで発生するかわからない地震への備えをしっかり整える必要がありそうです。
 

監修:西村 卓也
京都大学防災研究所地震予知研究センター 准教授
東北大学理学部、東北大学大学院理学研究科修士課程を修了後、国土地理院に勤務。国土地理院地理地殻活動研究センター研究官、同主任研究官を経て、2013年より京都大学防災研究所の准教授に就任し現在に至る。専門分野は測地学・地殻変動論。著書に地震予知の科学(東京大学出版会)などがある。
 

PART2. 地震発生への大きな備えの一つ 〜日本の地震保険の加入率〜

 では、そうした地震への備えの代表格ともいえる地震保険について一体どれぐらいの人が備えられているのでしょうか?
 損害保険料算出機構の地震保険統計速報によれば2020年の日本の地震保険世帯加入率は33.9%と、1993年度の7.0%から27年連続で増加しています。(損害保険料率算出機構「地震保険 世帯加入率」)
 また、火災保険を契約する持ち家世帯における地震保険の「付帯率」も同様に増加傾向にあり、ソニー損保が2020年〜2021年にかけて、全国の火災保険に加入している持ち家世帯を対象に行った調査(調査概要参照)でも、付帯率は2020年が60.4%、2021年が61.5%と増加していることがわかりました。

※本統計は、居住用建物および家財を対象として損害保険会社が取り扱っている「地震保険」のみの数値であり、各種共済については含みません。
※2013年以降は、当該年末の地震保険保有契約件数を翌年1月1日時点の住民基本台帳に基づく世帯数で除した数値です。2012年度以前は、当該年度末の地震保険保有契約件数を当該年度末時点の住民基本台帳に基づく世帯数で除した数値です。なお、世帯数には、2012年7月9日より住民基本台帳法の適用対象となった外国人が含まれています。

[調査概要]
名称:ソニー損保 災害リスクと火災保険に関する全国調査
調査対象者:30代〜60代の持家家庭で火災保険の加入検討に関わった人(男女)
調査方法:インターネット調査

[2020年] 調査期間:2020年8月14日~8月17日
サンプル数:1,087名(以下の全国11ブロック*中10ブロックで各100名、沖縄のみ87名)
*北海道・東北・関東・北陸・甲信越・東海・近畿・中国・四国・九州・沖縄の11ブロック [2021年] 調査期間:2021年8月10日~8月16日
サンプル数:1,100名(以下の全国11ブロックで各100名)
*北海道・東北・関東・北陸・甲信越・東海・近畿・中国・四国・九州・沖縄の11ブロック
 
PART3. もしもの地震に備える最新チェックリスト

 世界の中でも地震発生頻度が高い日本においては、万一の地震発生への備えは十分であるに越したことはありません。今回のニュースレターの発信にあわせてソニー損保では、地震保険をはじめとする地震への備えチェックリストをイラスト化して公開いたしました。

参考元:首相官邸災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html

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