株式会社ストラテジックキャピタルのプレスリリース
各位
2019年5月27日
株式会社ストラテジックキャピタル
代表取締役 丸木強
凸版印刷による図書印刷の完全子会社化に関する株式交換
及び弊社提出の株主提案の取り下げについて
図書印刷株式会社(以下「図書印刷」といいます。)の2019年5月13日付プレスリリース「凸版印刷株式会社による図書印刷株式会社の完全子会社化に関する株式交換契約締結のお知らせ」に記載の通り、凸版印刷株式会社(以下「凸版印刷」といいます。)が図書印刷を株式交換により完全子会社化すること(以下「本株式交換」といいます。)が発表されました。また、図書印刷は来る本年6月27日の株主総会において、本株式交換の承認に関する議案(以下「本議案」といいます。)を諮るとのことです。
本株式交換における交換比率から算定される、図書印刷株主が受け取る凸版印刷株式の価値は、公表日の終値ベースで図書印刷の純資産価値の0.74倍と非常に低い水準です。弊社は、親子上場が解消される事実だけに関しては評価しますが、本株式交換における交換比率は図書印刷の株主にとって不利なものであることから、許容できるものではないと考えています。本株式交換は、まさに首相官邸における未来投資会議(*)で指摘され(「上場子会社は経営者天国になっており、株価が割安で放置されていたりする」)、弊社が経済産業省に提出した意見書(**)で指摘した事項(「親会社が無能な子会社経営者を選任して、子会社の株価を低迷させた後に、親会社がこれを完全子会社化することもできます」)に該当し、弊社を含む投資家の多くが主張してきた親子上場による弊害が顕在化した事案といえます。
弊社は、本年5月23日に図書印刷と面談を実施しました。弊社は、①株式交換比率は、公表日の終値ベースで算定すると図書印刷一株当たり1369円の対価であり、図書印刷が保有する現金及び有価証券(税引後)の価値とほぼ同額であることから、図書印刷のビジネスの価値をゼロと評価するものであり、図書印刷株主にとって不利であること、②図書印刷の取締役会は、何故このようの自社株主に不利な交換比率を認めたのか、などを指摘しました。しかしながら、明確な回答を得ることはできませんでした。また、凸版印刷との面談を打診しましたが、拒否されました。
図書印刷株主総会における本株式交換の承認には議決権の3分の2以上の賛成が必要となりますが、過半の議決権を保有する凸版印刷が賛成する以上は、本議案は株主総会において承認されてしまう可能性が高いと考えられます。また、株主総会で本議案に反対して裁判所で交換比率を争う方法も考えられますが、「市場の株価には、当該企業の資産価値等の全ての情報が織り込まれている」、「市場の株価にある程度のプレミアムが付与されていれば良い」との前提で判断する判例の流れからすると、裁判所が今回の交換比率の不当性を認める見込みは非常に薄いと考えざるを得ません。
したがって、弊社としては、大変遺憾ではありますが、株式交換比率の変更は事実上難しく、本株式交換が実行されれば凸版印刷株式を受領せざるを得ない可能性が高いと判断しております。
親子上場による弊害、少数株主の利益を顧みない経営者、企業価値を理解できない判例等、現状において、日本の少数株主の利益は十分に保護されておりません。今後、親子上場に関する新たなルールや、経済産業省で検討されている「公正なM&Aの在り方に関する指針」等、弊社は、少数株主の利益が保護される制度が確立されることに強く期待するとともに、今後も意見を発信して参ります。
なお、弊社が弊社の運用するファンドと連名で図書印刷に対して提出していた株主提案は、同社が非公開になる可能性が高いことに鑑み、取り下げる旨の書面を本日発出致しました。
以上
*上場子会社のガバナンスの在り方に関する参考資料(2019年3月7日)8頁
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai24/siryou3.pdf
**弊社が経済産業省に提出した意見書(2019年1月29日)4頁
https://stracap.jp/wp/wp-content/uploads/2019/01/b1e7335587ddbf7141daae5a26885532.pdf