EY、「企業のダイベストメントに関する意識調査」を公開

EY Japanのプレスリリース

・日本企業の経営層の90%が直近の事業再編・売却は価格期待値を満たさなかったと回答

・日本企業の経営層の62%が不採算事業を長く抱えすぎていると回答

・日本企業の経営層の多く(92%)はESG課題が直接ダイベストメントの計画に影響を与えていると回答

 

企業の事業再編・売却に勢いが戻るとの予想にも関わらず、世界の企業の経営層は、自社が求めている事業再編・売却の利点を実現させることが難しいことを認めていることが、EYが発表した2021年度グローバル版「企業のダイベストメントに関する意識調査」(以下、「本調査」)により判明しました。

 

本調査に参加した日本企業の経営層の9割(90%)が、直近の事業再編・売却で価格期待に見合う結果を出せなかったと回答しています。また、日本企業の経営層の68%(Global全体の77%)が、ポートフォリオや戦略の見直しが不十分であったため、目指していた事業再編・売却の結果が出せなかったと回答しています。

 

「企業のダイベストメントに関する意識調査」はEYが毎年発表しているもので、今年度は世界中の大企業の1,000名以上の経営層(C-suite)を対象に調査を実施しました。62%の日本企業の経営層、またグローバル全体でも78%の回答者が不採算事業を長く抱えたままでいることが判明しました。これらの事業は、かつてはポートフォリオの重要な要素でしたが、今ではリソースや資本を無駄に使うことにつながっていて、これを他で活用したほうがより良い結果を生むことが見込まれるアセットとなっています。こうした課題があるうえさらに、コロナ禍によるビジネス環境の中で、企業はこれまで以上に厳しい資本配分の意思決定を迫られています。パンデミックにより、ダイベストメントが加速したと回答した日本の経営層は30%にとどまりましたが、そのうちの68%が、堅調なM&A市場がもたらすチャンスを活かして、2年以内に次の事業再編・売却を開始する予定であると回答しています。

 

EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社、ダイベストメント・アドバイザリー・サービスリーダーの大胡晋一は次のように述べています。

「事業再編・売却は、あまりにも多くのケースでディールの完了をゴールにした短期的な経済要因に基づいて意思決定・実行されており、それがしばしば長期的に芳しくないディール結果につながっています。事業再編・売却は本来、全体的な企業戦略に沿ったものであるべきで、これまで以上に重要なトランスフォーメーションをもたらす機会として捉えられるべきです。意思決定プロセスの中心となるべきは、次のような要素です。つまり、事業再編・売却で得た資金を、テクノロジーや追加的ケイパビリティへの投資に回し、事業を切り出す企業に競争的優位性を生み出すこと、そして、計画している事業再編・売却が企業の将来のオペレーションモデルにどのような影響をもたらすかを考察することです。事業再編・売却が企業戦略の中でどのような役割を果たすのか理解することが、新たな成長機会を捉え、ステークホルダーに対する価値を高めていく上で非常に重要となります。そして、EYの今回の調査の結果、新たな成長とステークホルダー価値の向上との間により強いつながりを生み出すことが経営層の重要な任務であることを、回答者がこれまで以上によく理解していることが判明しました」

 

事業再編・売却の動きを加速させるESG、テクノロジー、リターン

事業再編・売却の動きを活性化させる上で、ますます大きな役割を果たしているのが環境、社会、ガバナンス(ESG)関連の要因です。事業を切り出す側(売り手)の9割以上(92%)がESG関連課題は自らのダイベストメント計画に直接影響を与えている要因だと回答しています。こう回答した売り手は、Global全体では46%、Asia-Pacificで84%、EMEIAで47%、Americasで14%となっており、日本を含むAsia-Pacific地域では、EMEIAやAmericasと比べて、ESGがはるかに大きな検討要因となっています。この調査結果は、2021年第1四半期(Q1)のM&Aに関するデータと一致しています。このデータによると、ESGと再生可能エネルギーに関連したM&Aの取引額は、2021年Q1だけで2020年通年の取引額の3倍となっています。欧州で事業再編・売却の意思決定にこれまで以上に影響を与えている可能性があるのが、企業にカーボンフットプリント削減を求める規制上の変更です。一方、Americasの企業が事業を切り出したり、スピンオフを行ったりする際に考慮しているのは、企業経営(マネージメント)に対するインパクトおよび従業員の多様性(ダイバーシティ)となっています。「日本を含むAsia-Pacificの多くの国では、当該規制の制度設計・導入の本格化はこれからですが、今後のダイベストメントの意思決定に大きく関係する要因となることは間違いないでしょう。」と大胡は述べています。

 

また、本調査に参加した日本企業の9割が、テクノロジーの状況の変化が、ダイベストメント計画に直接の影響を与えていると回答しており、コロナ禍前の56%から増加しています。また、56%の企業が、直近の事業再編・売却を行った理由として、売却した事業のリターンが水準以下だったことを挙げています。ダイベストメントによって得た資金をどのように活用したかに関しては、72%の企業が中核となるケイパビリティをサポートするテクノロジーへの投資に当てたと、65%の企業が、事業を切り出した側の企業がより有利な位置につけるような、新しいマーケット、製品、進出先地域への投資に振り分けたと回答しています。

 

ダイベストメントを長期的価値創造の鍵となる戦略的最優先事項に沿ったものに

企業のCEOにこれまで以上に必要とされているのが、長期的価値をステークホルダーに対してどのように提供できるかを広い視点から考え、企業戦略の推進にもはや貢献できなくなった事業を特定することです。しかし、CEOの半数は、どの事業が中核で、どれがそうではないかについて、これまでよりもさらに良い判断基準を今後は示していく必要があると考えています。また日本企業の経営層の半数以上(55%)が、事業再編・売却の根拠を取締役会や主要なステークホルダーに説明することは困難であると回答しています。しかし同時に、自社のビジョンやミッションとの整合性を、事業再編・売却を行う際の根拠として考えていると回答した経営層は、わずか37%にとどまりました。

 

EYストラテジー・アンド・トランザクション Japanリージョナルリーダーの梅村秀和は次のように述べています。

「新型コロナウイルス感染拡大のようなトリガーイベント(引き金となる出来事)によって、企業は現在、長期的価値の提供を企業戦略の中心に据えるようになっています。企業のCEOは、ポートフォリオの変更が、自社の戦略やESGなどの広範な検討事項とどれだけ密接に結びついているかを示すことができてはじめて、事業再編・売却の意思決定に対するステークホルダーの支持を集めることができるのです。逆に、事業再編や売却が企業責任や要件に整合しており、そこで得られた資本を、ビジネスの効率化や、顧客体験の向上、また新たなテクノロジー領域への投資につながるのであれば、ステークホルダーが支持側に回る可能性は高いと言えるでしょう。」

 

Global版ニュースリリース:

https://www.ey.com/en_tr/news/2021/05/global-executives-concede-to-challenges-in-realizing-divestment-benefits

 

EY Japanのウェブサイト:

https://www.ey.com/ja_jp/news/2021/05/ey-japan-news-release-2021-05-27

 

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アシュアランス、コンサルティング、法務、ストラテジー、税務およびトランザクションの全サービスを通して、世界が直面する複雑な問題に対し優れた課題提起(better question)をすることで、新たな解決策を導きます。

 

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EY の『企業のダイベストメントに関する意識調査』について
EY の『企業のダイベストメントに関する意識調査』(原題:”Global Corporate Divestment Study”)は、グローバルの大企業の経営層(C-suite)を対象として、Euromoney Institutional Investorのグループ会社であるThought Leadership Consulting社が年に一度実施している調査です。2021年の本調査は、11業界の企業を含む、グローバル企業の経営層1,040名と世界的なアクティビスト投資家25名を対象としたオンライン調査(2021年1月から2021年3月にかけて実施)の結果に基づいています。回答者の90%が、CEOやCFOレベルの経営層(C-suite)となっています。