EY調査、2021年以降のM&A活動をけん引する条件が整う

EY Japanのプレスリリース

・20207月以降、世界のM&A取引額は予想以上に力強く回復し、この傾向は2021年も継続するとみられる

・M&A2020年上半期に激減したものの、年間取引総額は世界金融危機以降で5番目の規模

・消費者行動の激変を受け、企業の将来計画の見直しが取引交渉を促す

 

2020年は企業の合併・買収(M&A)にとって激動の1年となりましたが、案件取引額は第3四半期初め以降、前年比増を記録しています。2020年の世界のM&A動向と2021年の取引見通しを考察した最新のEYの調査によると、新型コロナウイルス感染症流行(パンデミック)後の経済活動の改善に向け、企業が立て直しを図り、将来計画を再考するなか、この増加傾向は2021年も継続するとみられます。

 

本調査によると、2020年の世界のM&A取引総額は2.9兆米ドルと、2019年の3.3兆米ドルを下回ってはいますが、世界金融危機以降では5番目の年間取引総額となっています。M&A活動には地域差があり、Asia-Pacific地域では、2020年の取引総額は年初2カ月で激減したものの最終的には19%増の8,050億米ドルに達しました。米州(南北中米)では、取引総額は29%減の1.27兆米ドルとなり、米国市場がロックダウンの影響で2019年比80%減となったことが響きました。EMEIA(欧州、中東、インド、アフリカ)では、減少幅はより限定的(3%)で取引総額は8,150億米ドルとなり、年前半の減少分を大方取り戻しています。

 

業種(セクター)別で見ると、最も活況だったのはテクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコム(TMT)で、案件数5,755件、取引額9,730億米ドル(前年比6%増)、次いで金融サービスが同901件、3,520億米ドル(8%増)、電力・ガス等公益事業が同525件、1,420億米ドル(34%増)でした。

一方、パンデミックの影響を被りやすい業種はは、ロックダウン規制や景気低迷の煽りを受け、著しく減退しました。なかでも特に影響が大きかった業種は、工業セクター(前年比18%減の2,620億米ドル)、及び消費財セクター(同16%減の1,560億米ドル)でした。

 

EYのグローバル・バイス・チェア(ストラテジー・アンド・トランザクション)のAndrea Guerzoniは、次のように述べています。

「今年下半期におけるM&A活動の増加はほぼ期待どおりでした。世界のM&Aはパンデミック関連の失速から、大方の予想以上に力強く、迅速かつ持続的に回復しています。7月以降に発表された案件は大胆さがあり、資産を統合して消費者により幅広く多様な製品を提供しようという共通のテーマが見られます。企業は将来のいかなるショックや危機にも耐え得る抵抗力を培おうとしており、どの業種でも、取引の主眼は市場シェアの獲得ではなく、長年求めてきた組織としての強い能力を手に入れ、市場への新たなルートを構築することにシフトしています。」

 

2021年以降の市場を決定付ける、各業種の果敢な動き

本調査によると、2021年以降は、パンデミック下で取引交渉が制約を受けた業種がが次の波をけん引する見通しです。

 

例えば消費財セクターでは、パンデミック下で苦戦した資産に対し、より財務力の強い競合企業がM&Aを仕掛ける例が増加しつつあります。また、顧客基盤との強固なつながりを持つイノベーティブ企業による買収も出てきています。

 

プライベートエクイティ(PE)ファームも2020年に活発な動きを見せましたが、この傾向は、回復が期待される2021年以降、企業やセクターが立て直しを図るなかでさらに加速すると思われます。プライベートキャピタルは、約1兆米ドルの買収専用資金を含め、2.8兆米ドルの手元資金を有しており、価値創出が期待される2021年に利益を享受できる有利な立場にあります。市場で存在感を増している特別買収目的会社(SPAC)も、来年の案件交渉で新たな選択肢となる可能性があります。

 

さらに、エコシステムを重視する企業によるジョイントベンチャーやアライアンス、あるいは戦略的な事業転換や再投資を可能にする事業売却など、代替的な取引手法が増加傾向にあることも、取引交渉意欲を高める要因になると予想されます。

 

また、Guerzoniは次のように述べています。「消費財や工業セクターの企業は、期待される回復から利益を得るべく統合し、、消費者の行動や好みが激変したパンデミック後の新しい環境に適用しようとするでしょう。こうした兆候は既に出ており、小売業では実店舗の縮小が進む一方、Eコマースへの転換が加速し、製造業ではサプライチェーンの見直しやリスク回避の動きが見られます。」

 

テクノロジーと地政学が企業の戦略に影響

M&A活動の増加が予想されるなか、EY Digital Investment Indexによると、企業の経営層の約3分の2(62%)が今後2年間に自社事業の抜本的変革が必要と考えています。彼らはその達成に向け最新テクノロジーに注目し始めており、今後2年間の最大の投資対象として、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、クラウドコンピューティングを挙げています(それぞれ67%、64%、61%)。デジタルテクノロジーを求めてM&Aを行った経営層の52%が、成果が期待を上回ったと回答しており、デジタルパートナーシップに関する質問でも45%が同様の回答をしています。2021年には、各種案件、コーポレート・ベンチャー・キャピタル、パートナーシップ投資が増加することになるでしょう。

 

地政学的要因も、M&Aや市場参入・市場撤退といった資本上の戦略的意思決定に影響を及ぼしています。EY 2021 Geostrategic Outlookによれば、パンデミックが全般的な地政学的変化の主な要因となっている現在の環境において、そうしたリスクを分析することの重要性が高まっています。

欧州や米国では、ブレグジットのような不安定要因や米国の選挙結果を受けた新たな政策が、エグゼクティブによる企業戦略や資本配分の見直しに大きな影響を及ぼすでしょう。英国では2020年にM&A取引額が既に40%増加しており、米国では79%の企業が大統領選挙後に法人税が引き上げられた場合、M&A戦略やアライアンス、ジョイントベンチャーを加速させる可能性が高いとしています。このように、2021年がM&A活況化の年となる基礎は整っています。

 

さらにGuerzoniは次のように述べています。「テクノロジーにせよ地政学にせよ、さまざまな形のディスラプション(創造的破壊)が取引や戦略的投資を推進させます。CEOは、今すぐ現実的な戦略を発動して、複雑さを乗り切り、将来計画を立てる必要があります。一旦停止した後に動き始めた2020年は、不安定さを考えれば、取引交渉にとって驚くほど底堅い1年でした。さらに低金利、潤沢な資金、そして翌年の見通しに対する安心感など、M&Aを支える条件が整ったことから、2021年は順調に滑り出し、そこから加速していくことが期待できます。」

 

※本プレスリリースは2020年12月14日にEYが発表した英語のプレスリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

 

英語リリース:

https://www.ey.com/en_gl/news/2020/12/conditions-ripe-for-already-resilient-m-and-a-activity-to-accelerate-in-2021-and-beyond#:~:text=But%2C%20with%20conditions%20ripe%20to,footing%20and%20accelerate%20from%20there.%E2%80%9D

 

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EY Digital Investment Indexでは、企業が今後2年間で、デジタル戦略の実現に向けてどのような変革を行う必要があるかを評価します。調査では、欧州、北米及びアジアのさまざまな業界における収益10億米ドル超の企業のエグゼクティブ1,001人に質問をしました。そのうち3分の1の企業は年間収益が100億米ドルを超えます。調査対象は、アドバンスト・マニュファクチャリング及びモビリティ(AM&M)、消費者教育、エネルギー、金融サービス(FS)、ヘルスケア及びライフサイエンス、プライベートエクイティ、テクノロジー、メディア・エンターテインメント、テレコム(TMT)を含む各種業界のCEO、CDO(最高デジタル責任者)、CFO、CSO、CIOです。