三井住友トラスト・資産のミライ研究所が令和時代の資産形成を調査ーー年齢が上がるにつれて「世代内資産格差」が拡大!

三井住友信託銀行株式会社のプレスリリース

■ 令和の家計は、年齢の上昇に伴い、世代内で保有金融資産の格差が拡大!60歳代の世帯のうち、約1/3は“300万円未満”。一方、約4割の世帯は“1,500万円以上”という結果に
■ 資産形成において「持家/住宅ローン」は“足かせ”か、否か?
■ 令和時代の資産形成は「コツコツ&スマート」に!ローン世帯の新定番は“Smart Spending(スマート・スペンディング)”!ポイントやマイレージを家計に活用

 三井住友信託銀行株式会社(取締役社長:橋本 勝)が人生100年時代に適応した資産形成や資産管理に関する調査・研究を目的として設置している「三井住友トラスト・資産のミライ研究所(所長:丸岡 知夫) 以下、ミライ研」は、2020年1月に実施した「住まいと資産形成に関するアンケート調査」(対象は全国の20歳~64歳の男女1万人)の調査結果レポ―トを公表しました。この調査で各世代における住まいや住宅ローンに対する考え方や資産形成の方法についての違いが浮き彫りになりました。(※本調査および本資料では、60歳代は60歳から64歳を指しています。)

■年齢が上がるにつれて、世代内で保有金融資産の格差が拡大!60歳代の平均は1,828万円

 まず、今回、20歳~64歳の男女に「世帯として保有している金融資産(現金、預貯金、債券・株、投資信託、生命保険のうち満期金のあるもの、貸出金等 住居等不動産は除く)」をたずねたところ、1世帯あたりの平均金融資産保有額は20歳代の270万円から年齢とともに増加していき、60歳代では1,828万円、20歳代の6.8倍という結果になりました。

 10歳刻みでその平均保有額の変化をみると、20歳代から40歳代までの伸びは比較的緩やかであるのに対し、50歳代から60歳代にかけては10年間で700万円以上増加しており、住宅ローン返済からの解放、教育費負担の減少、退職金の受け取りなどが背景と考えられます。

図表1  年代別にみた世帯あたり平均金融資産保有額(単一回答、有効回答数=10,220)

(資料)特記ない限り「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」より三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成

■ 60歳代の世帯のうち、約1/3は“300万円未満”。約4割の世帯は“1,500万円以上”
 次に、金融資産保有額を低位層・中間層・高位層の3階層(※)にわけ、各世代での家計金融資産の分布状況をみてみると、以下のことがわかりました。

  • 20歳代では3/4を占めた低位層(300万円未満の層)が、60歳代では1/3まで減少
  • 20歳代では2%強だった高位層(1,500万円以上の層)が、60歳代では4割まで増加
  • 中間層(300万円以上~1,500万円未満の層)は、30歳代以上では年齢が上がるにつれ減少
  • 60歳代における比率は、低位層=33.3%、中間層=25.5%、高位層=41.2%と、低位層・高位層の両サイドが厚みをもつ形状になる

 家計金融資産の分布は、年齢が上がるにつれより高位層寄り(図表中の緑色)にシフトし、かつ中間層が減って高低両側へのバラツキが大きくなっていきます。つまり、齢を重ねるほど同じ世代内における金融資産の格差が拡大する傾向となっています。

図表2  世代別にみた世帯あたり平均金融資産保有額(単一回答、有効回答数=10,220 )

 

 

 

※3つの金額階層について:総務省「家計調査/貯蓄負債編2018年」の貯蓄残高階級別世帯分布(二人以上勤労者世帯)における「残高300万円未満:300万円~1,600万円:1,600万円以上」の比率が概ね「25:50:25」であることを参考に、低位層と中間層の区切りを「300万円」、中間層と高位層の区切りを「1,500万円」と設定。

■ 資産形成で「持家/住宅ローン」は“足かせ”か、否か?住宅に「夢」の20歳代、「生活」の30歳代
 金融資産の格差拡大と「住まいと住宅ローン」との関係性を調べることを目的に「持家の状況」と「住宅ローンの有無」の結果から「持家/ローンあり世帯」「持家/ローン返済済み世帯」「持家/ローンなし世帯」「借家・親と同居/ローンなし世帯」の4グループに分けて保有金融資産の推移を比べたところ、40歳代以降では、以下の状況が見えてきました。

  • 40歳代:「持家/ローン返済済み世帯」と「持家/ローンなし世帯」の資産形成が大きく進み、保有額は1,000万円前後に到達
  • 50歳代:「持家/ローン返済済み世帯」と「持家/ローンなし世帯」の資産形成が引き続き順調
  • 60歳代:持家と住宅ローンの保有状況により、60歳代時点で家計金融資産保有額に2倍の開きがでた(「持家/ローン返済済み世帯」と「持家/ローンなし世帯」は、2,000万円前後、「持家/ローンあり世帯」と「借家・同居/ローンなし世帯」は、1,000万円前後)

図表3 ローン状況別の保有金融資産額の推移(単一回答、有効回答数=10,220)

 

 また、持家購入者に、「最も大きな購入動機」をたずねたところ、「賃貸の家賃を払うなら、(ローンを払ってでも最後は家が)自分のものになったほうがいいから」が平均20%を越えるなど、全世代を通じて第1位となりましたが、30歳代では第2位、第3位がそれぞれ「子供」「結婚」と、世帯構成の変化やライフイベントの発生が上位になっています。20歳代については、「自分の住宅を保有することが夢だったから」(22.5%)がトップという結果に。住宅に「夢」を求める20歳代、「生活」を求める30歳代、という意外な傾向が見えてきました。

図表4 住宅購入者の最も大きな購入動機(単一回答、有効回答数=3,610)

 

 

■「ローン返済」の負担感は少なめ?約6割が 「負担に感じない」 、「少し負担」と回答
 続いて、「住宅ローン返済の負担感」について聞くと、全体では、「少し負担に感じる」が52.4%でトップという意外な結果になりました。続いて「負担に感じる」が25.1%、「まったく負担に感じない」が12.1%。 「まったく負担に感じない」 、「少し負担に感じる」を合計すると60%を超えることになり、毎月のローン返済については、所与のものとして腹をくくることで、負担感が少なくなっているのではないかと捉えることもできます。
 一方で、30代は「まったく負担に感じない」(9.6%)が他世代より低く、広い意味で「負担感を一番感じている世代」であることが分かりました。

図表5 住宅ローン返済への負担感(単一回答、有効回答数= 2,957)

 

■「資産形成していない」が3割。持家/ローンあり世帯の8割は資産形成に取組むも金額的には今一歩
 次に、資産の形成をどのように行っているのかを調査しました。全世帯に「定期・不定期を問わず、過去1年に以下の資産形成(※)に向けた取り組み(保有)をしていますか」とたずね、1つ以上行っていれば「実施」とし、取り組み状況をまとめました。
(※)国内預金、財形・社内預金、生命保険、日本国債・地方債、外貨預金、FX、投資信託、社員持ち株会、株式投資、不動産投資、暗号資産、商品先物取引

図表6 資産形成に向けた取り組み(複数回答、有効回答数=10,780)

 

 資産形成に向け何らかの取り組みを実施している世帯の比率は、全世帯ベースでは7割ですが、持家/ローンあり世帯はローンの保有状況別の4グループ中、最も実施比率が高く、8割が住宅ローンを返済しつつも資産形成に向け何らかの取り組みを行っているということがわかりました。

 ただし、実際に1年間に資産形成できている金額はさほど多くありません。資産形成への取り組みを行っている持家/ローンあり世帯の5割は年間資産形成額が50万円未満で、うち1割は差し引きゼロ(積み立てはするが、引き出して費消してしまうケース)、300万円以上は5%未満に留まっていることがアンケート調査結果から確認できました。

図表7 住宅ローン保有状況別にみた家計の年間資産形成額分布(単一回答、有効回答数= 4,210)

 

※構成比については1%未満 および 文字重なりにより判読不可の部分を一部省略。

■令和時代における持家/ローンあり世帯家計の新定番は “Smart Spending”(スマート・スペンディング=賢く支出)! ポイントやマイレージを活用した「コツコツ&スマート」型の家計運営で資産形成!
 最後に、住宅ローンを保有していて資産形成にも取り組んでいる世帯の家計行動の特徴を知るために、「家計面で行っている具体的な工夫・努力」についてたずね(複数回答可)、その結果と金融資産保有額をクロス分析しました。

 冒頭の分析でも利用した3つの金融資産保有額階層(低位層・中間層・高位層)ごとの工夫・努力項目の実施率をみてみると、全ての保有額階層で実施率トップは「ポイントやマイルの活用」でした。ただし300万円未満では35%、300万円以上では45%と実施率に差が出ています。

 「ポイントやマイルの活用」以外では、低位層(保有金融資産300万円未満)は、まずは「日々の節約」、次に「家計簿」の順になっています。これが中間層・高位層になると、「節約」より「家計簿」が上位になります。家計簿の利用率は金融資産保有額が大きい世帯ほど高く、高位層(保有金融資産1,500万円以上)では4割が実施していました。節約は、やはり「衣・食・住(光熱水道)」が中軸で、食費と光熱水道費の節約はどの金融資産階層でも30~35%前後が実施していました。「ふるさと納税」の利用については、金融資産階層が高位層になると実施率が高まることがわかりました。

 令和時代は、全階層で人気があるのは「ポイントやマイルの活用」であり、現金支出を抑えた「賢い支出」に取り組みつつ、保有金融資産が高額になるにつれて、納税してからメリットバックを受ける「ふるさと納税」の利用比率が高まってくる傾向です。
 また、保有額300万円未満の層には、300万円以上の層と比べ「特に何もしていない」比率が高く(17.9%)実施している工夫・努力の項目数は少ない(平均2.6個)という特徴がみられ、資産形成を進めるためには普段からの様々な工夫・努力が大切であることがうかがえる結果となりました。

図表8 金融資産保有額別にみた家計面の工夫・努力トップ5(持家/ローンあり世帯)(複数回答、有効回答数= 1,114)

 

■調査名 :住まいと資産形成に関する意識と実態調査
■調査対象 :全国の20~64歳の男女
■調査方法 :インターネット調査(株式会社インテージ)
■調査時期 :2020年1月
■サンプル数 :10,780サンプル

■本アンケート内容に関する照会先
三井住友信託銀行  三井住友トラスト・資産のミライ研究所:丸岡
TEL: 03-3286-4648  E-MAIL:Maruoka_Tomoo@smtb.jp
ミライ研 ホームページ https://mirai.smtb.jp/
(レポート全文は、上記ミライ研ホームページよりご覧いただけます)
 

※三井住友トラスト・資産のミライ研究所は「人生100年時代」といわれる令和時代において、将来を安心して過ごすための資産形成や資産活用について中立的な立場で調査・研究し発信する三井住友信託銀行内の組織です。