日本格付研究所がフィリピンの信用格付けA-に引き上げ

フィリピン中央銀行のプレスリリース

 6月11日、フィリピン中央銀行(以下、BSP)は日本格付研究所(以下、JCR)によるフィリピンの信用格付けがこれまでのトリプルBプラス(BBB+)からエーマイナス(A-)へと一段階引き上げられたと発表しました。見通しは「安定的」。世界経済に悪影響を与えたパンデミックの渦中にありながらもレジリエンス(回復力)を示したことが評価されました。

フィリピンは近年定期的に円建て外債(サムライ債)を起債しており、この度の引き上げが日本の投資家の信頼を強化する一助となることが期待されます。これは、日本の機関投資家の多くがその運用ガイドラインの基準値としてJCRのA-以上の信用格付けを必要とするからです。

6月11日に発表されたレポートでJCRは、フィリピンの強化された経済基盤、COVID-19に関連する様々な支援策、そして包括的税制改革(CTRP)の一環である通称 CREATE(Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises Act)等の重要な法案の速やかな成立に向けた姿勢を鑑みると、新型コロナウイルス感染拡大というクライシスの国内経済やその財政面への影響は一時的であると判断すると報告しています。

JCRは次のように述べています。「これまでに強化されてきた経済基盤や堅固な対外ポジションに加え、政府が策定した GDP 比 9%超の経済対策の効果から、経済の落ち込みは限定的にとどまるとみています。財政赤字は拡大するものの適正な財政政策の運用であり、政府債務も比較的低位に抑えられることから、財政基盤の健全性が損なわれることはないと考えています」

フィリピン経済については、「今年は新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動の停滞が予測されるものの、中期的には6~7%台の高度成長軌道に回復するだろう。」と述べています。

JCRの格付けに対してカルロス・ドミンゲス財務大臣は次の様に述べています。「今世紀で最も過酷とも言える世界的な景気低迷によって各国の経済が苦しんでいる中でのJCRによるA-への引き上げは、この危機から迅速かつ強固な回復を進めるフィリピンの実力に対する確かな評価となります」

「(ロドリゴ)ドゥテルテ大統領が2016年就任以来、看板政策として推進してきた税制改革などによって、フィリピンの財政能力は新型コロナパンデミックがもたらした金融危機に対処し、乗り越える力を持つまでに成長しました。ドゥテルテ政権の『COVID-19に対する4つの柱の社会経済戦略』に基づいた積極的なコロナ対策の実施によって、強固、持続的そして高い回復力を持って経済の復活が可能となります。ドゥテルテ大統領の経済改革の中でも、特に法人税率の引き下げとフィリピンでは過去最大の景気刺激策となるCREATE法案については、政府が新型コロナウイルスの危機に対応する間も続くだろう。フィリピン政府であれば、経済を以前のような高度成長軌道に回復する事ができると信頼し、信用してくださるJCRに感謝いたします。」と述べました。

フィリピン中央銀行のベンジャミン・ディオクノ総裁は次のように述べました。「JCRによるA-への格付けの引き上げはこのような大変な時期において、とても励みになるものです。その判断は、フィリピンの進める政策が、このかつてないような危機からフィリピンの国民、企業、そして経済全体を回復させるために最適な策であることを象徴しています。BSPでは既にいくつもの臨時救済措置を行っておりますが、必要とあらば更に措置を取る準備は出来ています」

国家経済開発庁(NEDA)長官代行のカール・ケンドリック・チュアは次のように述べました。「フィリピンは、COVID-19のパンデミック以前よりそのマクロ経済の基盤を強化してまいりました。その結果、パンデミックに対応する財務面での余裕と経済的な回復力を身につけることができました。現在、我々は議会と共に復興計画の成立を進めております。JCRによる格付け(引き上げ)はフィリピン経済の回復力を肯定するものです」