世界経済INSIDE-OUT「時季によって値段が違う「一物多価」の時代が到来!」

三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社のプレスリリース

「ダイナミック・プライシング」とは 、市場の需要と供給の状況によって価格が変動することであり、近年、小売業界などにも広がりを見せています。夕方になるとスーパーの惣菜価格が下がる、大型連休になるとホテル代が上昇する、ということは昔からありましたが、これらとはいったいどこが違うのでしょうか?

◆今注目されるダイナミック・プライシングの手法とは?
今までは過去の経験に基づき、価格はあくまで人が決めていました。しかし、最近ではAI(人口知能)を用いて、需要、市況、天候、個人の嗜好などに関するビッグデータを迅速に分析し、価格の上げ下げを自動的に行うことが可能になってきました。データを蓄積すればするほど精度も上がってくると言われています。

ダイナミック・プライシングの導入はまず米国のスポーツ界などから始まり、日本でもプロ野球やサッカーなどの観戦チケットに活用され始め、広がりを見せています。細かな価格設定は収益の最大化につながり、消費者にとっても需要が停滞する時季に買うことで、より安い金額でチケットなどを購入できるといったメリットもあります。

 ◆テーマパークなどでもダイナミック・プライシングが始まった!
米国のディズニー・ワールドなどに習い、2019年1月から大型テーマパークが国内で初めてチケット価格を変動制に切り替えました。例えば1日入場券価格(大人)は、従来は一律7,900円でしたが、中国の春節にあたる2月は8,200円、3月の春休みは8,700円、4~5月の10連休は8,900円に値上げした一方で、平日の閑散時には7,400円に値下げするなど、需要動向に応じ機動的な価格設定が行われました。その後も10月の消費増税への対応や、12月以降にも小幅な値上げ(最高値9,200円の設定)が行われています。

 
◆ダイナミック・プライシングにより、なぜ企業の収益が拡大するのか?
では企業にとってダイナミック・プライシングを導入する経済的な意味合いはどこにあるのでしょうか?

例えばある商品に200円まで支払えると考える消費者Aさんと、100円までと考える消費者Bさんがいるとします。そこで、ある企業がその商品を固定価格100円(「一物一価」)で2人に売ると、売り上げは200円となり、Aさんは「100円、得をした!」というような「お得感」が生まれます。

ところが企業がAさんには200円、Bさんには100円と価格を提示できればどうなるでしょうか?

Aさんは200円で商品を買うため、固定価格のときにはあった「お得感」は無くなってしまいます。一方で、企業の売上げはBさんの分も合わせて300円に増加します。

つまりダイナミック・プライシングによる「一物多価」が完全に成立すれば、消費者の「お得感」は消失し、その分を企業が利益として受け取ることになります。

 ◆消費者に不信感を与えないことが成功の鍵に!
例えば、消費者は天候不良などで生鮮野菜の価格が上昇したとしてもそれほど不満に思うことはありません。しかし、単にAIによる算出というだけでの大幅値上げとなれば納得しにくい面があります。

他にも、台風上陸前に防災グッズを買おうとしたところ、ボトル入りの水の価格が急騰すれば、消費者から批判の声があがるということもあるでしょう。

消費者にとっては、価格変動の理由が「ある程度見える」ことが納得感につながる重要な要素です。逆に「足元を見ている」と感じられれば、企業への信頼そのものを失うことにもなりかねません。

ダイナミック・プライシングを定着させるには、消費者の反応をしっかり予測したうえで進めていくことが必要といえそうです。

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