Mastercardのプレスリリース
本文書は、5月14日にシンガポールで発表したプレスリリースの日本語訳版となります。
Mastercard Economics Institute(Mastercard経済研究所:MEI)の最新レポート「The New Travel Equation: Macro, Machines, Motivation」によると、レジャー旅行と比較してビジネス出張需要の伸びが特に顕著な世界の上位10都市のうち、5都市をアジア太平洋地域の都市が占めました。中でも、インドのハイデラバード(3位)とベンガルール(4位)が上位にランクインしています。
Mastercardの集計・匿名化されたデータに基づく本レポートでは、テクノロジーおよびAI産業の急速な拡大が、ビジネス渡航者をアジア太平洋地域の急成長ハブ都市へと引き寄せていることが明らかになりました。一方で、AIを活用した旅行計画の普及、為替変動、そして消費行動の変化により、同地域内外における旅行先の選択や旅行中の消費行動にも変化が生じています。
インドが主要なビジネス出張の拠点として台頭
MEIは、レジャー旅行と比較してビジネス出張需要がどの地域で高まっているかを把握するため、「Business vs Leisure Momentum Index(ビジネスとレジャーの動向指数)」を開発しました。同指数は、訪問者数の増減ではなく、ビジネス渡航とレジャー渡航の構成比の変化に着目した指標です。具体的には、2024年から2025年にかけて、各旅行先におけるホテル・飲食店での国際消費額全体に占めるビジネス利用の割合の変化と、同期間における航空券予約全体に占めるビジネス利用の割合の変化を組み合わせて算出しています。
同指数では、アラブ首長国連邦(UAE)がグローバルなビジネスハブとしての地位強化を進めていることを背景に、アブダビが世界首位となりました。一方でレポートでは、マクロ経済環境や地政学的環境の不確実性が高まる中、同都市の見通しには不透明感も生じていると指摘しています。
同指数の上位10都市のうち5都市をアジア太平洋地域の都市が占めており、同地域でビジネス出張が旅行需要全体に占める割合が世界でも特に大きく伸びていることが示されました。中でもインドは、ハイデラバード(3位)、ベンガルール(4位)、ニューデリー(6位)、ムンバイ(7位)の4都市がトップ10入りし、同国のテクノロジー産業の急速な拡大を裏付ける結果となりました。また、ソウルが8位にランクインし、アジア太平洋地域の存在感を示しています。
Mastercardアジア太平洋チーフエコノミストであるデビッド・マンは次のように述べています。
「これは単に、どの都市が最も賑わっているかという話ではありません。旅行需要全体に占めるビジネス出張の割合が、どの都市でより大きくなっているかを示すものです。アジア太平洋地域の一部で見られるこうした動きは、企業がどこに投資し、事業基盤を構築しているのかという、より大きな構造変化を反映しています。特に、テクノロジーやAI分野の拠点を中心とした動きが顕著です。こうした変化の影響は旅行業界にとどまらず、観光局や都市計画担当者、交通事業者、さらにはホスピタリティ事業者に至るまで、幅広い関係者の意思決定に影響を与えています。」
AIは旅行計画の立て方だけでなく、旅行先の選択にも影響
本レポートでは、人工知能(AI)が旅行者の行動に与える影響についても分析しています。MEIは、Mastercardの集計・匿名化されたデータを活用し、AIプラットフォームの有料契約者と非契約者の米国カード会員について、総支出額が同程度となるよう調整した上で消費パターンを比較しました。その結果、両者の間で旅行行動に顕著な違いが見られることが明らかになりました。
AIプラットフォームの有料契約者は、非契約者と比較して宿泊費に充てる支出割合が約2倍に達しており、そのほかの旅行関連カテゴリーにおいても高い支出割合が見られました。さらに注目すべき点として、AIは旅行先の選択にも影響を与えている可能性があります。例えばドイツのライプツィヒは、ベルリンよりも手頃で混雑の少ない代替旅行先として知られていますが、同市における米国人旅行者の支出の31%がAIプラットフォームの有料契約者によるものでした。同様の傾向は、主要な観光都市の代替先として注目される比較的知名度の低い旅行先でも確認されています。これらの結果は、AIが旅行者の選択肢を広げ、これまで十分に知られていなかった旅行先への関心を高めている可能性を示唆しています。
為替変動がアジア太平洋地域の旅行需要に影響
旅行先を選ぶ際、依然として「お得感」は重要な判断材料となっています。MEIが過去30年にわたる国際観光データを分析したところ、平均すると、旅行先の通貨価値が10%下落した場合、海外からの旅行者数は2.4%増加する傾向が確認されました。ただし、その影響の大きさは市場によって大きく異なります。
例えばマレーシアは、観光需要が為替変動の影響を受けやすい国として、トルコ、アルゼンチンに次いで世界第3位に位置しています。マレーシアの通貨リンギットの価値が10%下落した場合、海外からの旅行者数は8%増加する傾向が見られ、これは世界平均の3倍を超える水準です。一方、日本では同条件で2.7%、台湾では3.3%の増加が見込まれます。足元では金融市場の変動が続き、米ドル相場も不安定な動きを見せていることから、こうした為替動向はアジア太平洋地域におけるインバウンド需要の行方を左右する要因となる可能性があります。
Mastercardアジア太平洋チーフエコノミストであるデビッド・マンは次のように述べています。
「本レポートのデータから一貫して見えてくるのは、旅行者が環境の変化に柔軟に適応しているということです。旅行先を変更したり、旅行時期を調整したり、より高い価値を得られる選択肢を模索したりしています。本レポートは、旅行業界の関係者がこうした変化をタイムリーに把握し、変化の激しい環境下において、企業や政策立案者がより適切な意思決定を行うための一助となることを目的としています。」
本レポートの全文はこちら、MEIによるその他のインサイトはこちらからご覧いただけます。
Mastercard Economics Institute (Mastercard経済研究所:MEI)について
MEIは、高度な分析技術とMastercardの独自データ資産を活用し、世界および地域の経済動向に関するインサイトを提供しています。2020年に設立され、企業、政府、政策立案者に対して、消費支出、小売・旅行トレンド、その他の地域・世界規模の経済指標に関するタイムリーな分析や経済モニタリングサービスを提供しています。MEIは、ソート リーダーシップ シリーズや、Mastercardの専門的な製品群を通じて、意思決定を支援し、世界中で持続可能な経済成長を促進するための貴重な視点を提供しています。
