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「日本の逆襲:Web3の次章」——T4IS2026にて國光宏尚・渡辺創太・藤本真衣の3氏が10年以上の現場知見を率直に議論

「事業せずにビットコインとイーサリアムを買っておけばよかった、という結論にしないために、今日ここにいる」(國光宏尚氏)

ソーシャス株式会社のプレスリリース

セッション概要

ソーシャス株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:尹世羅)は、2026年4月26日(日)、東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井カンファレンスにて開催した招待制エグゼクティブサミット「Tech for Impact Summit 2026」のメインステージにて、「Japan Strikes Back: The Next Chapter of Web3(日本の逆襲:Web3の次章)」と題したパネルセッションを実施いたしました。

登壇したのは、日本のWeb3業界を10年以上にわたって牽引してきた3名の起業家・投資家です。スライドも原稿もなしの40分間、國光氏が自席から司会も兼任し、過去3〜4年の挑戦と失敗、足元の戦略、2026年の中心テーマを率直に議論しました。

登壇者

國光宏尚 氏 — gumi創設者/Financie・MintTown・Thirdverse CEO/gumi Cryptos Capital Managing Partner/TORICO(イーサリウム・ベース DAT)アドバイザー(モデレーター兼登壇者)

渡辺創太 氏 — Startale Group CEO(Soneium/JPYSC / Strium/Startale App ほか)

藤本真衣 氏 — zERC20 CEO/INTMAX共同創業者/Japan Blockchain Week 主宰(「MissBitcoin」として知られる)

議論のハイライト

1. パネル冒頭:「事業せずにビットコインとイーサリアムを買っておけばよかった、という結論にしないために」

冒頭、モデレーターを務めた國光氏は、その日もっとも多く引用されることになる一言でパネルを切り出しました。

「10何年前からいろんなことをやってきて、なんとなく切ない結論として『事業せずにビットコインとイーサリアムだけを買っておけばよかった』というふうにならないように、引き続き集めたお金もただビットコインとかイーサリアムを買うんじゃなくて、新しい事業に突っ込み続けようと、そういう形で頑張ってる3人になっています」(國光氏)

3名はそれぞれシンガポール(國光氏)、ニューヨーク(渡辺氏)、スイス・ツーク周辺(藤本氏)を拠点にしながら、日本発のWeb3事業を世界に向けて展開しています。

2. 過去3〜4年の挑戦と学び——Web3ゲーム、L2合戦、プライバシーへの振り切り

國光氏は、Web3ゲーム「キャプテン翼」をはじめとする取り組みを率直に振り返り、サービス終了の発表に至った経緯と、その背景にある構造的な課題を共有しました。

「ユーザー数でいくとLINEとテレグラムで合わせて1,000万人を超えました。でも蓋を開けてみるとそのユーザーのほとんどがエアドロップ目的のボットや、お金がない国のユーザーで、TGE(トークン生成イベント)後にゲームをきちんとプレイしているユーザーは数千人。インセンティブで集まったユーザーは、インセンティブが終われば抜けていく。ユーザーがスティッキーにならない」(國光氏)

渡辺氏は、L1/L2チェーンを開発してきた経験から、業界全体の構造変化を指摘しました。

「チェーンは最終的に2〜3個に収束すると思っています。一時期はアプリチェーンみたいな感じで乱立するのでは?という話だったけれど、ジェネラルチェーンはもう2つ——おそらくEthereumとSolanaに集約される。そう考えたときに、チェーンだけ作っていてもユーザーはスティッキーにならない、と痛感しました。そこから垂直統合に戦略を変えて、チェーンだけじゃなくてアプリ、ウォレット、開発者ツールまで縦に統合する形に転換しました」(渡辺氏)

そして渡辺氏は、L2業界全体が公の場で避けてきた一言を口にしました。

「測られる指標については、トークンのバリュエーションとか正直どうでもよくて、どれだけ事業としての収益を上げているか。結局残っているトークンはHyperliquidなどを見ても、収益をバイバックしてトークンの価値を上げるモデルしか成り立たない。Web2の既存指標と似たような指標が、Web3でもかなり重要視されてきています」(渡辺氏)

藤本氏は、INTMAX創業時の最大の意思決定を回想しました。共同創業者がプライバシープロトコルとして振り切ることを提案した際、藤本氏自身は当初反対の立場だったと明かしました。

「2年前、まだプライバシーというとTornado Cashのファウンダーが逮捕されたりだとか、業界の理解がまだ追いついていなかった。私は『プライバシーはやらない、L2のままでいい』と反対していたんです。でも共同創業者が『プライバシーでいく』と。社内でかなり大きなディスカッションがあって、最終的にはパートナーの意見を採用しました」(藤本氏)

これを受けて國光氏は、もう一つの率直なコメントを返しました。

「通常のL2のTVL合戦に行っていたら、もうその場で死んでいた」(國光氏)

3. プライバシーの危機——「『暗号』を名乗っている業界なのに、プライバシーがない」

このセッションで会場の空気が一段変わった瞬間は、藤本氏が業界の構造的な欠陥を指摘した発言でした。

「ハードウェアウォレットLedgerの共同創業者がフランスで誘拐されて、指を切られた。脅迫の道具として実際に使われている。私たちは『暗号通貨』という、つまり『暗号』を名乗っている業界にいるのに、プライバシーがない。みんなの残高もトランザクションも全部見える状態になっている」(藤本氏)

藤本氏はその直後、自分自身の経験も率直に共有しました。

「以前、所有していたNFTを自慢するツイートを上げた後、シンガポールのカンファレンスに登壇していたら、英語で脅迫メッセージが届いたんです。『今すぐこのアドレスにイーサリアムを送らないと殺すぞ』と。警察にも通報する事態になりました。やっぱり本当にプライバシーがないと、命の危険につながる」(藤本氏)

技術的な解は、すでに存在している、と藤本氏は指摘します。

「ゼロナレッジプルーフ(ZKP)を使えば、自分の証拠を見せなくてもそれが証明できる。例えばZKパスポートというプロジェクトでは、自分のパスポートをスマホで読み込むだけで『自分が18歳以上で日本国籍だ』ということが、本人情報を一切渡さずに証明できる。KYC一つとっても、これだけ進化させることができる」(藤本氏)

ただし、その普及のチャレンジは技術ではなく規制側にある、と続けました。

「業界内では『ZKで証明しているから個人情報も渡さなくていい、いいよね』となるんですが、当局に説明しに行くと『個人情報を集めてください』となりやすい。日本だとAML(アンチマネーロンダリング)の規制に引っかかる。技術はあるのに、規制側がまだ追いついていない。当局には、ハードウェアウォレットの顧客リストが盗まれて誘拐や攻撃の対象になっているリスクと並べて、もう一度判断していただきたい」(藤本氏)

4. 2026年の中心テーマ:トークナイズド・アセットと既存金融との融合

渡辺氏は、Web3の重心が「ピュアなクリプト」から「既存金融との融合」に移っているという2026年の構造を整理しました。

「クリプトの定義がどんどん拡大しています。日本だとクリプト=暗号資産で、ビットコイン、イーサリアムの話というイメージですが、いま起きているのはそれだけじゃなく、株式、債券、不動産、コモディティといった既存資産のトークナイゼーション。アメリカではNASDAQやNYSEがトークン化された株式を既存株式と同等に扱う議論が進んでいる。日本はまだそこに追いついていない」(渡辺氏)

その上で、トークナイズド・アセットがもたらすメリットを具体的に挙げました。

「メリットはたくさんありますが、よく言われるのが24時間365日取引と、決済の即時性。今は証券取引が『商品ください』と言ってから受け渡しまでT+2(2日後)。トークン化されてオンチェーンに発行されると、それが1秒、2秒で本物が届くようになる。仲介コストも下がる。安く、早く、いつでも取引できるようになる」(渡辺氏)

そして、もう一つ重要なメリットを指摘しました。

「もう一つ、まだ議論があまり進んでいないのがAIとの融合。例えば東京証券取引所にAIエージェントが口座を持つなんて、たぶんないじゃないですか。銀行口座そもそも作れない。でもブロックチェーン上だったら、AIエージェントがアドレスを持って24時間365日めちゃくちゃ取引する、という世界線が作れる。5年単位で見ると、ここの差分が一番大きい気がします」(渡辺氏)

この実現に向けて、Startale Groupはすでに動いていることも明かしました。

「まず円ステーブルコインが基軸通貨としてないと、ユーザー観点ですごく難しい。既存の決済型(ペイメントライセンス)ステーブルコインは100万円の送金上限がある。これだと基本的に決済しかできない。でもステーブルコインの最大の用途はアセットマネジメントで、利回りの低い日本円を借りてUSDで回すキャリートレードなど、TradFiの中で重要なユースケースがあります。そこのコンポーネントがオンチェーンには完全に欠けている。だから日本円の信託型ステーブルコインが世に出る必要がある、可及的速やかに。SBIグループとの共同開発という形で、間もなくの発行を目指して動いています」(渡辺氏)

國光氏は、この既存金融融合の流れに対応するもう一つの選択肢として、自身が関わる株式会社TORICO(東証グロース:7138)について紹介しました。

「ビットコインだとアメリカではMicroStrategyがDAT(デジタル・アセット・トレジャリー)をやって、日本だとメタプラネットがある。でもイーサリアムのDATは、日本ではまだない。TORICOという上場会社で、日本初のイーサリアム・ベース DATをやっていく。日本円が引き続き弱い状況でインフレが上がる中、円だけの資産を持ち続けるのはリスク。ビットコイン、イーサリアムが分散先の選択肢になり、DATは一般の方が安心・安全に入っていける形を提供する」(國光氏)

5. AI × オンチェーン金融——「AIエージェントは既存金融よりも先に、オンチェーンで口座を持つ」

セッションの締めに向けて、渡辺氏が最も注目しているテーマとして挙げたのは、AI×オンチェーン金融の融合でした。

「個人的にいま注目しているのはオンチェーン金融の文脈で、この分野でのAIとの統合が今後3年〜5年で一番重要だと思っています。理由は2つ。1つはハッキングが最近めっちゃ増えていて、まずDeFiが直撃を受けている。ここがいま、AIの実験場・サンドボックスになっている。もう1つは、オンチェーン上でやることで、AIが銀行口座を持つのと同等のことができる。たぶん既存金融よりも先に、AIエージェントがオンチェーンで口座を持つ」(渡辺氏)

「例えばGoldman SachsやJPMorgan、SBIがやっている業務は、一定はAIエージェントがオンチェーン上でもできるようになる。その上にどれだけリアルワールドアセットを持ってこれるか、そこから24時間365日AIエージェントにトレーディングさせて、収益率が高くなる企業が出てくる。そこを僕らは作りたい」(渡辺氏)

國光氏もこの見立てに同意し、Financieでの取り組みを紹介しました。

「AIエージェントが本当に意味を持つには、AI同士がやり取りできる基軸通貨が必要になる。これは既存金融に乗るんじゃなくて、ステーブルコインなのかなと思っている。Financieでは今、ステーブルコイン × 地方創生という形で、地域の基軸通貨として意味を持たせる取り組みを進めています。AIエージェント × ステーブルコインも、今年の大きなテーマです」(國光氏)

6. 締めのメッセージ——プライバシーの実用と、Japan Blockchain Week 7月12日

藤本氏は、来場者に向けて具体的なテイクアウェイを残しました。

「ぜひ皆さんの普段の生活でも、プライバシーが大事ということを活かしていただきたい。ブロックチェーンを使うとき、ちょっと気をつけるだけで身の回りのリスクが減らせます。私のように、うっかり自分のアドレスを公開することは、実は危険な行為でもあるということを、今日のテイクアウェイとして持ち帰っていただければ」(藤本氏)

藤本氏はJapan Blockchain Week 2026(2026年7月12日、渋谷ストリームホール開催)にも言及し、日本と世界のブロックチェーンコミュニティの交流の場として継続していくことを伝えました。

國光氏は、3名の現在地を以下のように締めくくりました。

「もともとはディセントライズド原理主義者寄りで、最終的にはマス・アダプションを目指していきたい。でも足元では、ピュアなWeb3よりも既存金融との融合のほうが先に来ている。去年はETF・ステーブルコイン・DATが中心、今年はトークナイズド・アセット。日本がその中で世界で注目されるポジションになれば、と思っています。引き続き頑張りますので、皆さん一緒に頑張りましょう」(國光氏)

登壇者プロフィール

國光宏尚(Hironao Kunimitsu)氏 プロフィール

gumi創設者 / Financie・MintTown・Thirdverse CEO

1974年生まれ。2004年5月株式会社アットムービーに入社。同年に取締役に就任し、映画・テレビドラマのプロデュース及び新規事業の立ち上げを担当する。2007年6月、株式会社gumiを設立し、代表取締役社長に就任。2021年7月に同社を退任。2021年8月より株式会社Thirdverse代表取締役CEOおよびフィナンシェ代表取締役CEOに就任。2021年9月よりgumi cryptos capital Managing Partnerに就任。2023年5月、株式会社Mint Town代表取締役CEOに就任。

渡辺創太(Sota Watanabe)氏 プロフィール

CEO、Startale Group

1995年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学在学中にシリコンバレーのブロックチェーン企業に勤務。帰国後の2019年にAstar Networkを創設、2023年にStartaleを設立しCEOに就任。ソニーグループとの合弁会社Sony Block Solutions Labsの「Soneium」の開発等寧、SBIグループとの合弁会社SBI

Startale Labsでトークン化資産基盤「Strium」の開発、信託型日本円ステーブルコインJPYSCの共同開発を通じ、Web3領域のグローバル展開を推進している。

藤本真衣(Mai Fujimoto)氏 プロフィール

zERC20 CEO

2011年に初めてBitcoinを受け取って以来、「MissBitcoin」の名で親しまれながら、BitcoinおよびBlockchainの普及活動に取り組む。これまで国内外のブロックチェーンプロジェクトにアドバイザーやエンジェル投資家として関わる。また、日本と海外のブロックチェーンコミュニティの交流の場をつくることを目的に、2017年より Japan Blockchain Week を立ち上げ、毎年開催している。現在はスイスを拠点に、プライバシー技術を基盤としたプロジェクト INTMAX および zERC20 を共同創業し、活動している。

関連リンク

・Tech for Impact Summit 公式サイト:https://tech4impactsummit.com/ja

・ソーシャス株式会社 コーポレートサイト:https://socious.io/ja

ハイライト映像

「日本の逆襲:Web3の次章」パネル本編(YouTube):https://www.youtube.com/watch?v=8VTuvdekE-s

お問い合わせ先

ソーシャス株式会社

Tech for Impact Summit 運営事務局

・Email:summit@socious.io

・公式サイト:https://tech4impactsummit.com/ja

会社概要

ソーシャス株式会社

・URL:https://socious.io/ja

・業種:情報通信

・本社所在地:東京都中央区日本橋3丁目2番14号1階

・代表者名:尹世羅

・設立:2021年07月

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