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国内初の決済スキームによるデジタル債の発行、及び国内初のデジタル通貨による証券決済の概念実証における協業について

株式会社ディーカレットDCPのプレスリリース

株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:柳澤 花芽、以下「NRI」)、野村證券株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:奥田 健太郎、以下「野村證券」)及び株式会社BOOSTRY(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:佐々木 俊典、以下「BOOSTRY」)、株式会社ディーカレットDCP(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長執行役員CEO:村林 聡、以下「ディーカレットDCP」)、株式会社三井住友銀行(本社:東京都千代田区、頭取CEO:福留 朗裕、以下「三井住友銀行」)は、デジタル証券市場拡大に向けた新たな決済スキームの実現及び概念実証を進めるべく、以下取組(以下「本プロジェクト」)に関する協業を実施しました。

1 国内初となる決済スキームを利用したデジタル債(以下「本デジタル債」)の新規発行

-デジタル債として国内初の*1 DVP決済の実現

-国内事業債の発行時決済期間として過去最短となる「約定日+1営業日」決済の実現

2 国内初となるデジタル通貨を利用した証券決済の概念実証(以下「PoC」)

-本デジタル債発行とは切り離した形でデモンストレーションを実施

※ディーカレットDCPは2のみ参加

  • 本プロジェクトの背景

2020年のNRIによる国内初のデジタル債(私募債)発行以来、デジタル証券の国内市場は商品性の多様化や取扱金融機関の拡大が加速し、現在の公募発行総額は1,500億円を上回る規模まで成長しています。一方で、国内デジタル証券市場における売買、特にホールセール向けデジタル債における投資家拡大の障壁の一つとして、決済リスクが指摘されていました。本プロジェクトは、BOOSTRYの新たなシステムと三井住友銀行の銀行サービスを組み合わせた新たな決済スキームをNRIが新規に発行するデジタル債に取り入れ、デジタル債取引市場の拡大に向けて決済リスクを低減したDVP決済をセキュリティトークン(以下「ST」)取引のスタンダードな決済方法の一つとして立証することを企図しています。

また、上記デジタル債発行とは別の取組として、ディーカレットDCPの開発したデジタル通貨の一種である*2 トークン化預金「DCJPY」のテスト環境を利用してDCJPYをダミー発行して、デジタル債の発行時に想定される一連の決済に用いることで、既存の法定通貨(円貨)によるデジタル債決済プロセスがデジタル通貨で代替可能であることを実証するために本PoCを実施することとしました。新たな決済手段として世界的に着目されているデジタル通貨は、証券決済プロセスを将来的に効率化・高度化させるために有効な手段になる可能性があり、本PoCは今後の証券決済プロセス革新の足掛かりであるとともに、利便性の向上への第一歩となります。

  • 本プロジェクトのポイント

1.新たな決済スキームを利用したデジタル債の新規発行

<本デジタル債発行における成果>

i.デジタル債として国内初のDVP決済

国内のホールセール向け債券において、証券保管振替機構(以下「保振」)の残高記録を利用してペーパーレス化された債券(以下「振替債」)では、保振の機能によるDVP決済を一般的に実施して決済リスクの削減を図っているのに対し、デジタル債では保振を使わないため、デジタル債のDVP決済が行われていませんでした。

本デジタル債では、BOOSTRYが開発を主導し、コンソーシアム事務局として運営・維持を行うブロックチェーン”ibet for Fin”の*3 スマートコントラクトの新機能と三井住友銀行の銀行サービスにより、デジタル債の売買取引情報と決済関係者間の銀行送金情報を照合することで、日常的に利用する銀行口座を使ったDVP決済を実現しました。これにより、DVP決済をST取引におけるスタンダードな決済の方式の一つとして立証できました。

ii.国内事業債の発行時決済期間として過去最短となる「約定日+1営業日」での決済

振替債(公募債)の発行時決済においては、保振の業務処理要領等に準拠して約定日から起算して4営業日目以降に決済日を設けることになっています。一方、保振を利用しないデジタル債では保振の業務処理要領等に準拠しないため、ポストトレーディング業務の効率化によって決済期間を短縮することが可能です。本プロジェクトにおいては、証券決済関係者間で決済期間を短縮するためのプロセスを模索し、国内公募債の決済期間として過去最短となる「約定日+1営業日」決済を実現しました。決済期間短縮によって取引約定後の決済リスクが削減され、加えて資金調達を行う発行体に調達資金を速やかに受渡せるメリットがあります。将来的には決済関係者の業務処理をすべてデジタル化することで、より円滑に処理を完了させることが可能です。

<本デジタル債の決済で採用した新スキーム>

<本デジタル債の発行概要>

社債名称

株式会社野村総合研究所第15回無担保社債

(社債間限定同順位特約及び譲渡制限付)

発行総額

30億円

年限

5年

利率

年1.483%

払込金額

各社債の金額100円につき金100円

払込期日

2025年3月14日

償還期日

2030年3月14日

取得格付

AA−

(株式会社格付投資情報センター(R&I))

引受証券会社 兼
*4 デジタルストラクチャリングエージェント

野村證券

財務代理人 兼 社債原簿管理人 兼 決済事業者

三井住友銀行

デジタル証券管理プラットフォーム開発

BOOSTRY

2.デジタル通貨を利用した証券決済の概念実証

デジタル通貨は、分散型台帳技術を活用して記録・管理・移転される、通貨的特徴を持つ資産の総称で、分散型台帳技術の持つ機能の応用によって決済の自動化による省力化や、人的コスト及び人的ミスの削減など将来の証券決済プロセスの可能性を拡張し得る手段として世界的に注目されています。

<本PoCで採用したデジタル通貨DCJPYの仕組み>

※わかりやすくするために簡略化した図であり、実際のシステム構成とは異なります

<本PoCの実施概要>
既存のデジタル証券決済プロセスは法定通貨利用を前提にしていますが、デジタル通貨に置き換えた場合であってもオペレーションとして実行可能であることをテスト環境にて疑似的に確認しました。実施においては、証券決済関係者が一堂に会して、将来的なデジタル通貨による証券決済の実現性を考察しました。

<デジタル通貨決済の将来性・期待値>

  • デジタル証券市場参加者の裾野の拡がり

– BOOSTRYがDVP決済用に用意したシステムは、銀行口座による伝統的な法定通貨決済だけでなく、ディーカレットDCPが提供するDCJPY決済においても汎用的な利用が可能であることをテスト環境で疑似的に確認し、他の事例にも適用可能なデジタル債DVP決済の標準的スキームの一つとして立証

– 本PoCで確認したDVP決済の業務フローをベースに、将来的にBOOSTRYとディーカレットDCPのシステムが相互に連携することによって、効率的なデジタル債DVP決済スキームの実現を期待

  • 将来的に、スマートコントラクトといったデジタル通貨の特性を組み合わせて、以下のような証券決済の効率化、高度化が検討可能

– デジタル通貨決済を活用した証券取引の5STP化

– 「約定日+0営業日」決済、リアルタイムグロス決済の実現

– 債券の金利・償還金の自動支払 等

  • 他の通貨種別、口座種別への拡張、他のデジタル通貨との相互接続により、証券決済関係者の利便性を向上させることも可能

<実業務での活用に向けて解決すべき主な課題>

  • デジタル通貨の発行・活用

– 銀行預金を分散台帳上のトークンとして取り扱うためのシステム要件の複雑性(金融庁の監督指針に基づく各金融機関のリーガルポリシーに合わせたデジタル通貨プラットフォームの個別機能、汎用機能の検討等)

– 基幹システムとの接続に要するシステム投資コストを踏まえた経済合理性の解決

– デジタル通貨としての特性・法的性質を踏まえた発行銀行の体制・規定等の整備

– デジタル通貨を利用する利用者側における受入体制の整備

– デジタル通貨を利用するユースケースの多様化

  • デジタル通貨による証券決済

– 既存証券業務システムにおけるデジタル証券の標準対応

– 証券決済に関わるシステム間をシームレスに繋ぐための相互接続性の確立

– 異なるチェーン上で流通するデジタル証券・デジタル通貨間でのDVP決済方式の確立

– デジタル通貨による証券決済プロセスを業界横断で共通化・標準化

<今後の方向性>

デジタル通貨による証券決済に係る課題にフォーカスを当て、本PoCにおいて検討した内容をベースとした標準業務プロセス・フローの策定、証券決済に関わるシステム間での連携方式に関する標準化について検討を深めていく予定です。

各社のコメント

<NRI>

本デジタル債を活用した資金調達は、当社の新規性を持つ取り組みの一環であり、デジタル証券市場の拡大に向けた重要なステップと考えています。今後も資金調達手段の多様化を図り、資金調達の安定性向上に努めるとともに、IT技術を通じて社会・金融インフラを担う企業の責務として、社会と資本市場の健全な発展に貢献していきます。

<野村證券>

本プロジェクトにおいてデジタル債の決済リスクが低減出来たことは大きな成果であり、加えて本PoCは利便性を向上する新たな決済手段としてのデジタル通貨に関する理解を深める機会となりました。

<BOOSTRY>

本プロジェクトにより、セキュリティトークンにおける大きな課題となっていた「安心・安全なDVP決済」をステーブルコインのような特殊な方法ではない実用的な仕組みで立証出来たことは、業界を今後大きく発展させる道筋になったものと感じています。

<ディーカレットDCP>

今回の実証では、各業界の代表プレーヤーである関係者との座組でデジタル債のDVP決済に関する業務フローの標準化という成果を得ることができ、業界の発展へ道筋をつける大きな一歩になったと感じております。


【ご参考】

1 DVP決済:Delivery Versus Paymentの略。証券の引渡しと代金の支払いを相互に条件を付け、一方が行われない限り他方も行われないようにすること

2トークン化預金「DCJPY」:デジタル通貨の一種であり、ブロックチェーンや分散型台帳技術を応用し預金をデジタルトークン化したもの。海外でもデポジットトークン(預金トークン)の実用が検討されており、国内外で取組みが広がっている

3スマートコントラクト:ある契約、取引について「特定の条件が満たされた場合に、決められた処理が自動的に実行される」といった、契約履行管理を自動化する機能を指す

4デジタルストラクチャリングエージェント:デジタル債のスキームを組成し、投資家への販売や必要書面に関する助言などを通じ、発行支援を行う者

5 STP:Straight Through Processingの略。証券の発注・約定から決済までの一連のプロセスをシステムで自動連携すること

本ニュースリリースは、国内初の決済スキームによるデジタル債の発行、及び国内初のデジタル通貨による証券決済の概念実証における協業について一般に公表することのみを目的としたものであり、NRIが発⾏するいかなる証券の投資勧誘を⽬的としたものではありません。