イーサリアム(Ethereum)の開発者たちは、次期大規模アップグレード「ペクトラ(Pectra)」の実施を2025年に向けて検討していることを発表しました。このアップグレードは、イーサリアムのネットワーク効率を向上させ、スケーラビリティの問題に対処することを目的としており、分散型アプリケーション(DApps)やDeFiプラットフォームのパフォーマンス向上にも寄与すると期待されています。
本記事では、ペクトラに関する詳細な解説と、イーサリアムのこれまでのアップグレードの軌跡について紹介します。
次期アップグレード「ペクトラ」とは
ペクトラは、イーサリアムのスケーラビリティとユーザーエクスペリエンスを大幅に改善することを目的としたアップグレードです。
特に、暗号資産ウォレットの機能を拡張し、スマートコントラクトのような高度な機能を通常のウォレットに統合することが狙いです。これが実装されることで、ユーザーはより効率的かつ安全にトランザクションを管理できるようになり、イーサリアムエコシステム全体の利便性が向上すると期待されています。
また、EIP-3074の導入により、ウォレットが複数のトランザクションを一度にバンドルする機能や、スポンサー付きトランザクションといった新機能が実装される予定です。これにより、ユーザーはトランザクション処理を簡素化し、他のアカウントのために資金を委任するなど、より高度な操作が可能になります。ペクトラはこうした新機能を通じて、イーサリアムの利用者にとっての体験を大幅に向上させる重要なアップグレードとなります。
したがって、ペクトラが完了することはDeFiプラットフォームだけでなく、オンラインカジノ イーサリアムを利用したゲーミングサイトなど、さまざまな分野でイーサリアムの実用性を高めることとなるでしょう。
2段階で実施予定
ペクトラの開発チームは、その規模と複雑さを理由に、アップグレードを2つのフェーズに分割することを決定しました。最初のフェーズである「プラハ(Prague)」は、2025年初頭に実施予定であり、8つのイーサリアム改善提案(EIP)が含まれる予定です。その中には、ユーザーエクスペリエンスを向上させるEIP-7702が含まれており、これにより、ウォレットの操作性が大幅に改善されることが期待されています。
2番目のフェーズは「エレクトラ(Electra)」と呼ばれ、最初のフェーズが成功した後に実施される予定です。このフェーズでは、イーサリアム仮想マシン(EVM)の変更やデータ可用性サンプリング(DAS)の改善が含まれる可能性があり、特にレイヤー2ブロックチェーンに大きな影響を与えることが期待されています。
開発者たちは、分割することでバグのリスクを抑え、アップグレード全体の成功を確実にする狙いがありますが、2つ目のフェーズに関しては今後の開発状況次第で内容が変わる可能性もあるとされています。
アップグレードの軌跡
ペクトラに至るまで、イーサリアムは2015年のローンチ以来、多くのアップグレードを経て進化してきました。以下、これまでの主要なアップグレードを時系列で紹介します。
- フロンティア(Frontier)
2015年に実行された、イーサリアムの最初のバージョンで、開発者がDAppsを構築できる環境を提供しました。これにより、イーサリアムの基盤が確立されました。 - ホームステッド(Homestead)
2016年のホームステッドにより、ネットワークの安定性とユーザビリティが向上。より安全にDAppsを展開できる環境が整いました。 - DAOフォーク(DAO Fork)
The DAO事件後、ハッキング被害を回収するためにハードフォークを実施。これにより、イーサリアムはETHとETCに分裂しました。 - ビザンチウム(Byzantium)- 2017年10月16日
セキュリティとスケーラビリティの向上を目的としたビザンチウムを2017年に実施。ブロック報酬が減少し、ネットワークの効率が向上しました。 - コンスタンティノープル(Constantinople)
2019年、ガスコストの最適化とPoSへの移行準備を行い、トランザクションの効率化と将来のアップグレードの基盤を整えました。 - イスタンブール(Istanbul)
同じく2019年、特定のEVM操作のガスコストを最適化し、DAppsのパフォーマンスとセキュリティを強化しました。 - ロンドン(London)
EIP-1559を導入し、取引手数料モデルを改革。ETHの供給量にも影響を与える新しいメカニズムが追加されました。 - ベルリン(Berlin)
ガスコストの最適化と新しいトランザクションタイプへの対応を強化。ネットワークの効率を向上させました。 - マージ(Merge)
2022年、ついにPoWからPoSへの移行が完了し、エネルギー消費を大幅に削減。セキュリティとスケーラビリティも向上しました。 - シャペラ(Shapella)
マージ実行の翌年、ステーキングしたETHを引き出せる機能を追加し、ステーキングの流動性を向上させました。 - デンクン(Dencun)
2024年、プロトダンクシャーディングを導入。トランザクションコスト削減とネットワーク効率の向上を実現しました。
まとめ
ペクトラは、イーサリアムにとって過去最大のアップグレードの1つとなる可能性が高く、ネットワークの効率性やスケーラビリティの向上に貢献するでしょう。特に、分割実施によりリスクを軽減しつつ、順次新機能を導入するアプローチは、多くの開発者やユーザーから注目を集めています。
2025年初頭のリリースが成功すれば、イーサリアムはさらに強固な基盤を築き、ブロックチェーンの未来を切り拓く存在として一層成長を遂げることでしょう。