バスケットボールにおける戦術の進化:古典的なプレイから現代の戦略へ

バスケットボールの戦術は年々進化しています。指導者や選手が長年プレイを研究していることに加え、ルールの変化によってそれまでの常識が変わってきているためです。バスケを上達する上でも楽しむ上でも戦術を知っておくことはプラスになります。ここでは1900年代後半からのバスケットボールの変化について解説しています。

1960~80年頃までのバスケットボールは圧倒的にビッグマンが有利

1960~1980年頃のバスケットボールの映像はほとんど残っておらず、残っているものも画質はかなり悪いモノなのではっきりとは言えませんが、おそらく現代のバスケとは違うスポーツと言っても過言ではないほど異なっていたのではないでしょうか?代表的な選手としてはウィルと・チェンバレンがいました。彼は1試合100得点、シーズン平均50.4得点、1試合平均27.2リバウンドなど、現代では考えられない記録を残しています。この時代にスポーツベッティングでMVPの優勝予想が行われていたら、チェンバレン以外には誰も賭けなかったでしょう。

この時代はとにかくビックマンが有利だったことが想像できます。チェンバレンが活躍した1960年代前半にはスリーポイントは無く、国際ルールでスリーポイントが登場したのは1985年です。少なくともスリーポイントが登場するまでは小さい選手の活躍は非常に難しかったでしょう。また、スリーポイントが導入されたからと言って、すぐに小さい選手が活躍できたわけではなくとにかくこの時代はバスケットボールとは体の大きいプレイヤーが圧倒的に有利なスポーツでした。

1980年頃から2000年頃は小柄なスター選手も増える

1980年代以降はマイケル・ジョーダンがバスケットボール界の主役と言っていいでしょう。そして、マイケル・ジョーダンと同じくらい象徴的だったのはアレン・アイバーソンです。身長は183cmですが、1999年にNBAの得点王になっています。NBA史上最も慎重の低い得点王です。もちろんこの時代もたとえばシャッキール・オニールなどのビックマンは変わらず活躍しており、身長が高いことが有利であることに変わりはありませんが、それでも小柄で活躍する選手が出てきたという点においては1980年以前とは明らかに異なります。

2000年前後からバスケはより戦術が重要になる

世界最高峰のバスケットボールリーグは間違いなくNBAであるため、NBAの変化はバスケ界の変化でもあります。2001年以降、バスケ界が戦術面で大きく変化することになります。NBAでゾーンディフェンスが解禁されたためです。それまでNBAではマンツーマン(1対1のディフェンス)が基本で、ゾーンディフェンスをするとイリーガルディフェンスという反則となっていました。

NBAでゾーンが解禁されたことで、各チームは独特の戦術を取れるようになります。ちなみにゾーンディフェンスが解禁された理由ははっきりとはわからずネットでは憶測も含め様々な情報が出ています。最も有力な理由の一つには「戦略の幅を広げバスケットボールをより魅力的なスポーツにする」というものです。

2010年頃~現在は3ポイントシュートがゲームの中心になる

2010年以降は今日のバスケとかなり近いでしょう。2010年以前と以後の一番の違いとしてはやはり3ポイントシュートでしょう。2010年以降、NBAの3ポイントシュートの試投数は年々増えていっています。

この変化の理由としては、やはりステフェン・カリーの存在が非常に大きいです。シーズン3ポイント成功数402本を始めとした3ポイントに関する記録を数多く持っており、今後もその記録を伸ばしていくことが予想されます。カリーが近年でNBAの戦術に最も影響を与えた選手と考えられます。

また、多くのチームが3ポイントを重視するようになった理由としては、ゴールデンステートウォーリアーズの成功も挙げられます。2015年、2017年、2018年にウォーリアーズはNBAファイナルで勝利しています。その立役者となったのが、ステフェン・カリーとクレイ・トンプソンです。カリーとトンプソンはスプラッシュブラザーズと呼ばれています。二人のシュートはまるで水しぶきを上げるようにバスケットネットを揺らすことからそう呼ばれるようになりました。トンプソンも3ポイントが得意な選手で、2018年にNBA新記録となる1試合14本の3ポイントシュートを成功させています。

この時代からビックマンの役割も明らかに変わりました。もともとビックマンはゴール下でプレイする選手がほとんどでした。また役割も得点、リバウンド、ディフェンス、などが主な役割です。しかし、近年はスリーポイントを打ったり、パスを回して見方を活かすことに注力したビックマンも出てきています。ビックマン=センターという常識はもはやなく、慎重に関係なく多様なプレイが求められる時代になりました。

今後はどのような戦術の変化が予想される?

未来のことはわかりませんが、今までのバスケ界はその年代の中心選手がそれまでの常識を覆し、戦術だけでなくルールさえも変えてきたと言えます。たとえば、シャッキール・オニールによりノーチャージエリアというルールができたと言われていますし、ステフェン・カリーの登場により3ポイントは主要な得点手段と考えられるようになりました。そのため、今後も圧倒的な選手によってルールや戦術が変わっていくことが予想されます。

では今後のバスケットボール界のルールや戦術を変えていきそうな選手は誰でしょうか?最も有力なのはビクター・ウェンバンヤマでしょう。2023年にNBAにデビューしたばかりのウェンバンヤマですが、すでにNBAのトップレベルの活躍を見せています。

身長は224cmもありますが、それでいてガードのような動きをします。主要な5つのスタッツをみてみると1試合平均で21.4得点、10.6リバウンド、3.9アシスト、1.2スティール、3.6ブロックです。注目すべきはブロックで3.6はNBAのトップ。2位が2.4なので圧倒的な数字と言えます。今後、ウェンバンヤマは間違いなくNBAおよびバスケットボール界の顔になっていくと思われます。ルールや戦術に影響を与える可能性も非常に高いです。

日本バスケにも戦術などの変化がみられる

では日本のバスケはどうなっているのでしょう?実は日本のバスケットボールにも様々な変化が起こっています。

まず取り挙げたいのが、日本国内のバスケットボールに対する人気の変化です。近年、バスケットボールは日本でどんどんメジャーなスポーツになっている感じがしないでしょうか?10年ほど前まではどう考えてもマイナースポーツで、テレビのスポーツニュースでバスケの話題が出てくることは全くありませんでした。しかし、ここ10年は日本のバスケ選手の活躍が光っています。NBAはもちろん国内のBリーグも注目されており、ステークで応援するチームの勝利に賭けて楽しむファンも多いようです。

そして、戦術面でも大きな変化があります。日本代表チームが3ポイントシュートを中心にチーム作りを進めるようになった点です。これは男子にも女子にも当てはまりますが、特に女子日本代表にその傾向が出ています。その理由はやはりトム・ホーバス監督にあるでしょう。ホーバス監督が近年の日本のバスケ戦術を作り上げました。

ホーバス監督は2020年の東京五輪までは女子日本代表の監督でした。その際はスリーポイントを中心に得点するチームを作っています。決勝でアメリカには敗れたものの、オリンピックで2位という結果は今までの日本代表からすれば考えられないほどの好成績でした。

そしてその成績が評価され、2020年のオリンピック以降は男子日本代表の監督となっています。戦術としてはもちろん女子日本代表と全くと同じではありませんが、やはり3ポイントを中心に得点していくスタイルを取っています。結果、男子日本代表は48年ぶりに自力でオリンピックへの出場権を獲得しました。

残念ながらスポーツベットで優勝予想を見てみると日本のオッズは非常に高く優勝候補ではありません。それでもオリンピックの出場権を獲得したことは日本のバスケットが発展している証と言えます。今後も戦術が改良され、日本バスケが成長していくことに期待しましょう。