一般社団法人 日本損害保険協会のプレスリリース
自動運転技術は、日々、世界的に開発が進んでおり、その実現によって、ユーザーの利便性向上だけではなく、交通事故の削減、環境負荷の軽減、高齢者等の移動手段の確保といった様々な効果が期待されています。
当協会では2016年度に自動運転に関する報告書を公表(※1)しましたが、その後、規制法の整備は進み、レベル4の自動運転車が市場化され、各地でレベル4のバスやトラックの実証実験が計画・開始されるなど、自動運転社会はさらに進展しています。
これらの環境変化を踏まえ、損害保険業界では、自動運転車による事故が発生した場合に、自賠責保険(自賠法における運行供用者責任の適用)および任意保険(被害者救済費用等補償特約(※2)の商品開発)による迅速な被害者救済が図られるよう対応しています。
自動運転が普及した社会においても、引き続き安心・安全を提供でき、納得感のある実務、および迅速な被害者救済が可能な体制の整備に貢献していくため、今般、事故発生後の事故原因の究明や適切な責任分担を行う観点で、法的・実務的論点を整理しました。
今後も政府の検討、海外の動向を注視しつつ、必要に応じて意見等を発信しながら、安心・安全な自動運転社会の実現に寄与していきます。
(※1) 2016年6月9日ニュースリリース「自動運転の法的責任について報告書を作成 ~事故時の損害賠償責任の考え方を整理~」: https://www.sonpo.or.jp/news/release/2016/1606_05.html
(※2) 多くの会員会社において自動車保険に自動付帯して販売している(特約名称は各社異なる)。
■適切な責任分担の実現に向けた課題(概要)
(1)自賠法において運行供用者となる者の明確化
・自動運転レベル4までは運行供用者責任を維持することとされているが、自動運転における責任主体として新たに想定される「特定自動運行実施者」等が、自賠法に照らし、運行供用者に該当するかどうか判然としない。
(2)不法行為責任(人損事故と物損事故の差異)
・人損事故では、運行供用者責任が維持されることにより、加害者が免責を主張する場合には自賠法に基づく立証責任を負うため、手動運転同様に被害者救済が図られる。一方、物損事故では、運転者に該当する者がいないことで誰が立証責任を負うのか責任主体が不明確となる。また、不法行為責任や製造物責任を被害者側が立証することになり、責任追及のハードルが高い。
(3)製造物責任の考え方、自動運転車の安全技術ガイドラインの具体化
・製造物責任(欠陥)の立証は、引渡し時に安全措置を講じていたかどうかが問われるため、安全性の確認を簡易に検証できるよう、最低限の基準としてガイドラインの精緻化が必要。
(4)自動運転中の事故における事故状況調査および原因究明
・自動運転車では、保険金の支払いにあたり、事故状況調査および原因究明のため事故データが必要となる。現在レベル3までの自動運転車では、自動車メーカーから情報提供を受けるための協力体制の構築を進めており、今後その範囲をレベル4まで拡大することが必要。
■報告書「自動運転(レベル4)に対する法的・実務的論点」(概要):
https://www.sonpo.or.jp/news/release/2024/240627_gaiyou.pdf
■報告書「自動運転(レベル4)に対する法的・実務的論点」:
https://www.sonpo.or.jp/news/release/2024/240627_houkokusyo.pdf