第3回「借金王ランキング」調査  ~借入多額でも、各社にみえる安全性維持の財務戦略~

リスクモンスター株式会社のプレスリリース

法人会員向けに与信管理ASPクラウドサービスを提供するリスクモンスター株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:藤本 太一、以下 リスモン)は、第3回「借金王ランキング」調査結果を発表いたしました。

第3回借金王ランキング1位は「トヨタ自動車」、2位「ソフトバンクグループ」、3位「日本電信電話」の順となりました。
1位の「トヨタ自動車」においては、調査開始以来、有利子負債額が増加し続けながらも、3期連続で「EBITDA」が1位となっていることから、借り入れた資金を積極的に事業に投下(リスクテイク)し、収益(リターン)を得ている模範的な事例を提供しているといえます。また、トップ10にランクインした「ソフトバンクグループ」、「三菱HCキャピタル」、「ソフトバンク」、「オリックス」などは、自己資本比率が30%未満であり、一見すると財務安全性が低いように見受けられますが、手元資金を潤沢に確保して安全性を保っていることがわかります。
借金王ランキングの上位企業には、安全性が低いと評価されるような企業はほとんどみられず、借入により財務レバレッジを高めることで、より大きな収益の獲得に成功していたり、十分な量の現預金を保有しておくことで、事業環境の変化に備えていたりと、資金調達を自社の成長や安定化のために活用していることがうかがえます。
借入はそのタイミングや金額などを見誤ることで、深刻な倒産リスクを招きかねないため、資金調達は綿密に練られた事業計画に基づいて行われることが重要です。アフターコロナにおいて、ビジネスチャンスの拡大により資金調達機会の増加が見込まれる中、事業を成長させるための適切な資金調達の方法・金額・タイミングを見極めることはきわめて重要な経営判断と言えるでしょう。

▼本調査の結果は以下掲載サイトでもご覧いただけます。
http://www.riskmonster.co.jp/rm-research/
▼動画版はこちら 「YouTube リスモンちゃんねる」
https://youtu.be/NerQ0koVI70

[調査結果] (1)上位20社の6割が年商以上の有利子負債を有している
上場企業の決算短信(金融機関除く)の記載に基づき有利子負債を算出した結果、「借金王ランキング」の1位は「トヨタ自動車」(有利子負債29兆3,803億円)となりました。次いで2位「ソフトバンクグループ」(同19兆4,782億円)、3位「日本電信電話」(同8兆2,305億円)の順となり、以下4位「本田技研工業」(同7兆6,652億円)、5位「三菱HCキャピタル」(同7兆6,318億円)、6位「日産自動車」(同6兆9,029億円)、7位「ソフトバンク」(同6兆1,345億円)と続いています。
トップ20の業種としては、自動車製造業、物品賃貸業、通信業、電気小売業が3社ずつランクインしています。特に、自動車製造業と通信業においては、上位7社までに3社ずつがランクインしており、事業の特性から多額の資金調達が必要になる業種であることがうかがえます。
また、トップ20の企業において売上高規模と有利子負債を比較したところ、12社が年商以上の有利子負債を有する結果となっており、特に物品賃貸業、不動産賃貸業・管理業では、トップ20にランクインした5社すべてがそれに該当していることが明らかとなりました。物品賃貸業に含まれるリース業や不動産賃貸業は、事業において多額の不動産や設備機器の購入が必要となるため、特に借入が嵩みやすい業種であることがわかります。(図表A)

図表A

なお、トップ100については、図表Bにまとめました。(図表B)

図表B

(2)借入れが多額でも、安全性を損なわない戦略がみえる
安全性を調査するためにランキングトップ20の「現預金回転期間」、「借入依存度」、「自己資本比率」について分析したところ、リスクモンスターの倒産確率分析において高リスクとなる現預金回転期間(現預金÷月商)が「1か月未満」の企業は、20社中4社のみであった。同様に、借入依存度(総借入÷総資産×100)が「50%超」の企業5社から、事業特性として資本投下が大きく借入金が過大となりやすい物品賃貸業と不動産賃貸業・管理業を除外すると、「関西電力」と「九州電力」の2社のみとなっており、借金王ランキングの上位に名を連ねる企業の大半は、資本のバランスを取りながら、計画的な借入を実行していることがうかがえます。
他方、自己資本比率が「30%未満」の企業が20社中12社にも及んでいるものの、これらの企業は、運用資産の規模増大による収益拡大を図るために財務レバレッジ(総資産÷自己資本)を高めているものと考えられます。(図表C)

図表C

(3)借金をキャッシュの創出につなげている企業も
上場企業の収益力を計る指標として、「EBITDA」、「営業キャッシュフロー」を集計してランキングしたところ、EBITDAでは、「トヨタ自動車」、「日本電信電話」、「ソニーグループ」、「ソフトバンク」、「KDDI」が上位となり、営業キャッシュフローでは、「トヨタ自動車」、「日本電信電話」、「本田技研工業」、「三菱商事」、「日産自動車」が上位となりました。
借金王ランキングトップ20のうち8社がEBITDAランキングにランクインし、10社が営業キャッシュフローランキングにランクインしていることから、借入調達した資金を事業に投下しリスクテイクすることで、より多くのリターンを獲得している様子がうかがえます。(図表D、図表E)
※EBITDA=営業利益(税引前当期純利益+特別損益+支払利息)+減価償却費

図表D

図表E

(4)全体では借入増加企業が上回る
上場企業における有利子負債の増減企業を集計したところ、有利子負債が増加した先(1,854社、58.0%)は減少企業(1,246社)を上回っており、前回調査時(51.5%)から6.5ポイント増加した。増加企業は、アフターコロナにおける投資の増加や、円安による仕入コスト高騰に対して資金調達が必要となり、有利子負債が増加したものと考えられます。
借金王ランキングトップ20の企業から、有利子負債増加企業トップ20に「トヨタ自動車」、「日本電信電話」、「オリックス」など8社がランクインし、減少企業トップ20には「ソフトバンクグループ」、「三菱商事」、「本田技研工業」など6社がランクインしています。
中でも「ソフトバンクグループ」は、2020年度と2021年度の2期で有利子負債が8兆円以上増加していますが、2022年度には一転して約2兆円減少しており、増減が目立っています。
また、「トヨタ自動車」では3期連続増加している一方で、同業の「日産自動車」では3期連続で減少している点からは、企業が借入を行う背景に、業界動向や経済環境のほか、各社の戦略に基づくものであることがうかがえます。(図表F、図表G)

図表F

図表G

[総評] 企業が借金を行う目的は、事業拡大と運転資金確保の2つに分けられます。借金によって事業の成長や安定化を図れる一方で、返済の目途が立たず資金繰りが限界に達すると倒産に至ることから、借金の多寡は倒産リスクに直結するといえます。本レポートは、企業が保有する有利子負債を集計し、安全性・収益性の観点から分析を実施したものです。

第3回借金王ランキングのトップとなった「トヨタ自動車」においては、調査開始以来、有利子負債額が増加し続けながらも、3期連続で「EBITDA」が1位となっていることから、借り入れた資金を積極的に事業に投下(リスクテイク)し、収益(リターン)を得ている模範的な事例を提供しているといえます。また、トップ10にランクインした「ソフトバンクグループ」、「三菱HCキャピタル」、「ソフトバンク」、「オリックス」などは、自己資本比率が30%未満であり、一見すると財務安全性が低いように見受けられますが、手元資金を潤沢に確保して安全性を保っていることがわかります。

一般的に、借入が多い企業は財務体質が脆弱になりやすいため、倒産リスクが高い企業として評価されやすく、企業経営においても借入に対するイメージは良くないことの方が多くありますが、本来、借入は企業が成長するために必要な要素の一つであり、企業の安全性を高める要素ともなり得ます。現に借金王ランキングの上位企業には、安全性が低いと評価されるような企業はほとんどみられず、借入により財務レバレッジを高めることで、より大きな収益の獲得に成功していたり、十分な量の現預金を保有しておくことで、事業環境の変化に備えていたりと、資金調達を自社の成長や安定化のために活用していることがうかがえます。
借入はそのタイミングや金額などを見誤ることで、深刻な倒産リスクを招きかねないため、資金調達は綿密に練られた事業計画に基づいて行われることが重要です。アフターコロナにおいて、ビジネスチャンスの拡大により資金調達機会の増加が見込まれる中、事業を成長させるための適切な資金調達の方法・金額・タイミングを見極めることはきわめて重要な経営判断と言えるでしょう。

※ 本編はダイジェスト版です。詳細な内容は、以下掲載サイトよりご覧いただけます。
http://www.riskmonster.co.jp/rm-research/

■リスモン調べ動画
今回発表の「借金王ランキング」調査はYouTubeの「リスモンちゃんねる」でもご覧いただけます。
https://youtu.be/NerQ0koVI70

リスモン調べ動画

[実施概要] ・調査名称   :第3回「借金王ランキング」調査
・調査方法   :決算書の分析結果に基づく調査
・調査対象決算期:2023年7月1日時点で開示されていた
         2022年4月期決算以降の最新連結決算
・調査対象企業 :金融機関(銀行、証券会社、保険会社等)を除く、
         決算短信提出企業
・調査対象企業数:3,192社

■リスモン調べとは
リスモンが独自に調査するレポートのことです。これまでリスモンでは企業活動関連の調査として他にも「100年後も生き残ると思う日本企業調査」「環境への配慮が感じられる企業調査」や「この企業に勤める人と結婚したいアンケート調査」などを発表しております。
今後も「企業活動」に関するさまざまな切り口の調査を実施することで、企業格付の更新に役立てていくとともに、情報発信を行うことで新しい調査ターゲットの創出、新サービスの開発などに取り組んでまいります。
掲載サイトはこちら http://www.riskmonster.co.jp/rm-research/

■リスモンの概要(東京証券取引所スタンダード市場上場 証券コード:3768)
2000年9月設立。同年12月よりインターネットを活用した与信管理業務のアウトソーシングサービス、ASPクラウドサービス事業を開始しました。以来、法人会員向けビジネスを要として、教育関連事業(定額制の社員研修サービス「サイバックスUniv.」)やビジネスポータルサイト事業(グループウェアサービス等)、BPOサービス事業、海外事業(利墨(上海)商務信息咨詢有限公司)にサービス分野を拡大し、包括的な戦略で事業を展開しております。
リスモングループ法人会員数は、2023年6月末時点で13,864(内、与信管理サービス等7,290、ビジネスポータルサイト等3,102、教育事業等3,028、その他444)となっております。
ホームページ: https://www.riskmonster.co.jp/